民法改正~公序良俗~

4月になり,新入社員と思われる方の姿をよく見かけるようになりました。身体と精神の健康に気を付けながら,お仕事を頑張っていただければと思います。

ちなみに,新人弁護士は12月や1月に登録することが多いので,企業に入社された方々とは,仕事を開始する時期が少し違います。

さて,今回の民法改正についてのテーマは「公序良俗」です。

そもそも「公序良俗」とは何かと言いますと,公(=社会)の秩序と善良の風俗(=日常生活におけるしきたりや習わし)のことです。

これでも抽象的すぎて分かりにくいですよね・・・。

例えば,過去の裁判例では,食品衛生法に反することを知りながら,有毒性物質が混入したアラレを販売する契約を締結したという事案において,この契約は公序良俗に反して無効であるとしたものがあります(最高裁昭和39年1月23日判決)。

このような社会正義に反する行為等が公序良俗に反するものとして無効となります。

では,現行民法と改正民法の条文を見比べてみましょう。

現行民法90条「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は,無効とする。」

改正民法90条「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は,無効とする。」

ほとんど一緒ですが,よく見ると,改正民法の条文では「事項を目的とする」という文言がなくなっています(なお,ここに言う「目的とする」とは,一般的な意味とは異なり,「内容とする」という意味で理解されています)。

この改正によって,賭博に使う目的であることを貸主に伝えた上で締結された金銭の消費貸借契約のように,その契約の内容自体は公序良俗に反しないものの,契約締結に至った過程や動機・目的を考慮すると公序良俗に反するというものも,公序良俗に違反して無効になり得るということが条文の文言から読み取ることができるようになりました。

現行民法の下でも,上記のような契約は公序良俗に反して無効とする判例は出ていました(最高裁昭和47年4月25日判決)が,この度の改正により,このような裁判実務の考え方が条文上明らかになった形です。