世間とのズレ

 先日,名古屋でのご依頼者との打合せで,相手方の代理人弁護士が書面で用いた言葉遣いについて,「物言いが上から目線過ぎる」とご指摘を受けました。
 
あまり具体的に書くと問題があるので控えますが,その言葉自体は言葉の意味としても特に失礼な言葉ではありません。
 現在では日常会話で使用されることもないような言葉なので,語感だけで「なんか偉そう」と感じられることがある言葉ではあるかもしれません。
 ただ,私は正直,最初に文書を見た時はその言葉遣いにそれほど違和感を感じませんでした。
 というより,たぶん気に留めてませんでした。
 
自分が弁護士として相手方に文書を送る際には気をつけよう,と思いました。
 
 それはともかく,この例のみならず法曹界と世間の感覚がズレてるんじゃないか,と感じることは,言葉遣いの面に限っても多いです。
 私が昔よく感じていたのは,判決書を読んでいて,「こんな言葉,判決書以外で使っている人は見たことも聞いたこともない」という言葉が結構あることでした。
 
 「畢竟」「毫も認められない」「なかんずく」・・・多分普通は読み方すら分からない。
 
 「畢竟」は,「ひっきょう」と読みます。「畢」も「竟」も終わる,という意味で,あわせて「結局」「つまるところは」という意味です。

 「毫」というのは,「ごう」と読みます。細い毛のことです。
 「毫も認められない」は,「1ミリもない!絶対にない!」みたいな意味です。
  
 「なかんずく」は,「いろいろある中で,特に」「とりわけ」という意味です。
 「就中」と,漢字で書くとイメージが湧くかもしれません。
 
 昔はこういう言葉を判決書の中でよく見たんですが,最近はさすがに見かけません。
 でも結構最近まで見てた気がするので,いったいいつ頃まで使用されていたのか代表的な判例検索ソフトで,ちょっと簡単に調べてみました。
 
 まず「畢竟」から・・・さすがに平成二桁になったら,もう使われてないよねーと検索してみると・・・
 平成30年2月7日の地裁の裁判例で使われてました・・・!
 その他にも,地裁・高裁だと現在でも絶賛使用中でした。
 
 ちょっと最高裁の判例に限定して調べ直してみます。
 最高裁では,平成9年,10年くらいまでは普通に使われていますが,平成20年に1件,検索がヒットするのみで最近は使用されていません。

 次に「毫も」。
 同じく最高裁に限定して調べてみます。
 こちらも平成15年が最新で,それ以降は使用がヒットしません。
 刑事裁判では割と最近でも使用されていました。
 
 最後,「なかんずく」です。
 これは平成23年の判決で使用されています。

 こんな感じで,自分の思っていたより最近まで,判決書では難しい言葉が使われていました。