マネーローンダリング規制と依頼者の本人確認①

こんにちは,弁護士の田中浩登です。

 

本日は,マネーローンダリング規制に伴う弁護士の本人確認の義務についてお話させていただきます。

弁護士の本人確認義務については,直接的には弁護士以外の方の利害にはかかわらなさそうな部分ですが,弁護士にご依頼いただく上で非常に重要な規制になってきますので,知っておいていただければと思います。

 

そもそも,マネーローンダリングとは,犯罪収益などによって生じた金銭につき,口座を転々とさせたり,物へと形を変えたりするなどして,出所をわからなくすることをいいます。

その手段として,弁護士への依頼や送金が使われる恐れがあるとのFATFの指摘を受け,その対策のために日弁連で定められたのが「依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程」(以下,「本規程」という。)です。

平成29年12月8日の日弁連臨時総会によって本規程の規則が改正され,今年,平成30年1月1日より,依頼者の本人特定事項の確認と記録保存等の履行状況の報告が義務化されました。

これに伴い,各弁護士事務所で,依頼を受ける際には以前より厳格な形で本人確認が行われることになることが予測されます。

 

本規程により,本人特定事項の確認が必要なのは以下のような場合となります。

1 法律事務に関連して200万円以上の資産を預かる場合

2 次に掲げる取引等の準備または実行する場合

⑴ 不動産の売買

⑵ 企業のM&A取引,設立・出資取引,定款の目的の変更

⑶ 団体等の業務執行者又は代表者の選任

⑷ 信託契約の締結,信託の併合若しくは分割又は信託契約若しくは規約に規定された目的若しくは受託者の変更

⑸ 資産が犯罪収益の疑いがある場合,犯罪収益の隠匿の疑いがある場合

⑹ 同種の取引,行為の態様と著しく異なる態様である場合

3 法律事務に関連することなく資産の預託を受ける場合

また,①依頼者が法人その他の団体である場合や②依頼者が子供で依頼行為を行うのが法定代理人である場合など,依頼者と依頼行為を行っている自然人が異なる場合については依頼権現の確認が必要とされています。

 

具体的な本人特定事項の確認方法としては,以下のとおりです。

A 自然人の場合

【対面】①~③のいずれかの方法

① 写真付自然人本人確認書類(運転免許証や旅券等)の提示

② 自然人本人確認書類(住民票の写し等)の提示

+委任契約書等を転送不要郵便で送付する

③ 保険証・年金手帳等の提示

+保険証・年金手帳等の提示

or+自然人本人確認書類の提示又は送付を受ける

or+補完書類(公共料金の領収書等)の提示又は送付を受ける

【非対面】

④ 自然人本人確認書類(住民票の写し等)の送付を受ける

+委任契約書等を転送不要郵便で送付する

B 法人の場合 ①~③のいずれかの方法

① 法人本人確認書類(登記事項証明書等)の提示

② 法人本人確認書類(登記事項証明書等)の写しの送付を受ける

+委任契約書等を転送不要郵便で送付する

③ 弁護士が官公庁等から法人本人確認書類(登記事項証明書等)の発行又は発給を受ける

(「マネーローンダリング規制と依頼者の本人確認②」へつづく)