令和と書面の作成年月日

平成も残りわずかとなり,令和という新しい時代も目前に迫ってきました。
元号が新しくなるという経験は自分の人生では2回目ですが,前回の改元の記憶はあまりありませんので,新しい時代をどのように迎えることになるのか楽しみではあります。
裁判所では現在でも事件番号等に元号が用いられていますから,私たちの弁護士業務でも元号を使うことが多く,前向きな気持ちになれるような元号が選ばれてよかったと思っています。

今回は,このことに関連して,以前に自筆証書遺言について記載したことを補足したいと思います。

以前の記事で,相続法の改正にともなって,自筆証書遺言の方式が緩和されるという話を取り上げました。
すなわち,これまで遺言書を自筆で作成する場合には,そのすべてについて自書する必要があったのですが,財産部分について目録を添付する形で作成することも認められるようになりました。
ただし,施行日以前に作成された遺言書において,この方式が用いられていても無効ですので,後日の争いを避けるためには,施行日以後に作成されたことの証拠もしっかりと残しておくことが必要だということを,以前のブログで指摘しました。

この点について補足しますと,自筆証書遺言には作成年月日の記載が要件となっているところ,この作成年月日に新しい年号である令和を記載しておけば,少なくともそれ以降に作成されたことが確実であるといえるため,上記についての対策は十分だといえるでしょう。
なお,作成年月日には,必ずしも和暦を用いる必要はなく,西暦を用いることもできます。
私が遺言書の作成に携わる際にはすべて和暦で作成していますが,これも新しい年号を選ぶルールである「これまでに使用されたことのないもの」という条件が無ければ使用することに抵抗があり,今回の令和もこの条件を満たしています。

作成日に新しい年号が使用されていれば,同じようなことが契約書等のほかの書面にも言えるかと思われます。
書面の証拠の作成年月日が裁判等で争われることは少なくないのですが,新しい年号が用いられていれば,新しい年号発表以後に作成されたことが確実であるとはいえるでしょう。
逆に,たとえば書面に「平成35年」などと記載されており,新しい年号を使うことができたにも関わらず,合理的な理由もないのに使われていなかった場合には,新しい年号の発表以前に作成されたものである可能性が高いとはいえるでしょう。

新しい年号の発表では,政府の情報管理も徹底されていました。
元号が新しくなった場合,みなさまの中でもいろいろな対応をしなければならなかったり,社会ではビジネスにつなげようとしたりする動きがあると思われますし,その動きはすでにかなり進んでいるようです。

改元は時代の節目ではあるため,気持ちよく新たな時代を迎えられればと思っています。