相続放棄と相続財産の管理について③

 前回までで,相続人に順位があり,その順位は①被相続人の子,②被相続人の直系尊属,③被相続人の兄弟姉妹(代襲相続に関する説明は省きます)という順位になっており,先順位の相続人がいる場合は,次順位以降の人は相続人にはならない,ということをご説明しました。

 話を先に進めると,このように,相続人に順位があり,また,相続放棄の効果として,民法第939条が,「相続の放棄をした者は,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなす。」と定めていることから,ある人が相続放棄した場合に,相続人の順位の繰り上げが起こることがあります。

 例えば,甲さんがなくなり,甲さんの子が乙さん,丙さんで,甲さんのお父さんが丁さんで,乙さん丙さんが相続放棄をしようとしているケースを考えると,乙さんだけが相続放棄しても,まだ子の丙さんがいますので,丙さんも相続放棄しなければ,丁さんは相続人になりません。
 この後,丙さんも相続放棄すると,第1順位である被相続人の子が,全員「初めから相続人とならなかった」ことになり,第2順位の丁さんが相続人になります。

 やっと,民法第940条の規定に戻ります。
 もう一度民法第940条を挙げると,「相続の放棄をした者は,その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで,自己の財産におけるのと同一の注意をもって,その財産の管理を継続しなければならない。」と定めてあります。

 つまり,この条文は,先ほどの例でいうと,乙さん丙さんが相続放棄しても,丁さんが相続人となって,相続財産の管理を始めるまでは,乙さん丙さんは相続財産の管理義務を免れない,ということを規定しているのです。

 また,この条文は,典型的には,このように順位の繰り上げが起こった場合に適用される規定ではありますが,例えば,乙さんが先に相続放棄して,同順位の丙さんが相続放棄してない場合も含むと解釈されていますので,その解釈に従うなら,相続開始後,事実上,財産を一人で管理していた乙かんが相続放棄した場合,丙さんが管理を開始できるようになるまでは,やはり乙さんに管理義務があることになります。
  
 以上のように,民法第940条に従うと,相続放棄しても,次に相続人になる人が相続財産の管理を開始するまでは,財産の管理義務を免れないことになります。

 つまり,弁護士としては,名古屋でも先日の台風で,相続財産として管理していた建物が壊れた,などの影響は出たとしたら,相続放棄をしたからといって,その時点で相続財産の管理義務を免れると考えるのは難しいので,他の相続人が管理できる状態になるまでは,管理を継続した方がよいでしょう,とお答えすることになります。
 
 残る問題は,「じゃあ,相続人が全員相続放棄して,相続人がいなくなったらどうするか?」という点ですが,この点については次回ご説明いたします。