自転車損害賠償保険

弁護士の岡原です。
2019年9月に「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が改正され、2020年4月より施行されるのに伴い,来月から東京都において自転車損害賠償保険の加入が義務化されます。
豊島区では,これに先立って2018年10月1日から加入が義務化されていましたが,東京都としてもこれに続く形となりました。

自転車は,免許がなくても乗れること,車体が比較的安価に購入できることなどから,子どもからお年寄りまで多くの方が日常的に使用する乗り物です。
一方で,かなりの速度が出ること,歩道を走ることも多く歩行者や他の自転車との接触,衝突の恐れが高いことから,大けがにつながる事故も多く起きています。
例えば,平成20年に神戸で発生した,小学5年生の児童が運転する自転車が歩行中の60代女性に衝突し,女性が現在も意識不明となっている事件について,神戸地裁は児童の保護者に9500万円もの損害賠償を命じる判決が出されました。

ところが,自転車は,自動車と異なり自賠責保険のような強制加入保険がない上に,任意で損害賠償保険に加入している方も少ないため,事故が発生した際の被害者への高額な損害賠償金をすべて自己負担しなければならないケースが多く存在していました。
そのような場合に,加害者が損害賠償金を支払えず,被害者がほとんど賠償金を受け取れず泣き寝入りとなってしまうといった事態を増やさないため,今回自転車も損害賠償保険に入ることを義務づけることが条例で規定されました。

現在,自転車保険として販売されている商品の多くは,個人賠償責任保険単体か,個人賠償責任保険が特約として付けられている傷害保険となっています。
また,自動車保険にプラスして加入できる個人賠償責任保険もたくさんあるようです。
自転車に損害賠償保険なんて付いていないと思われる方も,実はお持ちの自家用車の自動車保険にすでに付帯している可能性もありますので,まずはご自身で加入されている保険の内容と,その補償の範囲を確認していただくことをお勧めします。