遺言書に条件をつける

負担付遺贈と条件付遺贈
遺言者が,遺言によって財産を譲り受ける受遺者に対して,財産を譲る代わりに一定の法的義務を負担させる内容の遺言を,負担付遺贈の遺言といいます。
受遺者は,遺贈の目的の価値を超えない限度においてのみ,負担した義務を履行しなければならないとされています(民法第1002条1号項)。
また,受遺者が負担を履行しない場合,相続人または遺言執行者は,相当の期間を定めて履行を催告することができ,それでも履行がないときは,家庭裁判所に遺言の取り消しを請求できます(民法第1027条,第1015条)。
ここでいう「負担」とは,法律上の義務をいい,法律上強制できないもの(財産を譲る代わりに甲さんと結婚しろ,といった内容)や,受遺者の意思に左右されない事項(乙さんに財産を譲る代わりに選挙で当選すること,といった内容)は「負担」にはあたらず,「条件」であるとされています。
「負担」が「条件」かは,その条項が「負担」であると解された場合は,負担の履行・不履行が遺贈の効力に直接影響するわけではないが,「条件」と解された場合には,条件の成就が遺贈の効力に影響するという差異があるため,「負担」か「条件」かの判断は当事者にとっては重要ですが,その判断の基準は,遺言者の意思解釈によるとするのが多数説です。
この多数説の中には,遺言者の意思が明確でない場合は,遺言の効力の早期確定のために,「負担」と解するべきであるという見解や,受遺者に義務を課することが妥当かどうかという見地から判断するべきとの見解があります。
「妻の面倒を見ること」は「負担」か「条件」か
妻の面倒を見ることを条件に財産を譲る内容の遺言を作成することはできますが,問題は,「妻の面倒を見ること」が「負担」か「条件」か,です。
この点,上記見解のうち,受遺者に義務を課することが妥当かどうかという見地から判断するべきとの見解からすると,受贈者に義務として妻の面倒を見ることを強制することは妥当でないから,負担でなく条件付きの遺贈であると解される可能性があります。
この条項が「条件」であるとすると,条件が成就しなければ遺贈自体が無効となります。
また,仮に「負担」と解されたとしても,遺贈の価額と釣り合う範囲での「妻の面倒を見る」というのがどの程度の行為なのかは解釈が難しいところです。
つまり,妻の面倒を見ることを条件に財産を譲る内容の遺言は,作ること自体はできるが,その解釈が難しく,仮に受遺者が妻の面倒を見ない場合には,「もめる」可能性のある遺言であるといえます。
このような遺言書を作成する場合は,事前に受遺者との話し合いが必要です。
弁護士などの専門家にご相談して作成するかどうか,作成するとしてどのような文言にするかを決めることを強くお勧めします。