送付と送達

民事訴訟において,送達とは,「当事者その他訴訟関係人に対して,訴訟上の書類の内容を了知させるために,法定の方式に従って書類を交付し,または交付を受ける機会を与える裁判所の訴訟行為」です。

つまり,相手方にきちんと書類を届けること,そのために裁判所の行う厳格な手続によること,です。

特別送達という物々しいハンコが押された封筒に入って送られてきます。

例えば裁判が始まるときの「訴状」は,被告に対して送達されます。

 

これに対し,家事事件手続法では,審判,調停については,申立書の写しの送付(場合によっては審判,調停が申し立てられたことの通知)がされることとなっていますが,送達ではないため,厳格な手続によらなくてもよいこととなっています。

なお,家事事件手続法においても,送達の規定は準用されているのですが,実際には送達を行う条文はなく,裁判所の裁量に委ねられています(家事事件手続規則には,一部定めがあります。)。

つまり,裁判所の裁量で,審判申立から審判が出て審判書まで,全て相手方に送達せず手続を進めることも可能ということです。

 

送付の場合には,厳格な手続によらず普通郵便で送ることもできるため,裁判所により本人が受け取ったことの確認が取れなくても,手続が終了することとなります。

 

立法者意思としては,柔軟に裁判所が判断するということなのかもしれませんし,わざわざ家事事件手続法で「手続代理人」というように,民事訴訟との違いを際立たせたかったのかもしれませんが,送達しないで手続が進むというのは,弁護士の視点から見て疑問です。

専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合における縁組意思

最高裁平成28年(受)第1255号 養子縁組無効確認請求事件です。

 

最高裁は,相続税の節税の動機と縁組をする意思とは,併存し得るものであることから,専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに養子縁組意思がないときにあたるとすることはできないと判断しました。

 

疑問点。

養子縁組意思は,真に親子関係を創設しようとする意思と解されており,これがないとして養子縁組が無効とされた裁判例があります。

原審はまだ確認していないので詳細は不明ですが,少なくとも「専ら相続税の節税のためにされた」養子縁組という認定がされたということは,真に親子関係を創設する意思が原審では認められなかったとも読めます。

この点について,従前の考え方との整合性が気になるところです。

遺産分割における預貯金

平成27年(許)第11号遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件の大法廷判決が本日出ました。

その論理については検討する必要がありますが,預貯金契約が通常の金銭債権と異なることが一つの論拠となっております。

「預貯金契約上の地位の準共有」という文言の趣旨も気になりますし,補足意見等では,様々な指摘がされています。

現在受けている事件にも影響を与えそうです。

皇室経済法

ご相談の中で,相続税について質問されることがあります。

弁護士なので申告は行っていませんが,一般的なことについては回答させていただくこともあります(その場合も,必ず税理士にご相談くださいとご説明しています。)

 

相続税のうち,非課税となる財産に,「皇室経済法(昭和二十二年法律第四号)第七条(皇位に伴う由緒ある物)の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物」があります。

そこで,皇室経済法第7条を確認すると,

「第七条
 皇位とともに伝わるべき由緒ある物は、皇位とともに、皇嗣が、これを受ける。」

とあり,皇位とともに伝わるべき由緒ある物は非課税となっています。

ということは,それ以外の財産については,天皇家の財産であっても,相続税がかかるということになります。

実際,昭和天皇が崩御された際に,多額の相続税がかかっているようです。

国籍法

二重国籍問題について,条文を確認してみました。

国籍法
第十四条  外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。
 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法 の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。
 
戸籍法
第百四条の二  国籍法第十四条第二項 の規定による日本の国籍の選択の宣言は、その宣言をしようとする者が、その旨を届け出ることによつて、これをしなければならない。
○2  届書には、その者が有する外国の国籍を記載しなければならない。
 
国籍選択宣言をした場合には,戸籍にその旨が記載されるようです。
 
弁護士であってもなかなか戸籍法を直接参照することは多くありませんが,相続事件を扱っていると,戸籍に触れる機会は非常に多くなりますので,戸籍の細かな制度についてもきちんと確認して行かないといけません。

筆跡鑑定

筆跡鑑定は,必ずしも科学的手法が確立されておらず,裁判所や弁護士の主観的判断と思われてしまう面もあり,信用性が激しく争われるところです。

ただし,筆跡鑑定が全く無意味だとすれば,署名の偽造をはっきりさせるのは容易でない(相続分野でいえば,遺言書の真正を確認する手段として使えない)こととなり,この結論が妥当であるとは思えません。

 

理論筆跡学を立ち上げて,有効な筆跡鑑定の手法を編み出すことができればいいと思っています。

特別受益・寄与分の理論と運用

遺産分割を行うにわたって,認定が非常に難しいのが特別受益および寄与分です。

 

特別受益とは,被相続人の生前に相続人が生計の資本などで受け取った贈与です。

これがある場合,遺産分割の中で,「持ち戻し」という形で考慮されます。

贈与された金員として,結婚した時の結納金や大学の学費等を指摘する場合がありますが,実際には非常に昔に贈与されていることもあり,証拠等がまったく存在しないところに,特別受益を判断する難しさがあります。

 

本書は,特別受益に関する判断についてまとめた本であり,特別受益を考えるにあたって非常に参考になります。

和暦と西暦

日本では,和暦と西暦が両方とも使われています。

相続,離婚では戸籍を読む機会が多くあります。

戸籍では和暦が用いられますが,これを西暦に換算しなければならないときなど,確認が非常に大変なことがあります。

仕事をしているうえで,日本で西暦がいつ頃から使われ始めたのか気になったので,調べてみました。

 

日本において西暦が使われ始めたのは明治5年ころのことのようですが,日常生活に普及し始めたのは第二次世界大戦後のことのようです。

 

私は,日常生活では西暦を好んで利用しますが,仕事上の文書を書く際はほぼ和暦によっています。

 

使い分けは大変ですが,間違いがないように注意しながら,日々弁護士業務をこなしています。

 

清須会議

最近見たDVDです。

 

織田信長が明智光秀に討たれた後,織田家の後継ぎを決める非常に重要な会議が開かれました。

織田信長といえば,名古屋出身で大人から子供まで全員知っている戦国大名です。

その後継ぎとなるべきお方を決める会議であり,柴田勝家と羽柴秀吉を中心として政略渦巻く会議が行われました。

 

これを,三谷幸喜が映画化しました。

三谷幸喜らしく,非常にコミカルに描かれている部分もあれば,非常シリアスに描かれている部分もあります。

ただ,これまでの三谷幸喜の映画に比べると,テンポが悪く,やや間延びしている感じを受けます。

 

とはいえ,非常に面白い作品ですので,ぜひ皆さんご覧ください。

名古屋で生活する相続弁護士として,織田信長の後継ぎ問題に詳しくなりました。

 

 

日本の相続

相続の事件を多く扱う弁護士として,日本の相続がこれまでどのような制度だったのかについて,たまに気になることがあります。

ということで,今回は,歴史の勉強です。歴史に学び,経験に学び,これを仕事に生かしていこうと思います。

 

明治時代の相続については,家督相続制度であり,長男が戸主としての地位を承継するという制度でした。

これに対して,江戸時代の相続制度は,身分によってさまざまにわかれていたようです。

 

武家の社会では,長男の単独相続だったようです。明治以降の相続制度は,武家社会の常識を法制度として取り入れたものといわれています。

 

商人の間では,長男にこだわらず,優秀な方を後継ぎにするため,養子に後を継がせることが,積極的に行われていたようです。

農民の間では,農地の分割について制限が加えられていたため,単独で相続することが多かったようです。

ただ,誰が相続するのかについては,地域によって慣行が異なっており,長男が相続する場合もあれば,最も早く生まれた者(長男か長女)が相続するという場合もあったようです。

 

今回の記事は,一般的に言われていることをまとめただけなので,これから,江戸時代の研究書を紐解いて,調べてみたいと思います。

 

外食「軽く一杯」に狙い

平成26年3月8日付日本経済新聞の記事です。

一人で軽く一杯飲みたいお客様が増えており,1杯飲んで1000円程度で済む店がはやっているようです。

私は,軽く飲むなら家でお風呂に入った後,自分でつまみを作って飲むのが好きです。

弁護士業をしていると,どうしても夜遅くなってしまうので,眠くなったらすぐ寝たいというのが,家で飲む一番の理由です。

一人で外で飲んでいると,なんとなく手持無沙汰になってしまい,淋しい感じがします。

家の中なら,TVを見たり,離婚や相続の本を読んだりしながら,落ち着いて飲めます!

 

景気が回復してきたとはいえ,一人で飲むなら節約志向というところまでは,なかなか景気回復しないようです。

 

富の偏在 タイ混迷の温床

平成26年1月30日付日本経済新聞の記事です。

タイの政治対立の背後には,置き去りにされた経済格差の現実があるとのことで,タイの政治情勢と経済情勢をリンクさせて説明しています。

 

この記事で興味深いのは,タイには相続税,贈与税がかからず,土地保有にも課税がないとのことです。

日本で高額な相続税,贈与税に悩まされている方には,夢のような話ですが,タイでは大変なことになっているようです。

 

日本の相続税は非常に高いと思いますが,逆に相続税がないことも,問題が生じるようです。

弁護士としては,お客様の立場を代弁していますので,相続税はとにかく高いといつも思っています。

ですから,このような記事は,非常に新鮮に映ります。

長生きなのに少ない年金

平成26年1月22日日本経済新聞の記事です。

女性は,男性に比べて平均の年金額が少ないという話です。

日本の年金制度は,現在のところ,夫婦世帯を基準に考えられてきました。

そのため,女性単身だと,年金額は非常に少なくなってしまうということです。

 

この記事では,貯蓄や投資など,老後の資金作りについても進めています。

離婚率の増加に伴い,単身女性も増えてきています。そのため,私たち弁護士にとっても気になるニュースです。

また,相続を考えることも大切ですが,それ以前に,自分の生活をしっかりと組み立てることも大切です。

私がお手伝いできる分野は限られているかもしれませんが,これからもできる限りお客様のために様々な情報を提供したいと思います。

投信 長期運用志向に

平成26年1月21日付日本経済新聞の記事です。

投資信託市場が,これまでと変わってきているようです。

以前は,毎月分配型と呼ばれる投資信託が非常に流行していましたが,最近は,分配金をあまり出さない投資信託が主流となってきているとのことです。

 

一時期,とにかく分配金を出す投資信託が流行し,各社が大量に売りだしていた時期がありました。

それは,投資しても値上がりは望めない,海外の金利は高いので外債への投資が望ましい,利息で運用益を上げるのであれば,ある程度運用益が予想できるため,毎月分配が可能,というような状況で,

投資家も運用しながら,毎月定期的に収入があると運用の実感がある

というような事情の下,非常にもてはやされました。

特に,高齢者の方が,貯蓄を切り崩すより,毎月分配金をもらうほうが目減りが少なく,年金の足しにもなるという形で購入してきたように思います。

 

最近は株高で,すぐに受け取るよりも値上がりを待ったほうが良いと,投資家が考えるようになったのでしょうか。

税制が変わって分配金に20%の税金がかかることとなったのも,影響しているようです。

 

投資信託を保有している方が亡くなると,当然投資信託も相続の対象となります。

最近はネット証券を通じて購入することも多く,被相続人が取引をしていたことを家族の方が知らないことも多いため,相続に当たっては十分に調査をする必要があります。

賃貸住宅で相続税節税

平成26年1月20日付日本経済新聞の記事です。

内容は,賃貸住宅で相続税を節税するというニーズを見込んで,住宅関連企業が工夫を凝らしているという記事です。

どちらかといえば,相続税節税の解説ではなくて,住宅関連企業がどのような住宅を建築するのかという点に重点が置かれています。

 

土地の所有者が,賃貸住宅を自己の所有する土地の上に建築すると,土地の評価が下がります。これは,建物が建ち,借主がいると,土地を自由に処分することが困難となるためです。

この減額の割合は,

土地の評価額ー土地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合)とされています。

借地権割合は地域により異なりますが,70%前後のところが多くあります。借家権割合は現在30%とされています。

例えば土地の評価額が1億円の場合には,典型的なケースでは,

1億円ー1億円×(1-70%×30%)=7900万円となり,土地の評価額で2100万円の減額となります。

以上のようなことから,単純に土地の価格についてみただけでも,節税効果が生じることとなります。

 

ただし,賃貸住宅を建築して借家人が中に入ってしまうと,その後に土地を自由に利用することは難しくなることから,今後自分で利用したいと思っている土地については,検討が必要です。

このリスクについては,弁護士に聞くことが一番確実です。

金融機関,高齢客サポート

平成26年1月13日付日本経済新聞の記事です。

一人暮らしの高齢者や認知症の顧客に対して,金融機関が様々な対策を講じているという内容です。

特に,認知症が進んでしまうと,成年後見制度を利用していただくほかはないということが書かれています。

 

相続案件を行うと,高齢のお客様とお話をする機会が多くあります。

また,なくなった方の遺族に,高齢の方がいらっしゃるということも多くあります。

相続弁護士は,記事の中でいえば,どのように資産を管理し,残していくほうがよいのかということを考えています。

何かお困りのことがあれば,遠慮なくご相談ください。

高齢社会「墓友」集まる

平成26年1月4日付日本経済新聞の記事です。

内容は,現在の終活ブームに関して,お墓,葬式の観点から話をしています。

印象深い一節は,スタッフの方の,「『家族なのに冷たい』と映るかもしれない。だけど,婚姻や血縁関係だけで高齢期の生活の重荷を背負うのはそもそも無理」という言葉です。
私たちは,これまで血縁関係に従って,親の老後を子供が見るということを自明視してきました。これは,今でもその通りだとは思います。
しかし,少子高齢社会にあっては,子どもの数が非常に少なくなっています。そのため,子どもだけでは支えきれない部分について,もっと目を向けなければいけないと思います。

相続弁護士としては,つい,相続が,ということが気になってしまうのが悪い癖です。
問題は相続にのみ矮小化されるものではないのでしょう。
もっと広い視点で問題をとらえて,このような部分まで含めたケアをしていくことが必要なのだろうと思います。

年末のご挨拶

今年もあと残すところ数時間となりました。

私にとって,今年は生活が非常に大きく変わった1年でした。

相続弁護士にとって,今年最大のニュースは,婚外子相続差別違憲決定(最高裁平成25年9月4日大法廷決定)でしょう。

これまで,非嫡出子(婚姻関係にない男女の間から生まれた子ども)の相続分は,嫡出子(婚姻関係にある男女の間から生まれた子ども)の相続分の2分の1と定められていました(改正前民法900条4号)。

しかし,最高裁は,これを法の下の平等に反するとして違憲無効であると判断しました。

周りの反応を聞くと,若い世代では不平等でおかしいから,違憲であっても当然であるという反応が返ってくることが多いです。

これに対して,上の世代では,家族の財産が,家族でない人にも平等に渡ってしまうことに違和感を感じる方が多いようです。

私が聞いたのは,おもに東京の知り合いですが,もしかしたら名古屋や大阪といった地域によっても,考え方は異なるのかもしれません。

 

それでは皆さま,よいお年を。来年もよろしくお願いいたします。