民法改正~意思能力~

少しずつ暖かくなってきた今日この頃ですが,皆様いかがお過ごしでしょうか。

今日は,しばらくお休みしていた民法改正の話をしたいと思います。

今日のテーマは「意思能力」です。

「意思能力」とは,自己の行為の結果を判断するに足りる能力のことを言います。

そして,意思能力のない人の行った法律行為は無効となるとされています(大審院判決明治38年5月11日)。

これは,「人は自己の意思に基づいてのみ権利を取得し,義務を負う」という私的自治の原則より導かれるものです。

もっとも,実は,現行民法には,意思能力のない人の行った法律行為は無効となるという趣旨の規定はありません。

それが,この度の民法改正により,明文化されることになりました(改正民法3条2項)。

明治38年の裁判例で判断されたルールが現在になってようやく明文化されることになったのは,今後,高齢化社会が進んでいくことが予想される中で,判断能力の低下した高齢者の方などが不当に不利益を被るのを防ぐことの必要性が高まっていくと考えられたためであるとされています。

非常に基本的な規定ではありますが,そうであるからこそ,普段の弁護士業務を行うにあたり,見落としてしまうことのないよう,気を付けたいと思います。