少年事件について②

名古屋の弁護士の田中浩登です。

今回は,少年事件における少年審判,弁護士の活動についてお話させていただきます。

 

少年事件における少年審判は,成人の刑事事件の裁判とは異なり,問題となっている非行事実のみでなく,少年の「要保護性」についても審判の対象になります。

「要保護性」は,

①再非行の危険性(少年の性格や環境に照らして将来再び非行に陥る危険性があるか否か)

②矯正可能性(保護処分による矯正教育を施すことによって再非行の危険を除去できる可能性)

③保護相当性(保護処分による保護がもっとも有効かつ適切であるか)

を内容とするものです。

この要保護性が審判の対象とされていることで,非行事実が軽微であったとしても,要保護性が高い場合には少年院送致のような重い処分に付されることがあるので,要保護性の解消に向けた活動が重要となります。

 

非行事実に争いがない場合には,弁護士は,少年が被疑者段階のときには弁護人として,家庭裁判所に送致された後については付添人として,主として少年の要保護性の解消に向けた活動を行います。

具体的には,少年自身への働きかけ,家庭環境の調整,学校・職場関係の調整,被害者対応等といった活動を行うこととなります。

 

少年自身への働きかけは,要保護性解消のための根幹となる活動です。

どれほど周りの環境を整えたとしても,少年自身がその環境で変わっていけなければ真に更生することはできません。

そのため,弁護士は,少年が事件について内省を深め,事件の背景にある問題に向き合って対処していくための働きかけをしていくこととなります。

 

家庭は,少年にとってもっとも身近な環境であり,少年の非行の背景には,家庭の問題があるということが少なくありません。

そのため,弁護士は少年の家族とよくコミュニケーションをとって,家庭の状況を把握し,家庭内の少年の居場所を確保できるよう調整を行うこととなります。

 

学校や職場の調整は非常に慎重に行う必要があります。

私立高校等では,少年が事件を起こして逮捕されたことが知られるとそれだけで退学させられる等,少年の要保護性を解消する上で障害が生じることがあります。

そのため,学校や職場に非行の事実が知られていない場合には,早期に身柄拘束を解き,通学・通勤できるよう活動を行っていくことになります。

学校や職場にすでに非行の事実が知られている場合には,学校や職場の協力を求め,審判の後も受け入れてもらえる体制を整える等,少年が更生するための社会的資源を確保するための活動を行います。

 

被害者のいる事件について,被害者に謝罪し,適切な被害弁償を行うことは重要です。

少年が心から反省し,謝罪する気持が持てるよう,弁護士としては働きかけを行い,少年が反省できたときには,謝罪文等の形にして,被害者へ届けるなどの活動を行います。

 

以上のように,少年事件における弁護士の活動は多岐にわたりますが,弁護士は少年の更生のために全力を尽くしています。