超大型連休が終わってしまいましたね。
皆様,連休中はいかがお過ごしだったでしょうか?
弁護士法人心も,新規受付の方はお休みをいただいておりましたが,私は,特に平日と変わらぬ日々を過ごしておりました。
ということで,連休中の話題も特にないので,引き続き,民法改正のお話をしていきたいと思います。
今回は「心裡留保」についてです。
あまり聞きなれない言葉かと思いますが,心裡留保とは,「意思表示をする者が,意思表示の内容が自分の真意と異なっていることを認識しながら,当該意思表示を行うこと」を言います。
例えば,Aさんが,実際は甲という土地をBさんにあげるつもりがないのに,Bさんに「甲という土地をあげるよ」と言ったような場合がこれにあたります。
では,心裡留保を行った場合の法的な効果はどうなるのでしょうか。
なんと,心裡留保の場合,原則として,意思表示の効果は有効となります。
なぜなら,わざと真意と異なる意思表示をした者の保護ほ図る必要性が低いためです。
ですので,先ほどの例だと,原則として,AさんはBさんに甲という土地をあげなくてはなりません。
もっとも,BさんがAさんの真意を知っていた場合は,Bさんを保護する必要性もありませんので,現行民法93条但書は,「相手方が,表意者の真意を知り,又は知ることができたときは,その意思表示は無効とする。」と規定しています。
なお,細かい点ではありますが,相手方が「表意者の真意を知っていた」場合ではなくても,「なされた意思表示が表意者の真意ではないことをしっていた」のであれば,相手方を保護する必要性がないと考えられますので,改正民法93条1項但書では,「相手方が,その意思表示が表意者の真意でないことを知り,又は知ることができたときは,その意思表示は無効とする。」と規定されています。
では,AさんがBさんに甲という土地をあげるつもりがないということを,Bさんが知っていた場合,Bさんから甲土地を購入したCさんは甲土地を取得できるのでしょうか?
これまでに述べてきたことからすれば,BさんがAさんの真意を知っていた以上,A・B間の甲という土地の贈与は無効なのですから,CさんはBさんから甲という土地を取得できないように思えます。
これだと,A・B間の甲という土地の贈与が無効であることを知らずに,Bさんと売買契約を締結したCさんにとって極めて酷な結論となってしまいます。
しかし,現行民法93条には,Cさんのような第三者を保護する規定がありませんでした。
そのため,実務では他の条文を類推適用して,Cさんのような方を保護していました。
そこで,このような実務の取り扱いを踏まえ,今回の改正で,心裡留保に関する条文にも,第三者保護の規定が設けられることになりました。
改正民法93条2項は「前項ただし書の規定による意思表示の無効は,善意の第三者に対抗することができない」と規定しています(ちなみに,ここにいう「善意」とは,一般的に用いられる「好意」というような意味ではなく,「法律関係に関する特定の事情を知らないこと」を意味します)。
以上のとおり,不用意に真意と異なることを言ってしまうと,思わぬ不利益を被るおそれがありますので,注意するようにしてくださいね。