高次脳機能障害

名古屋で交通事故を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

以前,高次脳機能障害と将来介護費についてこのブログでも取り上げましたが,今回は高次脳機能障害が残りそうな場合の注意点について書きたいと思います。

1 高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは,脳に損傷を負った結果,記憶力の低下,集中力の低下,社会的に問題のある行動を起こすようになるなど,様々な神経心理学的障害が生じ

ることを指します。運動機能や生命維持機能ではなく,感情的をコントロールしたり,記憶力,集中力,文章を書く能力など,理性的に行動する能力に障害が生じる点が特徴的です。

2 後遺障害等級

事故に遭い,高次脳機能障害が残った場合,自賠責保険にて後遺障害が認定される可能性があります。日常生活上介護を要するほど重い場合ですと1~2級,日常生活上の介護までは不要であっても労働能力を完全に喪失した場合は3級,完全に喪失したわけでなくとも労働能力に制限を受けた場合は,制限の程度に応じて5級,7級,9級の等級が付くことがあります。

当然,認定される等級によって,賠償額は大幅に異なります。

高次脳機能障害が残った場合,被害者には将来にわたって労働に支障が生じるため,適切な等級を獲得できることは一生にかかわる重要な問題です。

3 注意する点

高次脳機能障害は,発見されない場合も少なくありません。

はたから見る限り,被害者が一見すると特に問題ないように見える場合も多いのです。

事故被害者が頭部を負傷し,頭がい骨骨折,局所脳損傷(急性硬膜外血腫,急性硬膜下血腫,脳挫傷等),びまん性脳損傷等の診断を受けた場合,一見回復したように見えても,実は,高次脳機能障害が残っている場合がありますので,家族などの身近な人の見守りが非常に重要です。

記憶力が悪くなったとか,一つのことに集中できないとか,性格が変わった(怒りっぽくなった,こだわりが強くなった)等が認められた場合,高次脳機能障害の可能性を考えたほうが良いかもしれません。

この場合,脳神経外科等を受診し,適切な治療とリハビリを受け,もし症状が残ってしまった場合は後遺障害の申請をした方がよいでしょう。

4 後遺症の申請をする場合

高次脳機能障害が残ったことにより後遺障害の申請をする場合,さまざまな書類や資料を揃える必要があります。

医師が症状固定時に作成する後遺障害診断書,治療中に医師が定期的に作成していた診断書,診療報酬明細書,診療録,レントゲンやMRIなどの画像資料,各種所見,事故車両に関する資料等などが考えられます。

これらを被害者の方が自分で揃えるとなると,何を揃えればよいのかわかりませんし,揃えることが出来たとしても非常に手間がかかります。

また,後遺障害の申請を相手方保険会社に任せることもできますが,保険会社の立場はあくまで「相手方」ですので,「被害者のために何としても適切な後遺障害を取得してあげよう」という姿勢を期待することは困難です。

高次脳機能障害で後遺障害の申請をする場合,経験のある弁護士に依頼したほうが良いと思います。