ホームロイヤー契約について

令和となってから,初の投稿です。
すでに1ケ月近くが経ちますが,私の中では令和という言葉がすでに馴染んできたように感じています。

令和の時代が良い時代になって欲しいという思いはありますが,社会の抱える問題というのはどの時代においても無くなることはないのだろうと思います。
弁護士という仕事は,社会問題に常に直面しながら,問題の解決にあたるものであると感じます。

今回は,令和の時代でも最も問題になるのではないかと考られる高齢者についての問題を取り上げたいと思います。

高齢者についての問題は,医療や介護の分野でも重要性を増していますが,法律の分野でもそれに対する対策・対応が進んでいます。

そのひとつとして,ホームロイヤー契約という契約が注目されています。

ホームロイヤー契約とは,明確な定義があるわけではないのですが,高齢者の見守りやその財産管理等について,法律の専門家である弁護士が,継続的かつ総合的に高齢者の日常生活を支援するために締結される契約の総称です。
医療の世界でかかりつけの医師が「ホームドクター」と呼ばれているように,「ホームロイヤー」という言葉には,個人の相談に対応するかかりつけの弁護士という意味が込められているとされています。

高齢者が自らの財産管理をする能力に不安を抱えていたり,その能力が現実に低下したりしてしまった場合に,法律家がその財産管理に携わることには,さまざまな意義があります。
もちろん,「本人の財産を守る」という意義があることは間違いがありません。
成人後,親と同居をしない家庭が多くなり,もはや核家族化という言葉も古めかしくなってきましたが,そもそも高齢者の財産の管理を任せられる家族がいないという方もいらっしゃいます。
また,たとえ財産管理をする能力と意思がある家族が見つかったとしても,その家族が使い込みをしてしまうおそれや,他の家族から使い込みを疑われることもあります。
財産管理をしていた家族による使い込みがあった場合,法的には,相続の際に他の相続人が取り戻す手段もありますが,使い込みについての十分な証拠を集めることは困難なケースが多いです。
他方で,財産管理をしていた家族による使い込みがなかった場合にも,他の家族から使い込みを疑われた場合,きちんと帳簿を作成し,領収書を保管するなどしておかないと,「使い込みがなかったこと」を証明するのも困難な面があります。
そこで,専門家である弁護士が本人の財産管理に携わり,家族による使い込みの機会をそもそも作らないこと,財産管理が適正に行われていることについてもしっかり証拠を残すことで,後日のこのような紛争を未然に防ぐことができるという意義があるのです。

実際に紛争になってしまった場合は,当事者には経済面でのコストだけでなく,精神面でも多大な負担がかかってしまいます。
普段からこのような紛争に関わることの多い弁護士としては,これを未然に防ぎたいと常日頃から思っています。

医療の世界でも「予防医学」の重要性が謳われて久しいですが,私も法律の世界での「予防法学」において社会に貢献していきたいと感じています。