民法改正~意思表示の効力の発生時期②~

先日,台風19号が上陸しましたが,皆様ご無事でしたでしょうか?

豊田市は風雨共にそこまで強くなかったという印象ですが,関東に住む友人からは,家が浸水した等の被害が生じたとの話を聞きました。

台風19号の被害に遭われた方が早く元の生活に戻ることができるように願っております。

さて,今回は,意思表示の効力の発生時期に関する改正の続きをお話したいと思います。

 

1 相手方が意思表示の到達を妨げた場合

現行民法には,意思表示の相手方が意思表示の到達を妨げた場合(例えば,表意者からの手紙を受け取らなかったような場合が挙げられます。)に関する規定は存在しません。

しかし,このような場合に,意思表示が相手方に到達していないものとして扱ってしまうと,意思表示の相手方が恣意的に意思表示の到達・不到達を操作できることになり,表意者と相手方との関係が公平なものではなくなってしまいます。

そこで,改正民法では,「相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは,その通知は,通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。」という明文の規定が設けられました(改正民法97条2項)。

 

2 相手方が意思能力を有していなかった場合等の意思表示の効力発生時期

現行民法98条の2本文は,「意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者又は成年被後見人であったときは,その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。」という形で,意思表示を受領する能力について規定しています。

改正民法においても意思表示を受領する能力に関する規定が存在するのですが,改正民法に「意思表示」に関する規定が設けられた関係(「意思能力」の規定については,過去の記事(https://www.lawyers-kokoro.com/nagoyashi/bengoshi-blog/690/)をご参照ください。)で,以下のような条文に改められました。

「意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。」(改正民法98条の2本文)

ただし,この規定に該当する場合でも,「意思表示の相手方の法定代理人」あるいは「意思能力を回復し,又は行為能力者となった相手方」が,その意思表示を知った場合には,それ以降,表意者は,当該意思表示の効力を相手方に対して対抗できます(改正民法98条の2但し書き)。