自治体への土地の寄附について

コロナウイルスが世界的に流行しているようです。

愛知県内でも多くの感染者が確認されているため,名古屋でもマスクを着けながら行動している方が多いです。

 

今後,この件で社会にさまざまな影響が出ることが懸念されます。

それぞれの人が,それぞれの立場で,予防と対策をすべきですが,過度な混乱を招かないように冷静に行動をしてほしいと思います。

 

以前にブログで土地の所有権放棄について取り上げたことがあります。

今回は,これに関する資料が公表されておりましたので,お伝えしたいと思います。

 

私が,弁護士として相続案件に携わっていて非常に困るケースとして,相続財産に山林や農地が多く含まれており,相続人がすでに遠方に住んでいるなどしているために,その管理が困難というものがあります。

このような場合,相続人の誰もがその取得を望まないために,当該不動産についてはむしろマイナスの財産として評価したうえで,相続人の一人が引き受けるという扱いをすることがあります。

 

このような事情の背景として,不動産については所有権の放棄が容易ではないことは,以前のブログで取り上げました。

 

他方,不動産を自治体に寄付するという手段が考えられるかと思います。

ただし,「自治体は,容易には寄付を受け付けてくれない」という事情があることは,私も承知しておりました。

 

この点について,法務省の法制審議会「民法・不動産登記法部会」で自治体の土地に寄附に関する対応状況が明らかになりました。

 

全国市長会によると,全国の91都市に対して,土地の寄附の申出件数および受理件数を照会したところ,81都市から回答を得られ,申出自体はある程度の件数があるものの,受理をされたのは0件であったとのことでした。

ただし,上記の対象には,道路や水路などの公共施設の用地取得に係る寄附は除かれています。

 

土地の寄附を受理しない理由としては,「行政目的のない土地は受け取らない」,「維持管理コストの負担の増加」が挙げられています。

 

このような現状からすると,利用価値に乏しく,維持管理コストが高い土地については,引き続き,取得の負担が大きいということがいえます。

 

上記法制審議会では,国土の有効活用のため,一定の要件の下で,土地所有権の放棄を認める制度の創設について議論がされています。

このような制度が整備されることは,国策上も有用だと思いますし,遺産分割の内容にも影響すると考えられますので,引き続き,議論の経過を追っていきたいと思います。