脊柱の障害については後遺障害別等級表上,変形障害と機能障害について等級が定められています。
今回は,脊柱の変形障害と後遺障害逸失利益の問題について少し詳しく記載したいと思います。
1 脊柱変形の後遺障害等級の種類と認定基準
脊柱変形の後遺障害は,以下の3段階で認定されています。
脊柱に著しい変形を残すもの 6級
脊柱に中程度の変形を残すもの 8級
脊柱に変形を残すもの 11級
圧迫骨折等による脊柱変形障害が上記3段階のどの段階に該当するかは「労災補償障害認定必携」に掲載されている認定基準に従い判断されています。
2 後遺障害等級認定の対象となる脊柱
解剖学上,脊柱は,頸椎,胸椎,腰椎,仙骨及び尾椎から構成されています。
ただ,後遺障害等級表上の脊柱とは,「頸部及び体幹の支持機能ないし保持機能及び運動機能に着目したものであることから,これらの機能を有していない仙骨及び尾骨については,「せき柱」には含まない」とされています(「労災補償障害認定必携・第16版・234頁参照)。
3 脊柱変形で後遺障害逸失利益が問題となる理由
脊柱変形の後遺障害は運動機能への障害を伴っていないため労働能力喪失率が後遺障害別等級表の目安労働能力喪失率よりも低くなると主張されることがあります。
しかしながら,このような主張は適切ではないと考えています。
後遺障害別等級表上の脊柱は,上記したように頸部及び体幹の支持機能ないし保持技能及び運動機能に着目したもとのされています。
したがって,脊柱変形の後遺障害においては,頸部及び体幹の支持機能ないし保持機能及び運動機能の減少があると考えられます。
そのことにより,疼痛や疲れやすくなったりなどの症状が生じるといえます。
そのため,脊柱変形の後遺障害でも労働能力は失われており,変形障害であることのみを理由に労働能力喪失率を低く判断することは定説でないと考えます。
脊柱変形の後遺障害では,その障害によりどのような労働能力の低下があり,仕事への影響があるのかを丁寧に主張する必要があります。
弁護士として労働能力喪失率が争われた場合はしっかりとした反論を行っていきたいと思います。