限定承認について③

 前回までで,名古屋でも最近ご相談の多い,限定承認のメリットとデメリットを簡単に確認しましたが,その中で,デメリットとして挙げさせていただいた,「手続の複雑さ」について,弁護士からするとなじみのある手続でも,あまり知られていないと思われますので,できるだけ簡潔にご説明したいと思います。

限定承認の手続①~申述から相続財産管理人の選任まで~
 まず,限定承認をするか,相続放棄をするかを選択できる期限は,原則として,相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。
 その期限までに,限定承認をする旨を申述します。
 この申述は,相続人の全員で行なわなければならない点は注意が必要です。
 つまり,数人の相続人がいる場合は,そのうちのだれか一人でも,単純承認を選択すると,限定承認はできないことになります。
 その後,家庭裁判所が相続人の中から選任した相続財産管理人によって,相続財産を清算する手続が開始されます。

限定承認の手続②~公告~
 清算手続は,相続債務の債権者と受遺者に対する公告→弁済という流れで進みます。
 公告については,限定承認をした後,原則5日以内という期間の制限がある点に注意が必要です。
 公告の内容は,債権者等に対して,相続人が限定承認した旨と,一定の期間(2ヶ月を下らない期間)内に請求の申出をすべきことです。
 また,期間内に請求の申出をしない債権者等は,弁済から除斥される旨も公告の内容とされています。
 このように,期間を区切って相続債務の債権者に申出をさせることで,相続財産のうち,弁済すべき債務の上限を早期に確定させる仕組みとなっています。

限定承認の手続③~弁済~
 その後の弁済の手続は,たとえば,相続財産のうち,不動産などのプラスの財産を競売するなどして行います。
 ここで,前回でご説明した限定承認のメリットを再度ご確認ください。
 相続財産の中に,思い入れがあって残したいものがあるような場合に,限定承認はメリットがあるというご説明をいたしました。
 競売の段階で,限定承認した相続人が,その競売の対象の財産を引き継ぎたい場合は,鑑定人が評価したその財産の価額を支払って競売手続を止めて,財産の一部または全部を引き継ぐことが認められています。
 この手続によって,限定承認者は,思い入れのある財産を手元に残すことができます。
 ただし,ここまでのご説明でお分かりのとおり,その財産の評価額にあたる金銭は手元になければならないので,そのような余力が限定承認者にある場合しかこの方法はとれません。
 競売の手続が終わった後は,債権者等に対する公告の期間が満了した後に,換価された額が,債権者等の債権額に応じて弁済されます。

まとめ
 以上のとおり,ザっと眺めただけでも,限定承認はかなり複雑な手続となります。
 また,今回は触れませんでしたが,税法上の考慮も必要になる場合があり,「プラスの財産の範囲を限度に相続する手続」という,なんとなく便利な手続に聞こえる言葉だけで限定承認を選択されると,想像と全く違ってご苦労される,ということもありえます。
 限定承認をお考えの場合は,早目に弁護士にご相談されることをお勧めします。
以上