実況見分調書と人身届

愛知県は,残念ながら交通事故の件数がかなり多い県と言われています。
私自身も,名古屋市で弁護士をしていて,タクシーに乗っているときなどに,他の車がウインカーを出さずに車線変更をしてきたり,一時停止をせずに脇道から入ってきたり,信号が青に変わる前に発車したりするのをよく目にします。そして,交通事故のご相談をお受けするときも,そのような走行により事故にあわれてしまったというお話をよく聞きます。

ところで,交通事故で,事故態様に争いがなければあまり問題とならないのですが,相手方が事故態様について争ってきたとき,例えば減速の有無や一時停止の有無などについて,こちらの認識とは異なる主張をしてきた際に,それを明らかにするために役に立つのが,警察が作成した実況見分調書です。

実況見分調書とは、当事者立会いのもと、警察が事故状況をまとめた書類です。
実況見分調書には、実況見分の日時や場所,立会人の説明,現場付近の状況(道路幅,路面状況,信号機の有無など)といった事項等が記載され、事故現場見取り図が添付されます。
また、警察が撮影した事故現場や,事故車両の写真が添付されることもあります。
最初に相手を発見した地点や,ブレーキを掛けた地点などが明らかになる場合も多いですので,事故態様や過失割合を明らかにするのに役立つことが多いです。

ところが,この実況見分調書は,事故があれば必ず作成されるわけではなく,交通事故により当事者が怪我をし,警察に人身届を提出した場合のみ,実況見分調書が作成されます。
当事者が怪我をしていても,人身届を出しておらず,物損事故扱いのままになっている場合、実況見分調書は作成されず,物件事故報告書というA41枚の簡単な書類のみが作成されます。

では,人身届はどのように出せばよいかですが,事故発生からなるべく早くに,病院で診断書を作成してもらい,管轄の警察署に届け出をします。

事故から時間が経ってしまうと,警察が届けを受け付けてくれないこともありますので,なるべく事故から一週間か10日くらいで手続きを行ってください。

実況見分調書は,捜査中は非公開のため取り寄せることはできませんが,処分が決定すれば,被害者本人もしくは弁護士であれば取り寄せることができます。
保険会社の担当者自身では取り寄せることができませんので,事故態様について明らかにしたいという場合は,被害者の方ご自身で手続を行うか,交通事故に精通した弁護士に依頼し,取り付けとあわせて示談交渉を行ってもらうことをおすすめします。

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