債権法改正 賃貸借③

1 判例法理の明文化とやらについて
  今回は,債権法の変更(やっぱり「改正」とは絶対に書きたくない)のうち,賃貸借の規定で,「判例法理の明文化」といわれる規定について引き続き確認していきます。
  前回も書きましたが,今回触れる,賃貸人の地位の移転についての判例は,弁護士にとっては条文で規定されているのと同じくらい有名な判例法理ではありますが,せっかく法律を変更するのであれば,条文で規定してもらっても別に構いません。ただ,今までの判例で確立された部分については条文にしたけど,結局判例でも明らかになっていない部分は今後の解釈に委ねる,という形になっているので,どうせならその部分も条文にしてもらって良かったんですけどね,とは思います。
  愚痴はともかく,賃貸人の地位の移転についての変更後の民法の規定について確認します。
2 賃貸人の地位の移転
  新設の第605条の2の1項では,賃借人が賃貸借についての対抗要件(賃借権の登記など)を備えているときに,賃貸物件について所有権の移転(いわゆるオーナーチェンジ)があったら,賃貸人の地位も,賃貸物件の新所有者に移転する,ということが規定されました。
  大判大正10年5月30日,最判昭和39年8月28日などの判例法理を明文化したものです。
  賃貸人の地位を移転させる,というのは,契約上の地位の移転ですから,もしこの規定がなければ,変更後の民法においては,本来であれば,第539条の2が規定するように,契約上の地位を譲渡する者,譲り受ける者,契約当事者の一方の三者で合意しなければならないところですが,賃貸人の貸す債務というのは,誰が履行してもあまり変わりがないので新所有者に履行させればよいという判断で,賃貸借の場合には,目的物の所有権移転によって当然に賃貸人の地位が移転する(賃借人の承諾が不要)ということになっています。
  そして,同条2項をいったんとばして第3項では,賃貸人の地位の移転を賃借人に対抗するには,目的物件の所有権の移転の登記が必要であるという,最判昭和49年3月19日で確認された判例法理が明文化されています。
  地位の移転に際しては賃借人の承諾は不要といっても,賃借人も,いつからだれに賃料を支払えばよいか分からなくなっては困るので,新賃貸人が賃借人に賃料を請求するような場合は,賃借人が認めるのでなければ,自分に所有権が移転したことを登記で客観的に分かるようにしておかなればならないという規定です。
  そして,同条4項では,費用償還請求権や敷金返還請求権も新賃貸人に引き継がれるという,最判昭和46年2月19日,最判昭和44年7月17日の法理が明文化されています。
  次回は,今回とばした3項と,第605条の3を確認します。