司法試験の思い出

今年の司法試験と予備試験は,新型コロナウイルスの影響で延期されることが法務省から発表されました。

受験予定だった方は,予定が変わってしまったことで不安に思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

そこで,受験生の方に向けてはその不安な気持ちが少しでも紛れるよう,私が司法試験を受験したときの思い出話でもしてみようかと思います。

受験生以外の方も,「司法試験の受験ってこんな感じなのか。」と思って見ていただければ幸いです。

 

司法試験なんて人生の一大イベントだから,そのときのことはよく覚えているだろうと思われるかもしれませんが,実は試験内容についてはほとんど覚えていません。

大学受験のときの数学の試験内容のほうが,まだ覚えているくらいです。

唯一よく覚えているのは,「申告しないと毎回なぜか試験監督の人がクッションの確認をしてくれないこと」です。

 

司法試験は,論文式試験8科目を3日間,短答式試験3科目を1日間の計4日間(間に一日間のお休みがあるので,期間のトータルは5日間)かけて行われます。

特に論文式試験は,選択科目は3時間,それ以外は2時間の試験時間なのですが,連日座りっぱなしであることや,集中していると変な体勢になることから,腰の負担を軽減するクッションを各自持って行って椅子に敷く人が多いです。

私は,薄いけれどもお尻にかかる体重を分散してくれるという高性能クッションを使っていました。

(お値段は高かったですが,今も愛用しているので元は取れたと思っています!)

その際,クッションの下にカンニングペーパーなどを入れないよう,試験監督の方が試験前に巡回してクッションを確認するのですが,なぜか私のクッションを確認しません。

後から疑われては嫌なので,毎回「あの~,私クッション敷いているんですけど…」と言って確認してもらったのですが,ほかの人は申告しなくても確認してるのになんで私は毎回スルーされるのかと,試験中は少しイライラしてしまいました。

 

なんの役にも立たなさそうな話になってしまいましたが,受験予定の方が安心して受験できるよう,早く通常どおりの世の中に戻ってほしいですね。

 

新しいパスポートと本人確認書類

2020年2月4日申請分から,パスポートが新しく変わったことをご存じでしたでしょうか。
ICチップ内の個人情報の不正読取り等を防ぐ機能を強化しているほか,偽造防止能力を高めるため,出入国のスタンプを押す査証のページが,今までページを表す数字のデザインから、「冨嶽三十六景」のデザインに変わったそうです。
また,所持人記入欄から,住所を記載する欄がなくなったそうです。
普通に生活する際に,これらの変更が何か影響することはまずありませんが,弁護士業務を行う際には,ほんの少しだけ影響がありそうです。

弁護士の活動については,法令や日本弁護士連合会が定める規則によって,様々な規制がされています。
契約時の「依頼者の本人確認」も,その一つです。

日本弁護士連合会は,弁護士が犯罪収益の移転行為(マネーロンダリング)に関与しないことを確保するため,「依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程及び規則」を定めています。
それによって, 弁護士が一定の法律事務の依頼などをお受けする際に,本人特定事項の確認をさせていただくことがあります。
上記規則では,弁護士と委任契約を結ぶすべてのケースでこの本人確認が必要と定めているわけではありませんが,当法人では念のため,すべての契約においてこの本人確認を行っています。

本人確認のために必要な書類が何かについては,非常に複雑なためここではご説明を省略しますが,通常は本人写真付きかつ住所の記載がある身分証明書で本人確認を行うことが多く,依頼者様にご説明する際も,「運転免許証やパスポート等をお持ちください。」とお伝えしていました。

ところが,上記の新パスポートの場合,住所を記載する欄がないため,「本人写真付きで,住所の記載がある身分証明書」にはあたらなくなってしまったのです。

「本人写真付きで,住所の記載がある身分証明書」であれば,対面の場合,これ一つで本人確認ができますが,そうでないと複数の本人確認書類をいただいたりしなければならないため,上記のニュースを見たときは思わず,「パスポートで本人確認する際は,所持人記載欄に住所記載欄があるものかどうか確認しなければいけないから,手間が増えたなあ。」と思ってしまいました。

自転車損害賠償保険

弁護士の岡原です。
2019年9月に「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が改正され、2020年4月より施行されるのに伴い,来月から東京都において自転車損害賠償保険の加入が義務化されます。
豊島区では,これに先立って2018年10月1日から加入が義務化されていましたが,東京都としてもこれに続く形となりました。

自転車は,免許がなくても乗れること,車体が比較的安価に購入できることなどから,子どもからお年寄りまで多くの方が日常的に使用する乗り物です。
一方で,かなりの速度が出ること,歩道を走ることも多く歩行者や他の自転車との接触,衝突の恐れが高いことから,大けがにつながる事故も多く起きています。
例えば,平成20年に神戸で発生した,小学5年生の児童が運転する自転車が歩行中の60代女性に衝突し,女性が現在も意識不明となっている事件について,神戸地裁は児童の保護者に9500万円もの損害賠償を命じる判決が出されました。

ところが,自転車は,自動車と異なり自賠責保険のような強制加入保険がない上に,任意で損害賠償保険に加入している方も少ないため,事故が発生した際の被害者への高額な損害賠償金をすべて自己負担しなければならないケースが多く存在していました。
そのような場合に,加害者が損害賠償金を支払えず,被害者がほとんど賠償金を受け取れず泣き寝入りとなってしまうといった事態を増やさないため,今回自転車も損害賠償保険に入ることを義務づけることが条例で規定されました。

現在,自転車保険として販売されている商品の多くは,個人賠償責任保険単体か,個人賠償責任保険が特約として付けられている傷害保険となっています。
また,自動車保険にプラスして加入できる個人賠償責任保険もたくさんあるようです。
自転車に損害賠償保険なんて付いていないと思われる方も,実はお持ちの自家用車の自動車保険にすでに付帯している可能性もありますので,まずはご自身で加入されている保険の内容と,その補償の範囲を確認していただくことをお勧めします。

煽り運転に遭わないためには

弁護士法人心 池袋駅法律事務所の岡原です。

前回は,なぜ煽り運転をする人がいるのかという話をさせていただきましたが,反対に煽り運転をされないためにはどうしたらよいのでしょうか。

煽り運転をする人の多くは,その人なりのきっかけがあり,それに対する過剰反応又は仕返しとして煽り運転を行っていると考えられます。
(中には,煽り運転そのものが楽しくて仕方ないという異常な人がいるかもしれませんが,そういった方には対処のしようがないので除きます。)
つまり,相手を不快にさせない運転を心がけることで,煽り運転をされるきっかけを減らすことができる可能性があります。

例えば,車線変更をする際は,進路変更の3秒前から進路変更終了時までウインカーを点灯させることが定められていますが(道路交通法施行令21条),進路変更しながらウインカーを点灯させる方や,そもそもウインカーを出さない方なども多くいらっしゃいます。
車線変更する側からすれば,後方との車間距離も十分空いているから問題ないと考えているかもしれませんが,後方の車両からすれば,何の前触れもなくいきなり車線変更してきてびっくりしたと思うかもしれません。
そして,このことを自分に対する嫌がらせと捉えてしまい,「自分は何もしていないのにいきなり嫌がらせをされたから,こちらも仕返しをしよう。」と考えて煽り運転をしてくる可能性も十分にあります。

ウインカーを出すタイミングは,上記で述べたように法令上の定めですので,それを遵守していただくことは当然ですが,そもそも「いきなり入ってきたら後続車両がびっくりするかもしれない。」といった他の車両へ配慮ができれば,仮に道交法の規定を知らなくても(自動車学校で必ず教わるので,できれば覚えておいていただきたいですが,)適切にウインカーを出すことができるはずです。
また,相手を不快にさせないという観点でいえば,
・追越車線をいつまでも走る
・急発進,急停止
・車間距離が狭い
などの行為は,急いでいる相手をイライラさせたり,不安にさせたりする可能性が高い行為のため,控えるようにしましょう。

そして,これらに注意していても煽り運転に遭ってしまった場合は,安全な場所に移動して車から出ず,警察へ通報しましょう。

煽り運転

弁護士の岡原です。
先日,免許更新時の講習で,①ながら運転について,②煽り運転についての話がありました。
今月は,②煽り運転についてお話ししたいと思います。

煽り運転とは,一般的には,車間距離を詰める,幅寄せ,蛇行運転,クラクションでの威嚇,必要のないハイビームなど,故意に特定の車両の運転を妨害するような運転をいいます。
また,最近では,わざと制限速度を大幅に下回る速度でノロノロ走行する,逆煽り運転といったものも取り上げられています。

私は,事務所のある池袋周辺で煽り運転に遭ったことはありませんが,郊外を走っているときなどに後方の車両から車間距離をかなり詰められたことがあり,急いでコンビニの駐車場に逃げたことがあります。

取り締まりについては,2017年に起きた東名高速道路でのあおり運転による死亡事故をきっかけに摘発が強化されていますが,今後は,道路交通法に新たな規定を設け,その罰則も現状より厳しいものにする方針が示されています。

ところで,そもそもどうして煽り運転が起きてしまうのでしょうか。
その原因の一つとして,自分が思うような運転ができない状況を,他者からの攻撃ととらえ,それに対して報復や制裁を行うことは正当な行動だと考えてしまうといった思考があるそうです。
例えば,前の車両がゆっくり走っているという状況を見ると,「自分は急いでいるのに,前の車に邪魔されている。」,「こういった走り方をする車には,自分が痛い目に遭わせないといけない。」などと考えてしまい,煽り運転を正当化してしまうそうです。
また,「こういう種類の自動車を運転している人は運転が下手だ。」といった偏見から,実際はなにも起きていないにもかかわらず,特定の車種を見ると自分が懲らしめないといけないといった思考に陥り,煽り運転をしてしまうといったケースもあるそうです。
さらに,車内は運転者が誰か一見しては分からないという匿名性が高い空間であり、ドライバーの感情が攻撃的になりやすいというのも,上記思考を強めてしまう要因の一つだそうです。

誰しも,イライラしてストレスが溜まっているときは,ほんの些細な出来事にも怒りを覚えてしまうことがあります。
ですが,その怒りのままに煽り運転を行ってしまうと,煽り運転として罰則の対象になるのはもちろんのこと,大事故を引き起こしてしまう可能性も十分にあります。
怒りの発散のせいで一生を棒に振ってもよいのか,ひと呼吸おいて考えることが大事です。

ながら運転の罰則強化

先日、普通自動車免許の更新に行ってきました。
ゴールド免許なので、事務所の近くの指定警察署で更新しようかと思ったのですが、池袋警察署は残念ながら指定警察署ではなく、電車に乗って都庁の更新センターで更新してきました。

ところで、更新時には、ビデオや冊子を見て運転時の注意点などについて講習を受けますが、今回特に時間が割かれていた点が、①今月から施行される携帯電話を使用しながらの運転に対する罰則強化についてと、②煽り運転をしないための心がけについてでした。
②の煽り運転については次回のブログで取り上げ、今回は①のながら運転についてお話ししたいと思います。

ながら運転の罰則強化については、以前の私のブログでも触れましたが、運転しながらのスマートフォン等の注視・通話やカーナビゲーション装置等の注視といった「携帯電話使用等(保持)」の違反点数は、1点から3点に引き上げられ、これらによって交通事故を生じさせた「携帯電話使用等(交通の危険)」の違反点数は、2点から6点に引き上げられました。

これについて、カーナビとスマートフォンをBluetoothで繋いで通話すれば、通話そのものについては上記の罰則にあたらない可能性があります
しかし、電話を受ける際に画面の操作をする必要がある場合は、「携帯電話使用等(保持)」となる可能性はありますし、前方から少しでも目を離せば事故につながる危険が飛躍的に高まります。

また、ハンズフリーのイヤホンマイクを耳に装着しての通話は、一部の都道府県においては、上記の罰則とは別に、道路交通規則によって「安全運転義務違反」として検挙される場合もあります。

自動車は、よく運転する方だと、「自分は運転に慣れているから通話くらいしていても問題なく運転できる。」とつい思ってしまいがちですが、どんなに乗り慣れていても絶対に事故をしない人などいません。
事故を起こしてしまうと、被害者と加害者の今後の人生に大きく影響してしまうということを心に留めて、安全運転を心がけましょう。

ポケモンと動物愛護

弁護士の岡原です。

もうすぐ,ニンテンドースイッチのゲーム「ポケットモンスターソード・シールド」が発売されます。
私は,幼稚園のころにクリスマスプレゼントで「ポケットモンスター緑」が欲しいとサンタさんにお願いをしていた世代なので,買おうかどうか非常に気になっています。

ところで,ポケモンといえば,トレーナー同士で自分のポケモンをバトルさせることができますが,その過程で手持ちのポケモンが毒に侵されたり,瀕死になってしまうこともあります。
なんと,これらのことをポケモンに対する虐待として,抗議活動を行っている動物愛護団体もあるそうです。

個人的には,ポケモンバトルはお互いのポケモンを傷つけるためのものではなく,強い信頼関係で結ばれたトレーナーとポケモンがバトルを通じて経験を積み,成長するためのものと考えているので,人間がポケモンをバトルで一方的に傷つけているという指摘は,ポケモンを表面的にしか見ていない,非常に的外れなものと感じています。

ところで,残念ながら,私たちが住むこの世界には,まだポケモンは確認されていないようです。
そして,ポケモンの場合と同じように,例えば野生の猫を捕まえて他人の猫とバトルさせるといった行為は,日本では動物愛護法で禁止されています。

動物愛護法は,同法で指定する「愛護動物」につき,
・みだりに殺傷すること,
・給餌・給水をしないこと,
・みだりにえさや水を与えずに衰弱させるなど虐待を行うこと,
・遺棄すること,といった行為を禁止し,これに違反した場合には罰則を定めています。
そして,愛護動物とは,
・牛,馬,豚,めん羊,山羊,犬,猫,いえうさぎ,鶏,いえばと,あひる(飼育されているか,野生かは問わない)と,
・人が占有している動物で哺乳類,鳥類又は爬虫類に属するもの,
を指します。

したがって,上記のように,例えば猫同士を戦わせる行為は,その猫が野生か飼い猫かを問わず禁止されますが,浦島太郎の冒頭の話のように亀をいじめる子供たちの行為は,亀が上記愛護動物にあたらないため禁止されていないということになります。

もっとも,禁止されていないことと,倫理的にやってよいことは全くの別です。
ポケモンとは異なり,動物と人とでは十分な意思疎通ができず,信頼関係を築くことにも限界があります。
食用などのやむを得ない場合を除き,不必要に動物を苦しめる行為は,それが愛護動物であるかないかにかかわらず,人間として許されない行為であると考えます。

弁護士の選び方

先日,司法修習のクラス会があり,久しぶりに教官や同期と会って話をしました。
東京で開催したため,遠くにいる人は残念ながら不参加の人もいたのですが,弁護士だけでなく,検事や裁判官も参加し,短い時間でしたが近況報告などで盛り上がりました。

もちろん,法曹は個別の事件について守秘義務がありますので,「この間こんな事件があったよ~!」などといった話はしませんが,最近取り扱っている事件の種類についてや,気になっている裁判例などといった固い話から,それぞれのプライベートな話まで,いろいろな話ができ,とても有意義な時間を過ごせました。

特に,弁護士の同期とは,「主にどんな種類の事件を取り扱っているか。」という話を多くしていたのですが,事件の種類を問わずになんでもやる,いわゆる昔ながらのマチ弁タイプと,特定の種類の事件を集中的に取り扱うタイプの2種類に分かれていて,それぞれどちらのタイプがいいのか,意見が分かれていました。

これは,弁護士の側だけでなく,どの弁護士を選ぶかという依頼者さん側からしても,重要な話かと思います。
前者のタイプは,いろいろな種類の事件を取り扱うので,これまでに経験してきた分野が広いというのは大きなメリットです。
一方で後者のタイプは,特定の事件を多く取り扱うので,その分野については経験やノウハウの蓄積が非常に多いというメリットがあります。

当法人は,各弁護士が特定の事件を集中的に取り扱うというケースが多いため,後者のタイプになるかと思います。

弁護士を選ぶ際には,もちろん弁護士の経歴や人となりも大事ですが,弁護士事務所のホームページを見たり,弁護士に直接聞いたりなどして,その弁護士が上記のどちらのタイプか確認し,ご自身の依頼内容や希望,意向などとマッチしているか検討するのもお勧めです。

ドラクエウォークと道路交通法改正

弁護士の岡原です。

先日,スマホアプリのドラゴンクエストウォークがリリースされました。
かくいう私も,リリース当日にインストールして毎日楽しんでいます。

ところで,ドラクエウォークのような位置情報を使ったゲームで問題となるのが,いわゆる「ながらスマホ」です。

ドラクエウォークでは,「ウォークモード」と呼ばれる,歩行中自動的に付近のモンスターと戦ってくれるモードがあり,歩きスマホ対策のためのシステムがあります。
また,移動速度が速いと感知された場合はプレイを制限するシステムもあり,自転車や自動車での移動中にプレイすることのないような対策が取られています。
もっとも,移動速度によるプレイの制限は時速20kmを基準としているようであり,例えば渋滞中に自動車を運転しながらプレイする場合は,このシステムによってプレイを制限されない場合もありそうです。

当然ですが,前を見ずプレイに熱中しながら自転車,自動車を走行することは,事故発生の可能性が高く非常に危険です。
「ちょっとだけなら大丈夫。」,「運転は慣れているから。」といったことは全く理由になりませんので,運転中はスマホやカーナビの操作をしないことを徹底していただきたいと思います。

また,今年の12月から改正道路交通法が施行され,自動車や原付を運転中にスマートフォンやカーナビなどを操作しながら走行した場合,違反点数は3点で罰則が6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金,さらに操作により交通の危険を生じさせた場合は違反点数6点で罰則が1年以下の懲役または30万円以下の罰金と,これまでと比べて大幅に引き上げられることになりました。
さらに,スマホ等の操作で交通の危険を生じさせた場合,反則金制度の対象外となるため,直ちに刑事罰の対象となります。

せっかくの楽しいゲームですので,事故が起きないよう皆で心掛けたいものです。

訴状の送達

弁護士の岡原です。

訴訟を提起する際は,相手方に直接訴状を送付のではなく,一旦訴状を裁判所に送り,それを裁判所が相手方に送達するという手順を取ります。
そして,原則として,訴状は相手方本人へ手渡しで行われます。
では,相手方が居留守を使うなどして,裁判所からの訴状を受け取らなかった場合はどうなるのでしょうか。

もちろん,受け取らなければ裁判から逃れられるというわけではありません。
通常は,以下のような手続きを取ります。

まず,訴訟を起こした人へ,裁判所から「相手方が訴状を受け取らなかった。」という連絡があります。
その際に,裁判所から,送達先の住所へ相手方が本当に所在しているかどうか調査して報告書を出すよう求められます。

どのようにして調査するかというと,一般的には表札の有無や電気ガスメーターの動きの有無,郵便受けに郵便物が溜まっていないかといった事項の確認や,近隣住民への聴き取りなどを行います。
これらの調査の結果,送達先の住所に居住していると分かれば,裁判所に報告書を出し,「付郵便送達」の方法により送達してもらうよう申し出を行います。

付郵便送達とは、書留郵便で訴状を発送し、発送したときに送達が完了したとみなす方法です。
この方法の場合、名宛人が実際に受け取らなくても、送達が完了することになります。

もし,調査の結果,所在が確認できず不明である場合は,その旨裁判所に報告書を提出し,「公示送達」の方法により送達してもらうよう申し出を行います。

公示送達となった場合、裁判所に設置されている掲示板に,裁判所書記官が送達物を保管し、相手方が出頭すれば書類を交付する旨の書面が掲示されます。
この掲示がされてから2週間が経過すると,実際に相手方がその掲示を見たかどうか等にかかわらず,送達の効力が生じます。

送達の効力が生じた後,裁判期日を無視して何も反論等をしなかった場合,原則として原告の主張がそのまま認められた判決が出ることになります。
「訴状が届いたけれど面倒だから放っておこう。」などとは考えず,弁護士に相談するなど早めに対応することをお勧めします。

 

★メンバーが増えたことに伴い,当法人の集合写真が新しくなりました★

以下のリンクよりご覧ください。
http://www.bengoshi-ikebukuro.com/

腰痛とバランスボール

弁護士は,裁判や出張などで事務所外にいることもありますが,事務所内で書面を起案していることのほうが多い職業だと思います。

私も,パソコンの前で座りっぱなしの時間が長いため,腰が痛くなってしまうことがよくあり,どうしたらいいか考えていたところ,「グーグルは社内の椅子としてバランスボール(フィットネスなどで使われる大きなゴムボールのようなもの)を導入している。」というインターネットの記事を目にしました。

バランスボールは,猫背の姿勢で乗るとバランスがとりづらいため,自然と姿勢がよくなり,その結果首や肩のコリが改善されたり,腰回りに筋肉が鍛えられることで腰痛改善と予防につながったりするという話もあるそうです。

いいことずくめのような気もしますが,事務所内でバランスボールに乗り,ぽよんぽよんと跳ねている弁護士というのは想像すると相当にシュールですし,跳ねることに気を取られて仕事に集中できなさそうな気もします。

仕事でバランスボールを使っている人,使ったけどやめた人のブログを読むと,ふとした時にバランスを崩して転んでしまった人や,集中できなくてすぐにやめてしまった人,同僚がバランスボールに乗って常にゆらゆらするのでイライラしてしまった人の話などたくさんもあり,賛否両論のようです。

池袋の東急ハンズに売っていたのでかなり心惹かれてはいましたが,残念ながら,バランスボール導入は見送りたいと思います。

ココが変だよ『ゼロの執行人』パート3

弁護士目線で語る『ゼロの執行人』,ようやく最終章です。

 

○修習生を罷免された羽場二三一

橘弁護士の事務所も元事務員だった羽場二三一は,司法修習生のときに裁判官を志望していたがなれず,終了式で教官とみられる人に詰め寄ろうとして司法修習生を罷免されたとあります。

これと似た事件として,昭和46年4月5日に行われた修習終了式において,裁判官志望者7人に対する任官拒否(不採用)に抗議するため,一人の司法修習生が司法研修所長のマイクを取って発言を始めたため,「品位を辱める行状」があったとして司法修習生を罷免されたという事件があったそうです。

もしかしたらこの出来事を意識して描かれたのかなとも思いますが,羽場は大きな声を出して詰め寄ろうとしただけなので,正直罷免までされるというのはやりすぎかなと思います。

ちなみに,「品位を辱める行状」を理由に司法修習生が罷免されたのは,上記事件があった昭和46年以降,4人しかいません。

また,司法修習生を罷免されても,司法試験の合格が取り消されるわけではないので,改めて翌年司法修習生への再採用を希望して弁護士を目指すことは可能です。

 

○司法修習の終了式が春

映画での描写を見る限り,司法修習の終了式のとき,司法研修所と見られる建物には桜のような花が咲いており,春のように見えます。

ところが,新60期以降は,終了式は12月に行われており,春ではありません。

実際に私が終了式に出たときも冬だったので,花は一輪も咲いていませんでした。

旧52期(平成10年)までは,どうやら終了式が4月に行われていたようなので,羽場は旧52期以前の司法修習生であれば辻褄が合いますが,映画では羽場が罷免されたのは今から4年前とあり,辻褄が合いません。

(この映画が平成16年以前を舞台にしていたのであれば話は別ですが,コナンがスマートフォンを使っていることから,その可能性は低いと考えました。)

 

全体として,弁護士や検事,司法修習生などが出てきたり,専門用語が多めだったりと,大人向けを意識しているような内容でしたが,大人向けであるならもう少し細かいところを詰めてほしかったというのが感想です。

クレジットを見る限り,弁護士の監修はなかったようですので,次にこういった内容にするときはそこを改善していただけると,よりリアリティが増して面白くなるかなと思いました。

ココが変だよ『ゼロの執行人』パート2

前回に引き続き,弁護士目線で気になった『名探偵コナン ゼロの執行人』について書いていきます。

 

○公判前整理手続?

映画の中で,起訴前に橘弁護士と日下部検事が裁判官室で立って「公判前(まえ)整理手続」を行うというシーンがありました。

実際は,「公判前(ぜん)整理手続」といいますが,映画では「公判前(まえ)」と連呼されており,とても気になりました。

マスメディア等ではこのように読まれることもありますが,本職の弁護士が間違えるのは結構恥ずかしいです。

 

また,公判前整理手続は起訴後に行われるものであり,起訴前に裁判官が事件の内容を把握できてしまうというのは,予断排除の原則(刑事裁判において,公判が始まるまで裁判官はあらかじめ起訴事実の内容に触れず,一定の心証を抱くことがないようにして予断を排除すべきというものです。)に反していて大問題です。

 

さらに,公判前整理手続は法廷で行うものであり(通常座って行います。),裁判官室で立って行うというのはかなり不可思議です。

おまけに,本件事件は死傷者も多数出ていて,動機も不明,被疑者の毛利小五郎は否認しているという内容なのに,立って行える程度の時間で,しかも一回で終了というのはあり得ません。

世界有数の犯罪都市である米花町は,事件が多すぎて法廷の数も人手も足りていないのでしょうか。

ココが変だよ『ゼロの執行人』パート1

昨日,金曜ロードショーで映画『名探偵コナン ゼロの執行人』が放送されていました。

私はこの映画をまだ見ていなかったので,とても楽しみにしていたのですが,法律関係で気になることがいくつかあり,残念に思いました。

そこで,弁護士目線で気になった,「ココが変だよ『ゼロの執行人』」を,3回に分けてお届けしたいと思います。

若干のネタバレを含みますので,まだ知りたくない!という方は,このページを閉じる前に,今すぐ『ゼロの執行人』をご覧ください。

大事なことなので2度言いますが,このブログのページは閉じずに,『ゼロの執行人』を見てくださいね!

 

○毛利小五郎の弁護人がなかなか見つからない

毛利小五郎が逮捕されたあと,妻の妃英理弁護士(ちなみに,別居しているだけなので戸籍上は毛利英理のままだそうです。)が,いろいろな知り合いの弁護士に小五郎の弁護を依頼するも断られ,「有名人だからみんな弁護人をやりたがらないんだ。」などというシーンがあります。

 

ところが,あの有名なカルロス・ゴーン氏にもきちんと弁護人がついていらっしゃることでも分かるとおり,有名人だから弁護人をやらないなどということはあり得ません。

むしろ,刑事弁護に力を入れている弁護士の先生であれば,ぜひやりたいと全国から大勢集まってくるほどではないでしょうか。

あのような描写は,弁護士が被疑者を選り好みしているような印象を与え,いざというときに弁護士に頼れないのではという印象を与えかねず,とても残念です。

 

○情報を流してくれる白鳥警部

小五郎の現状について,白鳥警部が妃英理の事務所まで来て捜査情報を流してくれていますが,あり得ません。

もっとも,コナンのいる世界では一般民のコナンや少年探偵団が捜査に協力しているので,そこに言及するのは野暮なのかもしれません。

 

○「ケーベン」

毛利小五郎の弁護人として,橘境子弁護士という方が出てきます。

この先生について,妃英理が,「先生は『ケーベン』なのよ。」というシーンがありました。

 

私は,「ケーベン」と聞くと,刑事弁護を多く扱っている「刑弁」なんだなと考えましたが,ここでは「事務所を持たず,携帯電話のみで仕事をする弁護士」,つまり「携弁」として紹介されていました。

私が知らないだけなのかもしれませんが,そんな略し方はいままで一度も聞いたことがありませんし,念のため知り合いの弁護士に聞いてみましたが聞いたことがないとのことでした。

このようなフレーズが出てきても,普段の弁護士業務に何か支障があるわけではないので別に構わないのですが,あえて出す必要がないのではと思いました。

新元号と変革

弁護士の岡原です。

 

来月4月1日,新元号が発表されます。

新しい時代はどのようになっていくのか楽しみでもあり,終わりを迎える平成の時代に少し寂しさも感じます。

 

平成は,IT技術が急速に発達した時代でした。

今や出先でも社用携帯でメールチェックができますし,事務所内にいなくてもパソコンがあれば仕事もできます。

私は交通事故の案件を取り扱うことが多いですが,損害保険会社の中には連絡を書面や電話ではなく社用メールでやりとりしたいというところもあり,迅速なやり取りが可能となっています。

 

ところが,これだけ世の中が変わっても,なかなか変わらない機関があります。

それは,裁判所です。

 

主張書面は必ず紙媒体でなければならないし,期日の際には基本的には出廷しなければなりません。

(弁論準備手続は電話会議というものもありますが,当事者のどちらか一方は裁判所へ出廷する必要があります。)

 

裁判所のページにアクセスし,事件番号とパスワードを入力してログインすれば主張書面をアップロードできたり,スカイプのようなシステムで出廷できたりすれば,負担がかなり減ってよいのではないかと想像することは多々あります。

 

新しい時代は,ぜひこのようなシステムが開発されてほしいと思います。

映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』を見て②

弁護士の岡原です。

センター試験も終わり,国公立大学の二次試験を控えている受験生も多いことと思います。

きっと,このブログをご覧の受験生の中にはカンニングをしようなどという不届きな方はいらっしゃらないと思いますが,先月に続き,カンニングと偽計業務妨害罪についてお話しします。

 

偽計業務妨害罪とは,虚偽の風説を流布し,又は人の錯誤・不知を利用することで,人の業務を妨害することを内容としています。

カンニング行為は,不正な答案を作成することで,試験の公正さを害する行為です。

試験が公正に行われたものでなければ,他の受験生は到底納得できませんから,試験の主催者は,どのような不正行為があったのか,ほかにも不正行為はなかったかなどを調査してそれに対処する必要があり,これが本来の試験業務を妨害しているとみることができます。

 

前回のブログで触れた大学受験のカンニング事件について,インターネット上ではカンニングで警察が動くなんてやりすぎだ,被害届まで出す大学の対応は大人げないなどの意見がありました。

これについて,私としては,例えば大規模かつ組織的なカンニングなど,カンニングの手法や規模によっては,偽計業務妨害罪として処理することが入学試験の公正さを確保するうえでやむを得ない場合もあると考えます。

映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』をみて①

弁護士の岡原です。

 

もうすぐセンター試験ですね。

私がセンター試験を受けたのはもう10年以上前のことですので,小雪がちらつく寒い日だったなあという記憶しかありません。

受験生の皆さんが,自分の力を十分に発揮できることをお祈りします。

 

先日,『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』という映画のDVDを借りて鑑賞しました。

実際に起こったカンニング事件をもとに作られた作品とのことで,その方法も大規模で驚くべきものでしたが,カンニングへ至る背景はタイの格差社会や白熱する受験戦争などがあり,面白い作品でした。

 

大学の入学試験や,資格試験の受験でのカンニングは,道徳的にやってはいけないことであるというだけでなく,偽計業務妨害罪(刑法233条)に該当する可能性があります。

実際,数年前に,大学の入学試験中に携帯電話で問題をインターネット掲示板へ投稿した受験生がいたとしてマスコミにも取り上げられる大騒ぎとなった事件がありましたが,これに対し,警察は偽計業務妨害の疑いで捜査を行っていました。

(その後,受験生は当時未成年であったため,偽計業務妨害非行事実で家裁へ送致されましたが,家裁は非行事実を認めたうえで謝罪文を提出するなど深く反省しているとして,受験生を不処分としました。)

 

次回に続きます。

正月三が日

今年も残りあとわずかとなりましたね。
今年を振り返ると,日本全国で大きな災害が相次ぎ,大変な一年だったという印象があります。
東京は,幸いにも豪雨や大きな地震はなかったものの,夏は暑さが深刻でした。
私の勤務する東京駅法律事務所では,余りの暑さにクーラーがきかなくなってしまい,汗をかきすぎて干からびてしまうかと思いました。

ところで,1月1日の元日は,国民の祝日に関する法律によって,国民の祝日と定められています。

ところが,元旦から3日までは,「正月三が日」としてひとくくりにお休みとなっていることが多いかと思います。
1月2日と3日は,祝日なのか,それとも平日なのか,どのような扱いなのでしょうか。

国民の祝日に関する法律には,元旦が祝日であるという記載はありますが,1月2日と3日はその記載がないので,少なくとも祝日ではないようです。
もっとも,官公庁は閉庁日ですので,多くの会社がそれに倣っているというのが実情のようです。

小売店などは,三が日も営業するというのが少し前までは当たり前となっていましたが,最近では「従業員にもお正月を!」という機運からか,思いきってお休みとするお店も出てきていると聞きます。

みんなが気持ちよく,働きやすい社会を作っていけたらいいですね。

入管施設のハンスト

弁護士の岡原です。

退去強制が出された外国人を収容している東日本入国管理センターで,収容されている外国人の方達がハンガーストライキを実施しているとのニュースがありました.

在留資格がなく,退去強制令書が出された外国人の方は,収容令書によって地方入国管理局の収容施設等に収容され,その後退去強制令書が発付されると,すみやかに国外へ送還されることになっています。
こうした収容施設での収容は,退去のための飛行機を待つなど一時的なものであるはずです。
ところが,収容令書による収容期間は30日(やむを得ない事情があるときは最大60日)
と定められていますが,退去強制令書による収容は送還可能のときまでとされており,事実上法的な制限はないため,長期にわたり収容施設で拘束されるケースが多くなっているのが実情です。

東日本入国管理センターでのハンガーストライキは,収容されていたインド人男性が,仮放免(被収容者の健康上の理由や,出国準備等のために身柄の拘束をいったん解く必要が生じたときに,一時的に収容を停止し,身柄の拘束を仮に解く措置)の申請が不許可となったことで絶望し自殺したことを発端に発生したとされており,これ以前からも長期収容が常態化していたことがうかがわれます。

現在国会で入国管理法の改正が議論されている影響で,入管法についてのニュースがよくテレビで取り上げられていますが,これらの点がテレビ等で取り扱われることはほとんどないのは残念です。

奨学金と法教育

弁護士の岡原です。

皆さんの中にも,大学在学時に日本学生支援機構から奨学金を借りた方は多いのではないでしょうか。
その日本学生支援機構が,奨学金返還請求に際し,保証人に「分別の利益」を伝えず,全額の支払いを請求していたことが分かり,問題ではないかとのニュースがありました。

現在,日本学生支援機構は,奨学金を貸与する際に、借りた本人が返せない場合に備えて連帯保証人と保証人の計2名を付けるか,保証機関を利用するかのどちらかが必要とされています。

連帯保証人と保証人は,主債務者(奨学金を借りた方)が債務を返済できなくなったとき,代わりに返済する義務を負うという点では同じですが,その義務の範囲は異なります。
その一つが,上で述べた「分別の利益」です。

保証人は,複数人いる場合,その頭数で割った額のみ,債権者に対して返済する義務を負います。
一方で,連帯保証人は,自分のほかに連帯保証人や保証人は何人いても,債務全額を返済しなければならない義務があり,保証人と違ってより重い義務が課せられています。
日本学生支援機構から借りる奨学金の場合のように,連帯保証人と保証人が二人いる場合は,保証人は債務額の2分の1のみ返済する義務を負うということになります。

ところが,日本学生支援機構は,保証人に支払いを請求する際に,債務額の2分の1しか返済する義務がないにもかかわらず,それを伝えていませんでした。
確かに,法的に言えば,保証人に「分別の利益」があることは,保証人側が主張すべき事由(これを抗弁と言います。)なので,わざわざ日本学生支援機構が教えてあげなくてもよいという考え方はあります。
ところが,双方が十分な法的知識を持っているのであればともかく,保証人側がそのようなことを知らず,全額支払わなければならないのだと勘違いをするような方法での回収は,法的には問題がなくても,社会的にみて妥当なのかという考え方もあります。

今後,日本学生支援機構の方針がどうなるか検討の余地はありますが,保証人となる側,奨学金を借りる側も,自衛として最低限の法的知識を身につけておく必要があるのかもしれません。
保証人や連帯保証人は,自分がお金を借りていないにもかかわらず,債権者に返済をしなければならない義務を負うという,自分自身にメリットはないがデメリットは非常に大きいというものです。
学校教育においても,奨学金制度が利用できることの説明だけでなく,それがどういうことなのか,借りることでどのような責任が発生するかといった法教育を行っていくことが重要になっていくのではないでしょうか。