債権法改正 賃貸借④

1 賃貸人の地位の留保
  前回に続いて,債権法変更(「改正」とはやっぱり言いたくない。弁護士なので)のうち,賃貸借契約の規定を確認します。
  前回,変更後の第605条の2のうち,2項以外の,賃貸人の地位の移転に関しての規定を確認しました。
  今回は,2項の,賃貸人の地位の留保について確認します。
  前回確認したように,賃貸借の目的物件の所有権が移転する場合は,賃借人が賃借権について対抗要件を備えていれば,賃貸人の地位が当然に移転するのが原則です。
  ただし,2項により,不動産の譲渡人と譲受人が,賃貸人の地位を譲渡人にそのまま留めておく旨の合意をしたときは,賃貸人の地位は,譲受人には移転しないことになります。
  ここは,最判平成11年3月25日で否定された結論と逆の内容が明文化されています。
  条文で規定されているのはここまでです。
  賃貸人の地位が留保された結果,賃貸目的物の新所有者である譲受人が,賃貸人の地位を留保した譲渡人に対して賃貸目的物を賃貸し,譲渡人が賃借人に対してさらに目的物を賃貸するという,転貸借の関係が成立することになります。
  そこで,転貸借関係を規律する変更後の民法第613条が,この場合にも適用されるのかが問題となります。
  第613条3項本文は次のような規定です。
  「賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には,賃貸人は,賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。」
  一応,賃貸人の地位の留保によって生じた転貸借関係の転借人については,その地位は第605条の2第3項などで保護されているので,この第613条3項の適用は否定される,というのが有力説のようですが,結論としては,「今後の解釈に委ねる」とのことらしいです。
  なぜこういう風に変更されたのかもよく分からないんですが,どうせ民法をここまでいじくるなら,この辺についてもちゃんと定めておいてもらえればいいんですけども,もう施行時期まであと少しなので,まあどちらでもいいです。
2 合意による賃貸人の地位の移転
  今までは,賃貸目的物の所有権の移転により,当然に賃貸人の地位が移転するという,民法605条の2の規定を確認しましたが,民法の変更により,賃借人が賃借権の対抗要件を備えていないような場合にも,賃貸人の地位の移転は,合意によっても行うことができることが明文化されました。
  この部分は,最判昭和46年4月23日で確認された判例法理の明文化です。
  この辺で,賃貸借についての確認は終わります。