民法改正~填補賠償~

10月に入り,豊田市でも少しずつ涼しくなってきたように感じます。

季節の変わり目ですので,皆様,体調を崩さないようにお気を付けてお過ごしください。

さて,今回のテーマは「填補賠償」です。

填補賠償とは,債務者が本来の債務の履行に代えて債権者に対して行う損害賠償のことを言います。

用語だけだと分かり難いかと思いますので,具体例を見てみましょう

AさんとBさんが建物の賃貸借契約を締結し,Bさんが建物を借りて使用していた場合,Bさんは,賃貸借契約が終了した際に,Aさんに借りていた建物を返還する義務を負います。

しかし,Bさんが不注意で火事を起こしてしまい,借りていた建物が完全に焼失してしまったという場合,Bさんは建物の返還義務を履行することができません。

このような場合,Aさんは,Bさんに対し,建物の返還を請求する代わりに,焼失してしまった建物の価値分の賠償請求をすることができます。

これを「填補賠償」と言います。

実は,旧法では,填補賠償に関する規定は存在せず,解釈によって認められているのみでした。

そこで,新法では,以下のとおり,填補賠償に関する規定(新法第415条2項)が新設され,填補賠償請求が可能となる要件が整理されました。

新法第415条
第1項
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは,債権者は,これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし,その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは,この限りでない。
第2項
前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において,債権者は,次に掲げるときは,債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において,その契約が解除され,又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。