貸金庫その2

 以前,このブログで貸金庫の話題に触れたことがありますが,今回は,亡くなった方が実際に貸金庫を借りていた場合の対応について書きます。
 貸金庫の契約については,銀行等と貸金庫の使用者との間の,貸金庫の空間を使用する賃貸借契約と考えられていますので,貸金庫使用者が亡くなった場合,貸金庫の賃借権を,貸金庫使用者の相続人が共同で相続することになります。
 したがって,貸金庫の解約は,賃貸借契約の解除ということになりますので,銀行等は,原則として,相続人の全員の同意がないかぎり,貸金庫の解約には応じないことになります。
 そうすると,「亡くなった方が貸金庫を使っていたことは聞いているけど,中にどんなものが入っているか分からない。でも相続人の一部に連絡がとれない」というような場合に,いろいろと困ったことが生じます。
 実際,名古屋でご相談をお受けしていると,このようなお悩みで弁護士を尋ねて来られる方が多いです。
 このように,相続人の一部が相続手続に非協力的であったり,行方が知れないような場合,貸金庫の解約の前に,まず貸金庫の中身を確認することが必要です。
 貸金庫を開扉する場合,通常,銀行等の担当の立会いのもと,開扉してもらって中身を確認することになります。
 開扉してもらって中身を確認するところまでであれば,相続人の一部からの要求でも応じてくれる銀行がほとんどです。
 ただし,相続人であることが客観的に明らかでなければならないので,戸籍等の資料を取りそろえたうえで,銀行等に相談することになります。
 そして,ここからが大事なのですが,貸金庫を開扉してもらって中身を確認する際に,その中身がなんであったかを記録する必要があります。
 銀行によって運用は異なると思われますが,相続人の一部が所在不明であるような場合は,内規によって,貸金庫の内容物がいわゆる金目のものでない場合は,相続人の一部からの解約に応じる,という運用になっている銀行等がかなりあります。
 金目のもの,つまり財産的価値の高いものは,それが亡くなった方の遺産となるのであれば,相続人の全員で遺産分割の協議等を行った結果,その遺産を相続人のうちだれが取得するかが確定した場合でなければ銀行等が勝手に処分するわけにはいきませんし,相続人全員で合意できない場合も,合意に参加していない相続人が後に現れて銀行等に責任を追及するリスクがあるため,合意に参加していない相続人に法定相続分の相続財産が確保されていることが客観的に明らかでなければ,銀行は引渡しに応じることはできません。
 そこで,貸金庫を開扉して中身を確認した際に,金目のものがないので,後日,一部の相続人のみで解約をしたいときには,開扉に際して,公証人に立会ってもらい,公正証書でその状況を確認してもらうのがよいでしょう。
 公証人は,自分で見聞きしたりした結果について,「事実実験公正証書」というものを作成します。
 これが,貸金庫解約の際に,貸金庫の中身を客観的に明らかにする資料として役立つ場合がかなりあります。
 このような形で,相続人の一部からでも貸金庫の解約ができる場合がありますので,お悩みの方はご遠慮なくご相談ください。