PTSD

弁護士として交通事故の相談に乗っていると交通事故に遭った後,事故の時のことを夢に頻繁に見て眠れないや事故現場を通ろうとすると手が震えるといった話を伺うことがあります。

このような症状がある場合,PTSDを発症している可能性があります。

 

交通事故に遭った後などに発症するPTSD(心的外傷後ストレス障害)は,非器質性精神障害に分類されます。非器質性精神障害とは,脳組織に傷や損傷が確認できないものの,精神障害が発生していることをいいます。

 

①心的に外傷を負うような生命の危機を感じるストレス体験をしたことで,②ストレス体験が再体験され続けており(フラッシュバックなど),③過度の警戒心や入眠困難などの覚醒亢進症状がみられることに加え,④ストレス体験と類似の場面などを回避しようとする努力などがみられる場合は,PTSDを発症している可能性があります。

PTSDの発症が疑われる場合には,どのような時期に精神障害が発生し,それがどのような経過をたどったのか記録に残すという意味でも早期に専門医を受診することが重要になります。

 

PTSDを発症している場合,まずは,専門医のもとで治療を受けることになります。

PTSDの症状は,治療およびストレス体験からの時間の経過により改善が見込めます。

しかしながら,交通事故などのストレス体験後,相当期間を経過してもPTSDの症状が回復しないケースがあります。

そのような場合は,残存した症状について後遺障害等級認定の申請を行うことを検討することになります。

労災保険と交通事故

通勤中や勤務中に交通事故に遭ってしまうことがあります。

 

通常,交通事故に遭った場合に登場する保険の種類には,①事故の相手方強制加入の保険(自賠責保険),②事故の相手方任意加入の保険(任意保険),③事故に遭った本人加入の人身傷害保険,④健康保険(第三者行為による傷病届提出が必要)などがあります。

通勤中や勤務中の交通事故の場合は,上記のうち④健康保険は登場しませんが,その代わりに⑤労災保険(第三者行為災害届提出が必要)が登場します。

 

交通事故の相手方が任意保険に入っている場合,労災保険を利用して治療を受けるのが良いのだろうかと疑問に思われる方もいると思います。。

以下では,被害者側にも過失がある場合の労災保険利用のメリットを見ていきたいと思います。

 

まず,交通事故でけがをした場合に生じる主な損害の項目は,治療費,通院交通費,休業損害,傷害慰謝料になります。

仮に以下のような損害が発生したとします。

1 治療費   60万0000円

2 通院交通費    6000円

3 休業損害  50万0000円

4 慰謝料  120万0000円

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5 合計額  230万6000円

被害者側にも過失があると,生じた損害の合計額のうち,被害者側の過失部分は相手へ請求できません。

たとえば,被害者側に3割の過失がある場合は,以下のとおり,相手へ請求できる損害合計額は161万4200円となります。

1 治療費   60万0000円(42万0000円)

2 通院交通費    6000円(   4200円)

3 休業損害  50万0000円(35万0000円)

4 慰謝料  120万0000円(84万0000円)

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5 合計額  230万6000円(161万4200円)

他方で,労災保険を利用している場合は,労災保険からは,まず,治療費60万円と休業損害36万円(概算)の支払いがなされることになります。

労災保険には,過失がある場合の調整は,損害合計額ではなく各損害項目内でなされるという特徴があります。

そのため,労災保険を利用している場合は,以下のとおり,被害者が受け取れる損害合計額は180万4200円となります。

1 治療費   60万0000円(60万0000円・労災保険費拘束)

2 通院交通費    6000円(   4200円)

3 休業損害  50万0000円(36万0000円・労災保険費目拘束)

4 慰謝料  120万0000円(84万0000円)

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5 合計額  230万6000円(180万4200円)

 

以上のように被害者側にも過失があるような場合は,労災保険には費目拘束というメリットがあります。

弁護士として各保険の仕組みをしっかりと把握しておきたいと思います。

内部研修

先日,事務所において,「牧草大輔(まきくさ だいすけ)」さんという方からの研修がありました。

牧草さんは,現在,保険代理店の執行役員と経営コンサルタント会社の代表取締役をされている方です。

 

今回の研修のテーマは,「コミュニケーション」についてでした。

コミュニケーション能力が重要との話は良く聞くと思います。

弁護士も直接人と関わって行く仕事であるためコミュニケーション能力が重要となります。

ただ,実際にコミュニケーション能力を向上させようと思ったときにその具体的方法がわからないことが多いです。

今回の牧草さんの弁護士に向けた研修には,牧草さんの実際の経験などもまじえつつ,コミュニケーションとは何かというとこらから始まり,コミュニケーション能力を向上させる具体的方法についても盛り込まれていました。

普段自分ではあまり学ばない分野であるためとても興味深かったです。

 

弁護士は,十分な法的知識があることを求められるのはもちろんですが,依頼者の方と十分なコミュニケーションを図り,しっかりとした信頼関係を築ける能力があることも求められていると思います。

他の業種の方の話を聞くと自分にはなかった視点を学ぶことができますので,今後の自身の職務に生かしていければと思います。

警察車両との交通事故

警察車両が車両を追跡などしているときに第三者の車両に衝突し,事故を起こしてしまうことがあります。

このような場合,第三者の車両に乗車していた人は,どのような法的根拠に基づき警察から損害の賠償を受けられるのでしょうか。

 

通常の交通事故の場合は,事故の相手方に対し不法行為に基づく損害賠償請求を行いますが(民法709条など),警察車両との事故の場合は,事故を起こした警察を所轄している都道府県を相手に国家賠償請求を行う必要があります(国家賠償法1条1項)。

国家賠償請求が認められるためには,①公務員が,②その職務を行うことについて,③故意または過失によって,④違法に他人に損害を加えたことを立証する必要があります。

特に④「違法に」との要件を満たすかが問題となることが多いです。

裁判例は,「違法に」との要件を満たすためには,追跡行為などが当該職務目的を遂行する上で不必要であるか,又は,逃走車両の逃走の態様及び走路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし,追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当である場合には「違法に」と言えるとしています。

そのため,「違法に」との要件を満たしていないとして国家賠償請求は認められない場合も多いです。

 

 

ただ,警察車両も自賠責保険には加入していますので自賠責保険へ被害者請求を行い治療費や慰謝料などを受け取ることが可能です。

そのため,まずは,自賠責保険から治療費や慰謝料を受け取っていただくのが良いと思われます。

 

交通事故の相手方,警察車両などの公用車の場合は,根拠法や過失割合の考え方も異なるところがあります。

弁護士としてしっかりと対処していきたいと思います。

健康保険利用とリハビリ

交通事故に遭ってしまい怪我をした場合は,病院で治療を受けることになります。

被追突事故など被害者側に全く過失がなく,事故の相手方が任意保険に入っていれば,悩むこともなく,自由診療で治療を受けることが多いと思います。

問題は,被害者側にも一定の過失があるような場合に悩まずに自由診療で治療を受けて良いのかということです。

弁護士として,被害者の方から健康保険の利用について質問を受けることも多いです。

 

 

被害者側にも過失がある場合,治療費などの損害合計額のうち過失割合部分は被害者側の負担になります。

例えば,被害者側に3割の過失がある場合に,治療費が自由診療で300万円もかかったとなると300万円のうち90万円は被害者で負担しなければいけません。

保険会社が,直接病院へ治療費を支払っているような場合は,最終的な賠償の段階で,慰謝料から上記90万円を精算することになります。

そのため,過失がある場合は,健康保険を利用し,治療費の総額を抑えることで,最終的な賠償段階で慰謝料などからの差し引かれる金額を減らす方法を検討する必要があります。

なお,被害者が人身傷害保険に加入しているような場合は,また別です。

 

ただ,反対に過失がある場合に健康保険を利用した方が全てのケースで良いのかというとそうではないと思っています。

健康保険では,上下肢のような運動器に対するリハビリを行う場合は,算定日数の上限が原則150日と定められています(なお,健康保険でもリハビリ継続の必要性があれば上限を超えてリハビリを受けることは可能とされています。)。

そのため,健康保険を利用した通院の場合,通院を開始してから5カ月程度経過したときに,リハビリをこれ以上受けることができないと病院から言われてしまい,回復には,まだリハビリが必要であるにもかかわらず十分なリハビリを受けられなくなるおそれがあります。

したがって,過失割合があったとしても割合が少なく,リハビリをしっかりと行いたいような場合は,健康保険を利用しないことも考えられます(過失がない場合は,健康保険を利用しない方が良いことになります。)。

内部研修

先日,事務所内で民法改正についての勉強会がありました。

昨年度も民法改正に関する事務所内での研修はありましたが,今年度は,テーマを絞った内容となっており,今回のテーマは,改正民法の施行時期と保証についてでした。

今後も,テーマ別に複数回の勉強会が予定されています。

 

改正民法では,保証に関して,公証人による保証意思確認手続きの創設や個人根保証契約に限度額に関する規律が設けられたりなど様々な新たな規律が設けられることになります。

 

私は,普段交通事故の案件を多く取り扱っているため,保証関係の案件を取り扱うことは少ないのですが,弁護士としては,当然知っていなければいけない重要な改正と言えます。

普段は,なかなか自分の業務と直接関連しない部分の勉強をする時間がとれないため,事務所に民法改正について勉強する時間を設けてもらえ助かっています。

事務所に設けてもらえた機会を有効に活用し,改正民法が施行される平成32年4月1日までには,改正民法と従来の民法とでどのような取り扱いの違いが生じるのかしっかりと理解しておきたいと思います。

また,日々法律は変わるため,法律の専門家として,重要な法律については,どのような改正が行われているのか把握していきたいと思います。

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GW

もうすぐGWですね。

 

GWの前半はいい天気が続くとのことで,絶好のドライブ日和になりそうですね。

車で出かけられる方は交通事故に気を付けつつドライブをお楽しみください。

 

道路が渋滞している場合など,ブレーキから足を離してしまい,クリープ現象で前の車に衝突してしまうことがあります。

クリープ現象とは,オートマチック車でエンジンがアイドリング状態にあるときに,アクセルを踏まなくてもブレーキから足を離すと車がゆっくりと動き出す現象です。

クリープ現象により前の車に衝突した場合,衝突した車はスピードが出ていませんので,通常車両の損傷は軽微なものとなります。

そのため,傷のみで凹みが生じない場合も多いです。

 

クリープ現象により事故が発生した場合に問題となるのが,追突された車に乗車していた被害者が怪我を負うのかということです。

低速度で追突された場合は,追突の衝撃で首が鞭のようにしなるとは考えられないとして,交通事故と頸椎捻挫等の傷害の間の相当因果関係が否定されるケースがあります。

 

しかしながら,低速で追突された場合でも事故後に頚部痛を訴える被害者の方は多くおられます。

いわゆるむち打ち症は,痛みの原因が検査結果などに現れませんので,車両の損傷の程度が低い場合にどのようにそのような被害者の方を手助けできるかいつも考えさせられます。

 

少しでも弁護士として交通事故被害者の方の手助けになれるよう日々精進したいと思います。

後遺障害逸失利益2

後遺障害逸失利益は,基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数という計算式が用いられています。

 

基礎収入は,原則として事故前の現実収入が基礎となります。

事業所得者の基礎収入は,事故前年度の確定申告書記載の所得金額を参考にします。

ただ,事業所得者の場合は,申告額と実収入額が異なることがあります。

そのような場合は,実収入額を立証し,実収入額を基礎収入であるととして後遺障害逸失利益を算定することもあります。

 

裁判などでは,確定申告書記載の所得金額が重視されますので,確定申告記載の所得金額が実収入と異なる場合やそもそも確定申告をしていないような場合は,しっかりとした実収入を基礎付ける資料がないと実収入額の立証は難しいことが多いです。

神戸地裁平成29年9月8日判決は,確定申告をしていなかった原告の基礎収入に関し,「売上高や営業利益が判然としない」「事故前,原告の事業は,経費が上回るいわゆる赤字の状態が続いていたことが窺がわれる。」「原告は,月額60万円程度の売上高があり,25%程度の原価等を差し引いて月額平均40万円程度の利益があった旨供述するが,・・・・納品書,領収書,通帳以外に上記供述を裏付ける的確な証拠はなく,上記供述は採用できない。」として,事故前の収入を認定することはできないとし,後遺障害逸失利益の発生を否定しました。

ただ,当該判決は,事業の維持・存続に必要やむを得ない固定経費の支出は休業損害に該当すべきであるとして,事業所の家賃÷30日×休業日数の休業損害を認定しています。

 

事業所得者の基礎収入や休業損害をどのように捉えるかは事業の内容によっても変わってきます。

確定申告書記載の所得金額が実収入と異なる場合は,実収入の立証が難しいことが多いですが,交通事故被害者の方には,実際に実収入を基礎とした損害が生じていますので,事業所得者の方にも適切な賠償金を受け取っていただけるよう努めたいと思います。

交通事故による逸失利益については,弁護士法人心のこちらのサイトもご覧ください。

内部研修

最近,時間が経つのが早いです。

2月も気づけば終わり,もうすぐ春ですね。

 

先日,定期的に事務所内で行われている交通事故に関する研修がありました。

 

各研修では,担当者が決められたテーマに関して,発表するのですが,今回は,人身傷害保険の仕組みなどについての発表がありました。

 

人身傷害保険を上手く利用すれば,交通事故の発生に関し,被害者側に一定の過失があった場合でも人的損害に関し,過失がない場合と同様の賠償金を受け取れることがあります。

ただ,人身傷害保険を利用するタイミングや裁判で解決するか示談で解決するかなどで最終的な受取額が変わってきます。

また,各保険会社で人身傷害保険の約款が異なる部分もありますので,しっかりと各保険の仕組みを理解した上で,弁護士として,交通事故被害者の方のご要望にあった提案ができればと思っています。

 

研修内では,学術的な部分だけではなく,各保険会社の約款の相違,具体的な事例,各弁護士がどのような対応をしているのかといったことを知ることができ,とても勉強になりました。

 

ついつい新たな情報の入手などが疎かになってしまいがちですので,研修の機会を生かし,日々情報の更新に努めたいと思います。

後遺障害逸失利益

交通事故により負った怪我が治りきらず症状が残ってしまう場合,自賠責で後遺障害等級認定を受けられることがあります。

自賠責で後遺障害等級が認定されると,交通事故の相手方に対する後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益の請求が認められやすくなります。

後遺障害逸失利益とは,後遺障害がなければ将来にわたって得られたであろう利益をいいます。

 

 

一般的に後遺障害逸失利益を計算する場合には,基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数

という計算式が用いられています。

 

基礎収入は,原則として事故前の現実収入が基礎となります。

ただ,後遺障害逸失利益は,将来にわったて得られたであろう利益を問題とするため,将来,現実収入額以上の収入を得られる立証があれば,その金額を基礎収入とすることもできます。

労働能力喪失率については,認定された後遺障害等級によりある程度基礎となる率が決まっています。

例えば,後遺障害等級12級が認定された場合には,労働能力喪失率は14%が一応の目安となります。

 

 

なお,自賠責保険で後遺障害等級が認定されたとしても,必ず後遺障害逸失利益が認定されるわけではありません。

実際には症状が残ったことに起因する減収がない場合や,具体的事情から労働能力が失われていない場合は,後遺障害逸失利益が否定される場合もあります。

千葉地裁平成28年5月17日判決は,自賠責で右足関節機能障害に関し後遺障害等級12級が認定されていた男性について,出張先等にもロードバイクを持参しトレーニングを積んでいたことをもって,継続的に運動をこなしている状況をみると関節痛のために十分に仕事ができないとか,将来にわたり仕事が長続きしないとかの事実は認められないとして行為障害逸失利益を否定しています。

 

弁護士として,後遺障害逸失利益が生じているか案件ごとに丁寧な検討を心がけたいです。

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個人事業主の休業損害と逸失利益

先日,事務所内で交通事故に関する研修がありました。

今回の研修では,発表担当弁護士が,個人事業主の休業損害と逸失利益をどのように把握するかについて発表をしました。

(弁護士法人心では定期的に各分野を取り扱う弁護士ごとに集まり研修を行っています)

 

個人事業主の休業損害や逸失利益は,原則として,確定申告書に基づき算定されます。

確定申告書には,個人事業主の方の所得が全て反映されているはずであるからです。

 

しかしながら,様々な理由から申告していない所得がある場合があります。

このような場合,確定申告書に基づき休業損害や逸失利益を算定したのでは,個人事業主の方に実際に生じた損害を把握できていないことになります。

そのため,個人事業主の方としては,当然,確定申告書に基づいてではなく,実際の所得に基づき休業損害や逸失利益を賠償してもらいたいと考えられる方もおられます。

 

確定申告書記載の所得以上の所得があったと認定されるためには,所得があったことを裏付ける資料が必要となります。

また,単に裏付ける資料があるだけでは足りず,その資料が信用性がある認められるものであることが必要となります。

 

裁判例の中には,確定申告書記載の所得以上の所得を認定したものもありますが,所得があれば申告することが原則のため,確定申告書記載以上の所得があったと簡単には認定されません。

 

今回の研修では,確定申告外の所得を認めた裁判例の発表があり,どのような資料がある場合に確定申告外の所得が認定されるのかの参考にでき,良かったです。

交通事故による休業損害については,こちらもご覧ください。

繊維筋痛症と交通事故

繊維筋痛症診療ガイドライン2013において,繊維筋痛症は,「原因不明の全身疼痛を主症状とし,不眠,うつ病などの精神神経症状,過敏性腸症候群,逆流性食道炎,過活動性膀胱などの自律神経系の症状を随伴」すると説明されています。

 

繊維筋痛症の発症原因は今だ医学的に明らかではありません。

また,繊維筋痛症の診断基準としては米国リウマチ学会が提唱する,繊維筋痛症分類基準(1990)や予備診断基準(2010)といったものがありますが,繊維筋痛症の症状の主体は,自覚症状であり,繊維筋痛症を他の疾患と鑑別し,適切に診断することは難しいことが多いです。

 

そのため,交通事故後に全身疼痛の症状が現れ,繊維筋痛症との診断がなされた場合は,①そもそも繊維筋痛症を発症しているか,②繊維筋痛症を発症しているとして交通事故に遭ったことで発症したのかという点が大きな問題となります。

したがって,交通事故に遭ったことと繊維筋痛症を発症したこととの間に相当因果関係があることを立証することは容易ではありません。

 

交通事故と繊維筋痛症発症との因果関係が争点となった判例のうち,相当因果関係を否定したものとしては名古屋地裁平成26年4月22日判決などがあり,相当因果関係を肯定したものとしては京都地裁平成22年12月2日判決などがあります。

 

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TFCC損傷

交通事故に遭った際,転倒するなどして手首に強い外力が加わるとTFCC(三角繊維軟骨複合体)を損傷することがあります。

手首に強い外力が加わった後,手首の腫れ,握力の低下,持続する手首の運動時痛,手首を外側にひねった時に痛みが生じるといった症状がある場合は,TFCCが損傷している可能性がありますので,注意が必要です。

 

 

TFCCは,それ自体は軟骨で構成されているため,レントゲンには写りません。

そのため,レントゲンしか撮っていない場合,TFCCに損傷が生じていることに気づかないことが多いです。

 

 

手首等の関節部分に生じた痛みは,器質的損傷がないと自賠責で後遺障害が認められ難い傾向があります。

そのため,交通事故により負った傷害により残存してしまった症状について適切な後遺障害の認定を受け,生じた損害に見合った賠償を受けるためには,MRI等の検査を受け手首にTFCC損傷といった器質的損傷が生じているかを確認しておくことが重要となります。

 

なお,TFCC損傷は,交通事故以外の要因でも生じることがあるため,MRI検査の結果TFCCの損傷が発見されたとしても,事故態様等により交通事故とTFCCの損傷との間の相当因果関係が否定される可能性があることには注意が必要です。

 

弁護士として,交通事故被害者の方が適切な損害の賠償を受けられるよう活動していきたいです。

健康診断

 

先日,健康診断を受けに大名古屋ビルセントラルクリニックに行ってきました。

 

私は,昨年も大名古屋ビルセントラルクリニックで健康診断を受けています。

最近,運動不足が続いていますので,昨年の検査結果よりも数値が悪化していたらどうしようかと心配しています。

 

 

悪い結果が出たらと,健康診断を受けたくないとも思ったりするのですが,「労働者」には健康な状態で働くため健康診断を受ける義務がありますので,受けざるを得ません(なお,「会社」には「労働者」を健康な状態で働かせるために健康診断を受けさせる義務があります。)。

 

ただ,1年に1度の健康診断は,自身の健康を意識するという面では良い機会となっています。

自身の体調が悪くては依頼者のためにベストを尽くせませんので,良い機会を与えてもらっているのではとも思います。

 

また,事務所が健康診断の費用を負担してくれるのは,大変有り難いなと思っています。

内部研修

先日の事務所内研修では,刑法改正を扱いました。

法律の内容が大きく変わった部分もあるため注意していきたいと思います。

また,他の弁護士が行った証人尋問等についての報告もありました。

他の弁護士がどのような問題意識を持って活動しているのかを知れ勉強になりました。

 

 

 

 

橈骨遠位端骨折

橈骨遠位端骨折は交通事故に遭い転倒したときなどに手をつき負うことが多い怪我です。

橈骨(手首の骨)の遠位端骨折を負った場合に,骨折自体以外に手関節の稼働域と握力の回復にどの程度時間かかるのかが問題となる場合があります。

手関節の稼働域の回復には受傷後(術後)3から6カ月間程度要することが多く,握力の回復には1年程度かかることも少なくないようです(橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2012参照)。

 

弁護士として交通事故案件を扱っていると治療期間等が問題となることがあります。適切な治療期間の確保に努めたいです。

事業所得者の休業損害

事業所得者の休業損害は,「現実に収入減があった場合に認められる。」とされています(赤い本)。

 

事業所得者の場合は,収入減がいくらあるのか把握するのが難しいことが多いですが,基礎収入額は事故前年の確定申告所得額によって認定されることが多いです。

ただ,固定費を基礎収入に含めるかといった問題があります。

 

また,事故前年の確定申告所得額から減少した額の全てが,休業損害として認められるのかという問題もあります。

名古屋地裁平成29年1月16日判決では,「売り上げの減少全てが本件事故によるものとは認め難く」「全てが本件事故によるものとは認め難い」として事故前年の確定申告所得額との差額の30パーセントを休業損害と認定しています(自保ジャーナルNo.1996)。

 

事業所得者の休業損害の把握には,様々な問題点があるため,交通事故被害者に被った損害を少しでも回復していただくために更に努めていきたいと思います。

裁判所

先日,名古屋地方裁判所一宮支部に行く機会がありました。

 

名古屋地方裁判所一宮支部は,尾張一宮駅から徒歩約15分のため,タクシーを利用するか,そのまま歩くか迷うことが多いです。

先日は,最近運動不足を感じていたため,行きはタクシーを利用しましたが,帰りは歩いて帰ることにしました。

15分程度であれば,大丈夫だろうと思ったのですが,駅に着くころにはかなり汗をかいてしまいました。

 

歩くのは,もう少し涼しくなってからにしようと思います。

 

ドアミラー同士の接触と怪我

自動車のドアミラー同士が接触した交通事故の場合,その交通事故と怪我との因果関係が問題となることが多いです。

ドアミラーのみの接触の場合,ドアミラーが折れるなどすることで,車両内の運転手には大きな衝撃が加わらないと考えられています。

そのため,ドアミラー同士の接触しかない交通事故の場合,事故と怪我の因果関係が否定されることが多いです。

 

また,和歌山地裁平成28年12月26日判決では,ドアミラー同士のみ接触した交通事故について,衝突を避けるためにハンドルを切った際に首及び腰に過伸展の動きが生じ,頸椎捻挫及び腰椎捻挫当の傷害を負ったという主張について,ハンドル操作が身体に大きな負荷をかけるものであったとは認められないと判断されています。

 

車両の損傷が軽微な場合は,交通事故と怪我の発生の因果関係を立証できるのか慎重に判断する必要があります。

 

内部研修

先日,事務所内で交通事故に関する内部研修がありました。

改めて,交通事故案件の処理の際の注意点などを確認できて良かったです。

これからも,弁護士として被害者の方の力になれるよう更に力を付けていきたいと思います。