7月からレジ袋の有料化が開始

令和2年7月1日から,「小売業に属する事業を行う者の容器包装の使用の合理化による容器包装廃棄物の排出の抑制の促進に関する判断の基準となるべき事項を定める省令の一部を改正する省令」によって,レジ袋が有料化されます。

対象となる事業者は,各種小売業なようですので,コンビニやスーパーに限定されるわけではなく,本屋や服屋なども対象となるようです。

小さいレジ袋は3円,大きいレジ袋は5円にしているお店が多いので,そう決まっているのかと思っていましたが,価格自体は事業者自らが設定してよいようです。

今回対象となる袋は,プラスチック製の買い物袋ですが,厚手で繰り返し使えるものや微生物によって海洋で分解されるもの,バイオマス素材などは有料化から除外されているようです。

また,紙袋・布の袋や持ち手のない袋も除外されるようです。

弁護士としては,よく本屋で法律の専門書籍を大量に買い込みますが,1~2冊くらいだったらプラスチック製の買い物袋で有料,5~6冊を超えるような場合は紙袋や布製の袋で渡されることが多かったので,買った本が少なければ袋は有料,多ければ無料,とちょっと違和感を感じるような状況になりそうです。

名古屋駅の近くだと,ジュンク堂や三省堂でよく書籍を購入しますが,多めに買った場合は紙袋でもらえますので,人によっては1~2冊でも紙袋に入れてくれ,ということを言って,本末転倒な感じになりそうな気もしなくもないですね・・・

なお,レジ袋の有料化についてはこちらの経済産業省のホームページがわかりやすいです。

https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/plasticbag_top.html

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令和2年6月から,弁護士法人心四日市法律事務所がオープンいたしました。

四日市近辺にお住まいの方は,ぜひお越しください。

弁護士法人心四日市法律事務所のサイトはこちら

https://www.yokkaichi-bengoshi.com/


オンラインで法律相談



新型コロナウイルスによる緊急事態宣言は解除されましたが,全国の感染者数の推移やまだ特効薬ができていないことからすると,第二波・第三波もあり得そうです。

私の所属する弁護士法人心でも,来所でのご相談はぐっと減り,お電話でのご相談が増えたように思います。

当法人では,来所でもご安心いただけるように,社員全員がマスクを常時着用・毎日の検温,相談室にアルコール消毒を設置し,入退出時の清掃の徹底,お茶出しもペットボトルでしか行わないなど,コロナ対策をしっかり行っています。

ただ,それでもやはり来所には抵抗感がある,という方もいらっしゃいますので,電話でのご相談も積極的に行っています。

また,やっぱり弁護士の顔を見て相談したい,という方もおられますので,オンラインでのテレビ電話相談も行っていますので,ご希望の方はお気軽に当法人のフリーダイヤル(0120-41-2403)までお問い合わせください。

なお,弁護士会のルールやご相談内容の複雑さ等によっては,どこかのタイミングで直接ご来所いただかなければならない案件もございますので,この点はご注意ください。

新型コロナウイルスによる相続税の申告期限の延長


新型コロナウイルス感染症拡大防止のため,国営庁から相続税についても,申告・納付期限に関する期限延長手続きのFAQが発表されました。

相続税の申告期限は,原則として,相続開始(亡くなった日)の翌日から10か月以内です。

この間に,相続財産の調査・評価,相続人の調査,遺言書の調査,遺産分割協議書の作成などの様々な手続を行わなければなりません。

ただ,新型コロナウイルス感染症の影響により,相続人等が期限までに申告・納付ができない「やむを得ない理由」がある場合には,個別に申請することで期限の延長が認められるようです。

この「やむを得ない理由」について,国税庁は,「感染拡大により外出を控えている場合」や「平日の在宅勤務を要請している自治体にお住まいの場合」を含めていますので,緊急事態宣言が国・地方自治体から出されている場合は広くその対象とされるように思われます。

ただ,延長される期間は,「やむを得ない理由」がやんだ「2か月以内の日」のようですので,逆に,放置していると非常にタイトなスケジュールとなってしまうおそれも十分に考えられます。

申告期限まで2か月しかない状況で,その段階から税理士に相談に行っても断られる可能性もあり得ます。

ご自宅内でもできる範囲で,相続税の申告準備を行っておくことをお勧めします。

私の所属している税理士法人心では,相続税申告の電話相談も受けておりますので,相続税申告でお困りの方は,先延ばしにせずになるべく早めにご相談されることをお勧めします。

国税庁の「相続税の申告・納付期限に係る個別指定による期限延長手続に関するFAQ」はこちら

名古屋相続税相談室by税理士法人心のサイトはこちら

【相続の法改正】配偶者居住権・短期居住権が明日から開始

以前ご紹介したように,現在,我が国では約40年ぶりに民法の相続部分が改正されました。

平成31年1月から,順次,施行されています。

そして,今回,令和2年4月1日から配偶者居住権及び配偶者短期居住権が創設されることになりました。

配偶者短期居住権について,例えば旦那さんが亡くなった後,本来であれば旦那さんの名義の家・土地は,奥さんも含めた他の相続人の物でもありますので,奥さんは当然にその家に住み続けるわけにはいかず,法律的には他の相続人に対して,家賃相当額のお金を支払うべきではないか,という議論がありました。

配偶者短期居住権では,奥さんの家に住み続ける権利を守るため,旦那さんが亡くなった後,奥さんや他の相続人との遺産分割が終わるまでの間は,奥さんは家賃等の負担なく当然にその家に住み続けることができるようになりました。

ただ,この権利は,判例で事実上認められていたようなものでしたので,それほど大きな変化ではないかもしれません。

配偶者居住権は,遺産分割が終わった後も,旦那さんの家に奥さんが住み続けられる権利です。

これは,認められると最大で奥さんが亡くなるまでの間,住み続けられますので,非常に長い間,住むことができるようになります。

ただし,この権利が認められるためには,生前に旦那さんが奥さんに遺言書で配偶者居住権を与える旨を書いておくか,旦那さんが亡くなった後に奥さんも含めた他の相続人と遺産分割協議を行い奥さんに配偶者居住権を与えることを認めなければなりません。

後から,遺産分割協議で決める方法は,非常にトラブルの元となりやすいため,お勧めしません。

遺言書であらかじめ用意しておく方が確実です。

これまで遺言書を書いておられない方は,当然,書かれるべきですし,これまで遺言書を書かれた方も,この配偶者居住権は新たに書き足す必要がありますので,一度,弁護士にご相談ください。

名古屋で遺言書をお考えの方へ

弁護士法人心の遺言に関するサイトはこちら

相続放棄を考える際に知っておくべきこと

亡くなった親が預貯金や不動産などのプラスの財産をほとんど持っておらず,借金が多いと予想される場合,「相続放棄」をすることが考えられます。

また,借金はない場合でも,親が持っていた不動産が,資産価値はほとんどないのに管理費用だけは非常に高い金額がかかる「負」動産のようなときも,相続放棄を検討するべきです。

亡くなった親の財産のうち,プラスの財産とマイナスの財産とどちらが多いのかわからない場合は,「限定承認」という手続があります。

これは,プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて,プラスの相続財産がある場合のみ,相続するという手続です。

この手続は,一見すると非常に便利な手続に思えます。

しかし,この手続を選択すると,一旦,亡くなった親の財産をすべて売却したものとみなして,譲渡所得税が発生し,税金を納めないといけません。

相続に詳しくない弁護士のなかには,この点を説明しない者もいるようですので,注意が必要です。

それから,相続放棄を考えられる場合,亡くなった親の財産には手をつけてはならない,というのが大原則です。

相続放棄手続は,基本的に,亡くなった日から3か月以内に家庭裁判所に申し立てることで行いますが,その前に亡くなった親の財産を費消してしまうと,「相続することに決めた」とみなされてしまい,相続放棄ができなくなる可能性があります。

なお,亡くなった親が契約者で,自らが受取人になっている生命保険金を受け取ることは問題がありませんが,亡くなった親が契約者兼受取人になっている生命保険金は手をつけてはならないなど,非常に区別がしづらいものもありますので,相続放棄をお考えの方は,一度,相続に詳しい弁護士にご相談いただければと思います。

不動産を用いた相続税対策の注意点

現預金を不動産に換えると,土地や建物の評価減のため,相続税対策を行うことができます。

ただ,税務署が租税負担の実質的な公平を著しく害することが明らかな「特別の事情」がある場合には,評価減が否定されることもあり得ます。

そのような裁判例が,東京地方裁判所で令和元年8月27日にでたため,相続関係の弁護士が注目しています。

この裁判例では,被相続人は90歳,91歳のときに銀行から借り入れをして各不動産を購入しました。

借入金と各不動産の購入がなければ,相続税が6億円超かかるところでしたが,各不動産の評価額と比較すると借入金の方が多かったため,相続税がかからないことになりました。

よくある相続税対策のために不動産を購入した例にも思えますが,裁判所は,各不動産の購入と借入に相当する行為を行わなかった他の納税者との間で,かえって租税負担の実質的な公平を著しく害するとして,納税者の主張とは異なる評価額を認定しました。

具体的には,被相続人がA不動産を約8億円で購入→約2億円で評価,B不動産を約5億5000万円で購入→約1億円で評価していたところ,裁判所はA不動産を約7億5000万円,B不動産を約5億円で評価するのが適切,と判断しました。

この件では,納税者は,評価通達通りの評価方法で評価額を計算していたにもかかわらず,税務署から否認され,裁判でも負けています。

裁判では,購入時期や購入当時の被相続人の年齢などの様々な考慮要素から相続税を節税するために,あえて借入や不動産の購入を行ったという経緯も考慮して納税者の主張する評価減を一部認めませんでした。

不動産を用いて相続税対策を行いたい,というのは納税者の心理としては極当たり前のことですが,方法には注意が必要です。

弁護士業務と年末年始

私の所属する弁護士法人心だけではなく,多くの弁護士事務所・法律事務所は年末年始は休みかと思います。

ただ,年末でも年始でも刑事事件は起きますので,そんな場合に備えて,各地の弁護士会では弁護士が持ち回りで待機し,国選弁護人として求められても対応できるようにしています。

裁判所でも,逮捕状等の令状の審査に備えて,裁判官や裁判所書記官も持ち回りで宿直当番を行っているようです。

逮捕や勾留などの私人の身体拘束は,法律で拘束期間が厳格に定められていますので,年末年始でも裁判所・検察・弁護士は,最低限の対応はできるようにそれぞれ工夫しています。

もちろん,弁護士は刑事だけでなく,民事でも時効や控訴期間といった時間制限がある手続がありますので,年末年始だからといって,気を抜けないところです。

なお,弁護士法人心は,令和元年12月28日(土)から令和2年1月5日(日)は休業させていただき,新規相談のフリーダイヤルについては,令和元年12月27日(金)19時に終了し,令和2年の新規相談のフリーダイヤルは,1月6日(月)9時から開始いたします。

来年度も,よろしくお願いいたします。

家族や親族の寄与には生命保険で報いる


民法の相続分野の改正が行われたため,相続人以外にも,一定の範囲の親族の介護や家業を手伝った際の特別な寄与には,「特別寄与料」が認められることになりました。

特別寄与料を認めるかどうか,認めるとしてその額をいくらとするかは,原則として,特別寄与者と請求される相続人の協議で決めますが,相続人は取得できる相続財産が少なくなってしまいますので,なかなか協議に応じてくれないのが現実です。

また,あくまでも「特別な寄与」が必要となりますので,過去の裁判例から考えても,例えば,被相続人の介護をしたからといって,ホームヘルパー等の時給相当額の寄与料が認められる・・・などということは,なかなか難しく,特別寄与者の貢献に報いてあげられないことも考えられます。

そこで,介護等の面倒を見てくれてた親族や家族に適切に報いるのであれば,生命保険を活用する方法があります。

生命保険の受取人を特別寄与者にしておけば,相続財産とは別個に特別寄与者は寄与料を受け取ることができますので,寄与料の額をめぐって相続人と争う必要はなくなります。

息子の妻に介護等の面倒を見てもらっていたり,婿養子である義理の息子に家業等を手伝ってもらっているような方は,後々の争いを防止する観点から,生命保険も検討されることをお勧めします。

相続について名古屋で弁護士をお探しの方はこちら

司法試験の予備試験の問題をAIが的中

司法試験の予備試験の問題を,AIが約60%的中させたというニュースを見ました。https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1905/20/news122.html

過去問等からデータを蓄積して,出題予想をさせる方法は,AIが得意とするところなんでしょうね。

司法試験の法律問題は,旧司法試験も含めると膨大な量がありますので,これからはもっと的中率があがるのかもしれませんね。

法律改正があった箇所は難しいのかな?とも思いますが,過去問と法律の改正情報のデータを蓄積させると,法律改正にすら対応した出題予想が可能になるかもしれません。

短答式試験は弁護士になるための最低限の知識を身につけるための試験ですが,私は苦手だったので,こういう技術を司法試験予備校が導入してくれると,試験対策的な意味ではすごく助かります。

他方で,こういった傾向が進むと,安易に「的中率の高い予備校の試験を受けとけばいいや」ということで,出題者の出題意図を考える,といった考える力が身につかなくなるのかな,とも思わなくはないです。

ただ,資格試験は,一定の資格を取得するための試験にすぎません。

大事なことは,資格を取ってから何をするか,という方なので,試験対策自体が効率的にできるようになることは,個人的には賛成です。

弁護士の業務でも,判例の蓄積から作成されているデータベースがありますが,これからの時代ではますます加速していきそうです。

依頼者の方から,損害賠償の額は?過失割合は?実刑?執行猶予?懲役何年くらい?と聞かれて,判例を調べてお答えして・・・とそのような業務はAIに取って代わられるんでしょうね。

【相続法改正】相続人以外の者が貢献した場合の特別寄与料

相続に関する民法の改正で,相続人以外の親族が,被相続人に対する療養看護その他の労務の提供により,被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をすると,特別寄与料という金銭を請求できるようになりました。

これまで,例えば,長男の妻が,義理の父親の面倒を見たり,義理の父親の事業を手伝っていたとしても,長男の妻の貢献はあくまでも相続人である「長男の貢献の一部」としてしか評価されませんでした。

今回の法改正では,被相続人の「親族」(①6親等内の血族,②配偶者,③3親等内の姻族)であることが要件となっていますが,特別の寄与をした場合に貢献に応じて,特別寄与料を請求できる者の範囲が広がりました。

ただ,弁護士としては,法律上・実務上の問題点も気になります。

特別寄与料の請求は,あくまでも,「特別の寄与」であることが必要です。

ですので,これまでも扶養義務が存在する相続人の場合は,その「扶養義務」(民法877条1項)の範囲を超えるほどの「特別な」寄与が必要でした。

今回の法改正で特別寄与者として認められた「親族」のなかには,民法上の「扶養義務」を負っていない者も含まれますので,法解釈上は,「扶養義務」を負っている親族が行った貢献と「扶養義務」を負っていない親族が行った貢献では,「扶養義務」を負っていない親族が行った貢献の方が,「特別な寄与」として認められやすいのではないか,という解釈があり得ます。

果たしてこれが妥当なのか,どこまで認められるのか,という点は,今後の裁判例の蓄積を待たなければなりませんが,弁護士としては,どこまで認められるのかはっきりしない特別寄与料に頼るのではなく,貢献してくれた方には,遺言書を作成し,遺贈でその貢献に報いてあげて欲しいところです。

【相続法改正】配偶者居住権の価額と相続税

先日,配偶者居住権の金銭的価値の計算方法について記載しました。

今回はその続きとなります。

現在の法制審議会の部会資料では,「長期居住権(配偶者居住権)付の所有権」よりも,「長期居住権(配偶者居住権)」の方が,金銭的には高く評価される場合があります。

これは,感覚的にはよくわかる話です。

配偶者居住権,というものが権利として認められた以上,第三者は「配偶者居住権付」の所有権を購入しても,「誰かに住み続けられてしまう」所有権しか手に入りませんので,いわゆる「完全な」所有権よりもはるかに価値が劣ります。

この問題点として,主に税理士の先生からは以下のような指摘がされています。

つまり,その後に配偶者が死亡すると,「配偶者居住権」は消滅し,建物を相続していた相続人は,「完全な」所有権を手にすることになります。

このときに,当該相続人には新たな「経済的価値」が流入したと考えることもできるのではないか?ということです。

これは,理論的にはあり得なくはないのですが,現在の法制審議会の議論では,このようには考えないようです。

ですので,当該相続人にかかる相続税は,一次相続時の「配偶者居住権付の所有権」を相続したときの価額で計算することになりますので,「完全な所有権」を相続したときよりも低い金額になることが想定され,節税になるのではないかと言われています。

確かに,現時点では節税になるように思えます。

しかし,この制度はまだ開始されていないので,国税庁がこの点について通達等で課税する可能性が全くないとはいえません。

なによりも,弁護士としては,一次相続時に「配偶者居住権付の所有権」が「完全な所有権」よりも低い金額で評価されることで,他の共同相続人が不公平感等を感じ,争いの種になるのではないかと危惧しています。

また,配偶者居住権は,遺産分割協議に相続人全員が同意するか,遺言書に記載することで認められますが,平成32年4月1日以降に亡くなった方に適用されます。

相続税に関してはこちらのサイトをご覧ください。

【相続法改正】配偶者居住権の新設と権利の金銭的価値

以前のブログで,相続に関する民法改正で「配偶者居住権」という権利が新設されることをご紹介させていただきました。

これは,報道番組でもよく焦点を当てて報道されていますので,耳にされた方も多いかもしれません。

今回は,こちらの権利の「金銭的価値」について記載します。

法制審議会の部会資料によりますと,建物の固定資産税評価額は,①長期居住権付所有権の価額と②長期居住権の価額を合算した額とされています。

そして,①長期居住権付所有権の価額とは,

固定資産税評価額×法定耐用年数ー(経過年数+存続年数)/法定耐用年数ー経過年数×ライプニッツ係数

とされているようです。

そして,②長期居住権の価額は,固定資産税評価額から①長期居住権付所有権の価額を差し引いた額とされるようです。

上述した①長期居住権付所有権の価額の計算方法は少々わかりにくいですが,ようは,配偶者が亡くなった際に,他方の配偶者が若ければ若いほど価値が高くなるし,築年数が少なければ少ないほど価値が高くなる計算のようです。

具体的な金額はケースバイケースですが,法制審議会の部会資料で例として挙げられているケースですと,「築20年の鉄筋コンクリート造で固定資産税評価額1000万円のマンションの一室を,70歳の女性配偶者が相続した場合」のケースとして,

①長期居住権付所有権の価額が,143万円

②長期居住権の価額が,857万円

として計算されています。

つまり,所有権よりも,長期居住権の方が高く評価されているようです。

この点について,弁護士・税理士の立場から非常に気になることがありますので,そちらを次回のブログで記載したいと思います。

【相続法改正】自筆の遺言書を法務局が預かってくれる?

今回の民法の相続に関する法改正は,約40年ぶりの大幅改正ですので,弁護士をはじめとして,たくさんの専門家が注目しています。

民法の法改正に合わせて,「遺言書の保管等に関する法律」ができました。

この法律によって,自筆の遺言書を法務局に保管してもらう制度ができました。

これまで,自筆の遺言書は自宅に保管したり,銀行の貸金庫に保管したり,自分で保管しなければならなかったため,紛失したり,改ざんが疑われたり,様々な問題がありました。

今回の法改正で,法務局で保管してもらうことができるようになりますので,紛失の危険は,これまでよりもずっと少なくなります。

また,法務局に預けた自筆の遺言書の場合,これまでの運用と異なり,家庭裁判所による検認手続きを経なくてもよいと改正されました。

検認手続きとは,家庭裁判所で遺言書が保管されていた状態をチェックし,記録に残す手続きですが,この手続きを行うために他の相続人に連絡しなければならないなど,手間や他の相続人と無用なトラブルを招きかねないリスクがありましたが,今回の改正で検認も不要となりました。

ただ,注意が必要なことは,法務局はあくまでも保管をするだけで,内容のチェックをしてくれるわけではありません。

あくまでも形式面での簡単なチェックにとどまるようですので,遺言書を無効としないためにも,作成時には遺言書を日頃から作成している弁護士に相談することをお勧めします。

遺言に関して弁護士をお探しの方はこちら

【相続法改正】自筆証書遺言の方式緩和?

最近,TVの朝のニュース番組でも民法の相続改正について特集されていますね。

弁護士等の士業が見る雑誌ではなく,週刊〇〇みたいな一般の方向けの週刊誌でも相続に関する特集をよく見ます。

そのなかで,「自筆の遺言書が作りやすくなった!」みたいな記載をよく見ます。

具体的には,自筆の遺言書の一部をパソコンで作ることが可能になった~といった説明です。

ですが,これは少々誤解があります。

確かに,遺言書の一部をパソコン等で作成することができるようにはなりましたが,これはあくまでも,財産目録に限ります。

正確には,財産目録について,預金通帳や登記事項証明書等をパソコンで作成したり,これらの書類のコピーを添付する方法でも可能となりました。

ただ,これらの方法で作成した場合は,その目録の一枚一枚に手書きで署名し,押印する必要があります。

表と裏に両方記載がある場合は,両面ともに署名と押印が必要です。

なお,あくまでもこれらの方法で作成することが可能になったのは「財産目録」だけですので,遺言書の本文はすべて自筆で書かなければなりませんので,逆に混乱される方もおられるのではないかと危惧しています。

自筆で遺言書を作成された場合は,法律のルールに則っておらず,無効となってしまうことがよくありますので,作成される際は,弁護士に相談されることをお勧めします。

※こちらの法改正は,平成31年1月13日以降,適用されます。

注文者の帰責事由により履行不能となった場合の利益の内容

 請負契約締結後,工事途中に注文者の帰責事由により履行不能となった場合,「現行の民法では536条2項により,請負人の報酬請求権は出来高に限定されず,全額存続する。」というのが現在の最高裁の判例です(最判昭和52年2月22日)。

 したがって,請負人は,注文者に対し,①請負契約の締結,②工事完成債務の後発的不能,③②の履行不能が注文者の帰責事由であることを示す評価根拠事実,を主張立証し,請負報酬金額全額を請求することができます。

 これに対し,注文者は,①帰責事由に関する評価障害事実,②民法536条2項に基づく利益償還請求による相殺を抗弁として主張し得ます。

 この利益償還請求の内容は,請負人が工事完成債務を免れたことと相当因果関係のあるものと解されており,具体的には,未施工部分を完成するためにかかる人件費,材料費,ゴミ処理費,経費等のうち,いまだに支出されていないものとされています。

 ただ,実際に争うとなると,未施工部分を注文者が他の請負人に任せて完成させた場合,その完成までにかかった費用がすべて「利益」とまでいえるのか,非常に悩ましい問題があります。

 注文者の立場では,最初に頼んでいた請負人とは異なる請負人に頼み,続きから行って工事を完成させた場合,完成までにかかった費用全額を最初の請負人は支払を免れているわけですから,最初の請負人が得た「利益」であると主張したいところです。

 ただ,引き継いだ請負人も,いきなり完成までに必要な人工を大量に集めて施工する,ということは通常できませんから,多少,通常の相場よりも高めの人工代を支払って職人を集めるということもあります。

 このような場合,民法536条2項の利益償還請求は,あくまでも注文者に帰責事由があることを前提としていますから,”注文者に責めに帰すべき事由があるために高めの人工代が発生した”ということになるかと思います。

 そう考えると,”通常の相場と実際にかかった人工代の差額”の部分まで,請負人が支払を免れることができて得た「利益」といえる,とストレートに考えることには違和感があり,非常に悩ましい問題です。

 そもそも,「人工代」に関しては,熟練した職人であれば直しが入ることも少なく時間もあまりかからない=結果として,人工代があまりかからない。

 けれども,能力の低い職人であれば直しが入ることも多く時間が掛かる=結果として,人工代がかさむ。

 というある種の矛盾も抱えており,非常に算定するのが難しい側面があり,弁護士としてはいかに説得的に立証ができるか,腕の見せ所でもあります。

 利益の額について,裁判例等では,請負人が受けている他の同種の工事等の利益率等を参考に,「利益」の額を算定しているものもあるようです。

 これらの内容に具体的に踏み込んで記載した書籍は非常に少ないのですが,判例タイムズ2019年2月号No.1455の「建築訴訟の審理モデル~出来高編~」に記載があり,参考になりました。

 

年明け1月13日から自筆証書遺言の作成方式が緩和されます

先々月のブログでもご紹介したのですが,開始が近づいてきたので,再度,情報提供させていただきます。

2019年1月13日から,自筆証書遺言の作成方法が緩和されます。

現行の民法では,自筆証書遺言は,すべての文章を自書しなければならないと定めており,パソコン等で作成することが一切認められていません。

そのため,高齢の方にとって,遺言書を作る際のハードルの一つとなっています。

私たち弁護士に依頼された際も,公正証書遺言ではなく,自筆証書遺言を作成する際は,遺言書の文案自体は弁護士が作成し,誤りの無い文章を作成しますが,最後は依頼者の方にご自身で書いていただく必要があります。

不動産や預貯金,保険等が複数ある場合は,予備も作成しておくことも考えると,10枚以上の用紙に手書きで書かなければならないこともありますので,非常に手間暇がかかります。

今回の改正民法では,自筆証書遺言のうち,財産目録に関してはパソコンによる作成や登記事項証明書,預貯金通帳等の写しを添付する方法でもよく,自書しなくてもよいこととなりました。

この場合,財産目録のすべてのページに署名・押印は必要となりますが,もっともページ数が必要となるのは財産目録のページですので,だいぶ作成するのが楽にはなるかと思います。

ただ,自筆証書遺言の場合は,相続に精通した弁護士に相談せずにご自身で作成してしまったり,紛争案件を行うことができない弁護士以外の専門家に相談して作成した場合,作成内容に不備等があるため,せっかく作っても意味が無くなってしまったり,かえって争いの火種になってしまうこともあります。

遺言書を作成される方は,ご家族の平穏な暮らしを願って作成されると思いますので,作成される際は,相続案件に強い弁護士に相談されることをお勧めします。

名古屋で遺言書の作成についてお困りの方は,弁護士法人心でご相談を承っておりますので,お気軽にご連絡ください。

ホームページはこちらです。

インターンシップイベントの開催

名古屋の弁護士の小島です。

弁護士法人心では,学生さんに向けてインターンシップを行っています。

私も,インターンシップイベントについて,リクナビやマイナビに参加し,説明をさせていただいております。

今後の予定としましては,11月は,27日に名古屋,30日に東京。

12月は5日に名古屋,11日と15日に東京で弁護士法人心のセミナールームで開催を予定しています。

実際に,事務所に来ていただくこともできますので,雰囲気等も感じていただけるかと思います。

当日は,弁護士法人心の代表弁護士から,皆さんに弁護士の仕事の内容や弁護士法人心でのパラリーガルの仕事内容,これからの就職活動や社会人になる上で大切な考え方等をお話させていただきます。

毎年,たくさんの方にご応募いただいておりまして,今年も数日程は既に約80名分の席がすべて埋まっていると聞いています。

直前になりましたら,キャンセルもでることがありますので,参加をご希望される方は諦めずにチェックいただければ幸いです。

寒かったり暑かったり,寒暖の調整が難しい日が続いていますが,お体など崩されないようにご注意ください。

一人でも多くの方のご参加をお待ちしていますので,よろしくお願いします。

相続法の改正情報

民法が大幅に改正されますが,相続法も改正の対象となっています。

主な改正点は,

1 配偶者の居住権の保護

2 遺産分割に関する仮払制度の明確化等の見直し

3 遺言制度に関する自筆証書遺言の保管等の見直し

4 遺留分制度に関する見直し

5 相続の効力に関する見直し

6 相続人以外の貢献を考慮するための制度

です。

今日は,「1 配偶者の居住権の保護」について説明します。

【夫が所有している自宅に夫と住んでいたが,先日,夫が亡くなってしまった。

相続人は,私と息子の二人ですが,私はいつまで自宅に住むことができるのでしょうか。】

このような場合,民法の大原則から考えますと,遺された妻と息子が自宅についてそれぞれ2分の1の潜在的な持分を有していますので,妻だけが自宅に住み続けているのであれば,妻だけが家賃相当額の利益を得ているようにも思えます。

ただ,通常,亡くなった夫は,妻が自分の死後も自宅に住み続けることは想定していたと思われます。

そのため,判例では,被相続人(夫)と同居していた相続人(妻)の間に,遺産分割が終わるまでの間は,無償で自宅を使用し続けても構わないという使用貸借契約が成立していた,と考え,配偶者に短期の居住権を認めていました。

今回の相続法の改正では,このような判例の趣旨を受けて,

① 配偶者が被相続人所有の建物に,仮に所有者が変わっても終身または一定期間という比較的長い間,無償で住み続けられる権利(配偶者居住権),

② 配偶者が被相続人所有の建物に,死亡から遺産分割によって建物の帰属が確定するまでの比較的短い間,無償で住み続けられる権利(配偶者短期居住権),

を認めることにしました。

配偶者の保護を考えた改正ですが,配偶者以外の相続人にとっては,一定の不利益を受けることにもなりますので,ご生前の対策をきちんとされていないと思わぬ家族間の争いに発展するかもしれません。

名古屋市やその近郊にお住まいの方で,相続についてご心配な方は,私が所属しております弁護士法人心にお気軽にご相談ください。

自筆証書遺言の作成ルールが緩和されます

平成31年1月13日から施行される改正民法で自筆証書遺言の作成ルールが緩和されるようです。

これまでは,自筆で作成する遺言書は,本文・氏名・財産の一覧等をすべて自分の手で自筆して書かなければなりませんでした。

これは自筆証書遺言の一つのハードルになっていたのですが,改正民法では一部緩和され,財産目録をパソコンで作成したり,銀行等の預貯金通帳のコピーを添付することが認められるようです。

この方法が認められると,遺言書本文には,「別紙財産目録のとおり・・・」などと手書きで記載し,財産目録をパソコンで作る,ということが可能になりますので,時間の短縮になります。

ただ,遺言書を手書きさせる必要が本当にあるのか,とは疑問に思います。

手書きしているからといって,その遺言書が本人が書いたものとは断定できませんし,有効・無効はよく争われます。

確かに,全文パソコンでもOKということになれば,遺言者がのぞんでいない内容の遺言書にサインだけさせるような詐欺も増えそうな気がしますが,これは別に手書きでも起こりえますし・・・

本人が書いたものかどうか,という観点であれば作成しているところを動画で撮影すればいい話ですし,現に,当法人で自筆証書遺言を作成する場合は,当然ですが動画の撮影も行い,後から無用な争いが生じないような体制を整えています。

名古屋市やその近郊で遺言書作成でお悩みの方は,弁護士法人心の遺言サポートサイト(http://www.souzoku-meieki.com/yuigon/)をご覧ください。

裁判と電子化

今年の2月頃に,裁判所も訴状や準備書面をインターネットで提出できるように最高裁が検討を開始したとのニュースがありました。

弁護士業界以外の方はびっくりするかもしれませんが,いまだに弁護士と裁判所の間では,書面のやり取りをFAXや郵送で行っています。

お客様とやり取りするときにFAXを使用することなんてまずありませんので,FAXをいまだに使っているところなんて裁判所くらいではないでしょうか・・・

メールでの提出方法だと送信間違いが,という意見もあるようですが,FAXでも番号を間違えて送ってしまうことはあり得ますので,ヒューマンエラーは理由にならないように思います。

私の所属する弁護士法人心では,FAXを送る際は必ず二人体制で電話番号も声に出して二回確認するという方法を採って,万が一にでも間違いがないような対策を採っていますが,メールだとこれも難しくなりますね。

まぁ。メールではなく,裁判所がアプリを作って提出先を限定するような方法とか,色々方法はあるような気がします。

セキュリティ面を心配する声もあるようですが,郵送も郵便事故が起きることもありますし(私も経験があります),インターネットでの提出方法がそれほどセキュリティ面で劣るとも思えませんし,場合によってはむしろセキュリティ面は上がるかもしれません。

電話期日も,もう少し簡単に利用できるようになって欲しいですね。

今は電話回線を利用して,音声のみで裁判所と通話していますが,ネット回線を利用して,ポリコムやスカイプ,ライフサイズなど,顔が見れるような状態での会議の仕方など,まだまだ効率化できそうなところは山ほどありそうです。