信託の歴史 信託法と契約法

最近,信託がブームになっています。

相続対策や,高齢者の方の資産の管理等,様々な活用が見込まれており,弁護士や司法書士がたくさん本を出版しています。

そこで,信託の歴史について調べてみました。

 

日本では,信託は,契約法の一種(信託契約)として定められていますが,実は,その発祥は,契約法がきちんと整備される前とのことです。

 

信託は,14世紀ごろ,封建社会であったイギリスで発明されました。

封建社会で,領主から領地を任された領民が,領主からの重い義務を免れるため,領民が(委託者)領地を信頼できる受託者へ名義変更し(受託者),領民だった者がその利用を続ける(受益者)ことで,土地の所有者でなくなった領民だった者は重い義務を逃れていたようです。

封建制が弱体化し,領主の権限が弱まっていた時期であったため,このような簡便な方法で,領民は様々な義務を免れることが出来たようです。

 

しかし,当然想定される内容ですが,名義変更を受けた受託者が,受益者の意に反して領地を自分のものとして利用するという問題が生じたようです。

これについて,イギリスの大法官は,コモンロー上(法律上)は名義人である受託者が権利者であるとしながら,エクイティ(衡平)の観点から,委託者から信頼されてそれを引き受けたにもかかわらず,これを裏切った受託者に問題があると判断したようです。

 

この考え方が現在の信託における,信託により委託者の財産の名義は受託者のものとなるが,受託者は受益者のために財産管理を行うという基礎となったようです。

 

上記経緯より,信託は,信頼に対して誠実に応えるという考え方がもととなっており,契約法が整う前に信託法が整ったようです。

契約をベースとする日本の民法を学んだ私は,うまくイメージできない状態です。

 

現在の制度について検討するのも大切ですが,歴史的経緯を踏まえると,より一層理解が深まります。

 

なお,信託の歴史についての記載は,「入門 信託と信託法」(樋口範雄 弘文堂)の記載を参考にしています。