相続放棄と相続財産の管理について①

 相続について名古屋でご相談を受けていて,最近多いのは,「被相続人が,古くて価値のない建物を所有していたのだが,今ではだれも住んでいないし,自分達もそんな不動産は欲しくないので,相続放棄したい」というようなご相談です。
 たしかに,無価値で管理の手間ばかりかかる不動産であれば相続したくないと思われるのは当然です。
 気になるのは,「相続放棄すれば,問題は全て解決するのか?」という点です。
  
 法律がどのようになっているのかを確認してみます。
  
 まず,被相続人が亡くなって,相続が開始した時点では,被相続族人の所有していた財産について,だれにどのような管理の義務が課せられているかについては,民法第918条1項本文に規定があります。
 民法第9181項本文には,「相続人は,その固有財産におけるのと同一の注意をもって,相続財産を管理しなければならない。」とあります。
 ここで,「その固有財産」というのは,相続人が,相続開始前から所有していた自分自身の財産のことをいいます。
 つまり,相続開始後は,法律では,相続人に被相続人の財産の管理義務が課されており,その管理の際の注意義務の程度としては,他人に管理を任されて預かっている財産ほどではなくても,自分自身の財産と同じ程度の注意義務をもって管理する,ということになっています。

 そして,民法第939条により,「相続の放棄をした者は,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなす。」と定められており,また,さきほどの民法第918条1項のただし書きにも,「ただし,相続の承認または放棄をしたときは,この限りでない。」と定められていますから,相続放棄をすれば,とりあえず,被相続人の財産について,民法第918条1項の定める管理義務を免れることになりそうです。
  
 しかし,お話はここで終わりではありません。
 法律は,このように,相続人の誰かが相続放棄をした場合,被相続人の財産が放置されたりすることで,財産の価値が減少し,次順位の相続人に迷惑がかかるようなことがないようにするため,次のような規定を用意しています。
 民法第940条1項がその条文で,「相続の放棄をした者は,その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで,自己の財産と同一の注意をもって,その財産の管理を継続しなければならない。」と定められています。
 この条文の意味を理解するには,まず,「その放棄によって相続人となった者」というのがだれなのか,相続人の順位について説明が必要ですので,次回は相続人の順位についてご説明します。