配偶者居住権について

先月のブログでも触れましたが,コロナウイルスの感染がさらに拡がっているようです。
私の勤務地の名古屋駅周辺でも,この影響で平日,休日を問わずに行き交う人の数が非常に減少していますし,経済への影響は避けがたいものがあると思われます。

例年であれば,この時期には花見を楽しめたのでしょうが,今年はそういうわけにもいかなさそうです。
古来,季節を愛でてきた日本人の一人として,今年も美しく咲き誇ってくれている桜を観ると,少し寂しい気持ちになります。

コロナウイルスの影響で,みなさまそれぞれに行動の制限がかかってしまっているでしょうが,どうかできる限りの対策をしていただいて,この危機を乗り切っていただきたいと思います。

今回は,来月から施行される配偶者居住権をとりあげたいと思います。

配偶者居住権とは,配偶者に相続によって居住建物に無償で住み続けることを認める権利です。
高齢社会の進展によって,配偶者が亡くなった時の相続人が高齢であるケースが増えてきているといえますが,そのような相続人にとっては,長年住み慣れた住居に住み続けたと考えることが通常であるはずですし,近年は高齢者が住居を借りることが難しくなってきています。

しかし,たとえば,遺産のほとんどが自宅で,ほかに遺産がない場合には,配偶者が自宅を相続してしまうと,ほかの預貯金等の財産を相続することができなくなってしまいます。
そうずると,配偶者にとっては,自宅は相続できたものの,老後の備えとなる資金が不足し困った事態となりまねませんし,自宅を相続することすら叶わないかもしれません。

このような場合に,「自宅の所有権」を取得するのではなく,「自宅に住み続ける権利」を取得するのにとどめておけば,その分について他の財産を取得することができることになります。

この権利は相続人の協議によって設置することができますが,必ずしもすべての相続人がこの権利の設定に応じてくれるとは限りません。
そのため,この権利は遺言によっても設定することができますから,後の相続における紛争を防ぐためにも,遺言で決めておくことがよいでしょう。

配偶者居住権は,相続でもめることを防ぐだけでなく,相続税の対策にも有効です。
また,この権利を設定するためには要件がありますので,この要件を満たすかどうかを確認しておくことも重要です。
さまざまな可能性のある制度ですので,専門家のアドバイスも受けながら,検討してほしいと思います。

社会的な危機が訪れた際には,人は自らの人生について見つめなおすといいますし,万一のことがあった場合に備える機会になると思います。
自宅で家族とともに過ごされる時間が増えた方も多いでしょうが,これをきっかけにして,パートナーや家族を守るための検討をされてみてはいかがでしょうか。