民法改正~受領遅滞~

例年だと夏祭りや花火大会の時期ですが,今年はコロナウイルスの感染拡大の影響で,多くは中止となってしまっているようです。

豊田市でも,大きな祭りは中止になったと聞いており,少し寂しく感じます。

 

さて,今回のテーマは,「受領遅滞」です。

「受領遅滞」とは,債務者が,債務の履行をしようとしたのに,債権者が債務の履行を受けることを拒んだり,債務の履行を受けることができないような場合のことを言います。

「受領遅滞」に関する新法の条文は以下のとおりです。

第413条
1 債権者が債務の履行を受けることを拒み,又は受けることができない場合において,その債務の目的が特定物の引渡しであるときは,債務者は,履行の提供をした時からその引渡しをするまで,自己の財産に対するのと同一の注意をもって,その物を保存すれば足りる。
2 債権者が債務の履行を受けることを拒み,又は受けることができないことによって,その履行の費用が増加したときは,その増加額は,債権者の負担とする。

第413条の2
2 債権者が債務の履行を受けることを拒み,又は受けることができない場合において,履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは,その履行の不能は,債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

旧法では,受領遅滞の効果は「債権者は,履行の提供があった時から遅滞の責任を負う。」としか規定されていませんでしたが,改正により,受領遅滞によって生じる効果が具体的に示されましたので,以下,ご紹介いたします(もっとも,従来受領遅滞によって生じるとされていた効果の全てが明文化されたわけではないことに,注意が必要です。)。

第1に,債務者の債務の目的が,特定物の引渡しである場合,受領遅滞後は保存管理に関する注意義務が軽減され,自己の財産と同じような注意をもって管理保存すればよいということになります(新法第413条1項)。

第2に,受領遅滞が生じたことによって,債務者が債務の履行をするにあたって必要となる費用が増加した場合は,債務者は,その増加分の費用を債権者に請求することができます(新法第413条2項)。

第3に,受領遅滞が生じた後に債権者・債務者どちらの責任とも言えない事由によって,債務者の債務が履行不能となった場合は,その履行不能は,債権者の責めに帰すべき事由によって発生したものとみなされることになります(第413条の2第2項)。