二次相続

二次相続とは
二次相続とは,父と母と子の家族で,父が最初に亡くなって,父の遺産を母と子が相続(一時相続)した後に,母がなくなって母の遺産を子が相続する,という場合の,二回目の相続のことをいいます。
このような二次相続が発生するケースにおいては,特に相続税の申告・納付の場面で,一次相続のみで納税額が少なくなることのみを考えて相続したことで,二次相続まで含めたトータルの納税額において,結果的に納税額が多額になってしまうような事態が起こり得ます。
そこで,二次相続まで踏まえた相続対策が必要になります。

配偶者の税額軽減の制度を一次相続で利用する場合の注意点
上記のように,父が死亡して一次相続が発生する場合,配偶者である母については,相続税の申告の際に,配偶者の税額軽減の制度を活用することが考えられます。
配偶者の税額軽減の制度を利用すると,配偶者(上記の例における母)については,相続税の課税価格が法定相続分を下回る場合には相続税は課税されず,また,課税価格が法定相続分を上回る場合でも,その額が1億6000万円以下の場合には相続税が課税されないことになります。
ただし,一次相続において配偶者の税額軽減制度を目一杯活用して相続税を少なくしても,二次相続で多額の相続税を納付することになると,結果として節税の効果が発揮されないこととなってしまいます。
このような事態が生じる要因としては,相続税の申告における基礎控除の額が,「3000万円+600万円×法定相続人の人数」という算定によってきまるため,法定相続人の人数が減る二次相続において相続税額が高くなることや,一次相続から二次相続までの間に財産の価値が上昇してしまい,結果として課税価格が高くなってしまうこと等があげられます。
したがって,一次相続の段階から他の特例の適用も考慮に入れて,二次相続が発生した場合を想定した納税額の試算を何通りかしてみたり,一次相続において,将来値上がりが予想される財産は子が取得するといった相続対策をすることが必要になってきます。

まとめ
上記のような納税額の試算や相続対策は,やはり税の専門家である税理士の関与は欠かせないでしょう。
また,これらの相続対策を実現するために,それぞれの相続の際に生じうる法律的な問題を検討したり,実際の相続の際の相続手続きを円滑に進めるには,弁護士の関与も不可欠です。
したがって,二次相続対策を行う場合は,通常の相続手続き以上に,弁護士と税理士の連携がとれている必要があります。
弁護士法人心では,グループ内の税理士法人と連携することで,相続手続きをトータルにサポートさせていただいておりますので,二次相続を踏まえた相続対策についてもまとめてご相談にのらせていただくことが可能です。

遺言書に条件をつける

負担付遺贈と条件付遺贈
遺言者が,遺言によって財産を譲り受ける受遺者に対して,財産を譲る代わりに一定の法的義務を負担させる内容の遺言を,負担付遺贈の遺言といいます。
受遺者は,遺贈の目的の価値を超えない限度においてのみ,負担した義務を履行しなければならないとされています(民法第1002条1号項)。
また,受遺者が負担を履行しない場合,相続人または遺言執行者は,相当の期間を定めて履行を催告することができ,それでも履行がないときは,家庭裁判所に遺言の取り消しを請求できます(民法第1027条,第1015条)。
ここでいう「負担」とは,法律上の義務をいい,法律上強制できないもの(財産を譲る代わりに甲さんと結婚しろ,といった内容)や,受遺者の意思に左右されない事項(乙さんに財産を譲る代わりに選挙で当選すること,といった内容)は「負担」にはあたらず,「条件」であるとされています。
「負担」が「条件」かは,その条項が「負担」であると解された場合は,負担の履行・不履行が遺贈の効力に直接影響するわけではないが,「条件」と解された場合には,条件の成就が遺贈の効力に影響するという差異があるため,「負担」か「条件」かの判断は当事者にとっては重要ですが,その判断の基準は,遺言者の意思解釈によるとするのが多数説です。
この多数説の中には,遺言者の意思が明確でない場合は,遺言の効力の早期確定のために,「負担」と解するべきであるという見解や,受遺者に義務を課することが妥当かどうかという見地から判断するべきとの見解があります。
「妻の面倒を見ること」は「負担」か「条件」か
妻の面倒を見ることを条件に財産を譲る内容の遺言を作成することはできますが,問題は,「妻の面倒を見ること」が「負担」か「条件」か,です。
この点,上記見解のうち,受遺者に義務を課することが妥当かどうかという見地から判断するべきとの見解からすると,受贈者に義務として妻の面倒を見ることを強制することは妥当でないから,負担でなく条件付きの遺贈であると解される可能性があります。
この条項が「条件」であるとすると,条件が成就しなければ遺贈自体が無効となります。
また,仮に「負担」と解されたとしても,遺贈の価額と釣り合う範囲での「妻の面倒を見る」というのがどの程度の行為なのかは解釈が難しいところです。
つまり,妻の面倒を見ることを条件に財産を譲る内容の遺言は,作ること自体はできるが,その解釈が難しく,仮に受遺者が妻の面倒を見ない場合には,「もめる」可能性のある遺言であるといえます。
このような遺言書を作成する場合は,事前に受遺者との話し合いが必要です。
弁護士などの専門家にご相談して作成するかどうか,作成するとしてどのような文言にするかを決めることを強くお勧めします。

遺言書の付言事項

遺言書の内容は原則として遺言書作成者の自由
遺言書は,例えば自筆証書遺言であれば,その全文と日付,氏名を遺言者が自署し,押印するなどの法律で要求される形式的用件を満たせば,その内容については原則として遺言者の自由であり,複数の相続人に対して,法定相続分と異なる財産を取得させる内容の遺言書を作成することも,また,遺留分の問題を置けば,一人の相続人に対して全ての財産を取得させる内容の遺言書を作成することもできます。
そのように自己の財産を死後に相続人等に分配したいというのが遺言者の意思であるなら,それを尊重するべきであるというのが民法の考え方であり,遺言者がそのように財産を分配したいと考える理由の記載は,法律上要求されていません。
遺留分に配慮してもトラブルは起き得る
しかし,上記のように,法定相続分と異なる内容の遺言書が存在する場合,遺された相続人のうち,法定相続分よりも少ない財産しか取得できない相続人は,どのように感じるでしょうか。
例えば,Aさんは既にご主人に先立たれた女性で,相続人は長男のBさんと二男のCさんの二人であるとします。
長男のBさんは,Aさんが亡くなるまでの数年間,入院していたAさんの看病を熱心にしていたのに対して,二男のCさんは自分も健康状態がすぐれず,遠隔地に住んでいたこともあり,あまりAさんのお見舞いにも行けなかったことから,Aさんは,よく面倒をみてくれたBさんに多くの財産を残すことを決め,「自分の全財産の4分の3をBに相続させ,4分の1をCに相続させる。」という内容の遺言書を作成し,死亡しました。
この場合,遺言書の内容自体は,遺留分にも配慮されており,法律的には特に問題ないものです。
しかし,Cさんとしては,自分があまりお見舞いに行けない事情は母であるAさんも理解してくれていたはずであり,遺言書の内容を見ても納得はできないこともあるでしょう。
そうすると,「母がこんな内容の遺言書を書くわけがない!」と考えたCさんによって,場合によっては遺言無効確認請求の訴訟が提起されるなど,Aさんの死後に,BさんとCさんの間で紛争が生じることもあり得ます。
付言事項を活用してトラブルを回避する
このような事態を防ぐために,遺言書の「付言事項」を活用することが考えられます。
遺言書には,法律的には効果はないものの,遺言者がこのような遺言書を作成した経緯や遺された人々へのメッセージなどを記載することができます。
法律上の効果が発生する遺言書の本体に付言するということで「付言事項」と呼ばれています。
この付言事項部分で,例えば上記の例であれば,よく看病をしてくれたBさんに対して感謝し,またCさんにも一定の配慮をしたこと等を記載し,遺言書の趣旨を理解してもらうようにするのです。
実際,名古屋で遺言書をめぐる紛争をたくさん見ていると,付言事項等で,少しでも遺言者の気持ちを書きのこしてもらえればと思う件は少なくありません。
遺言書作成にあたっては,ぜひ付言事項を活用して,トラブルにならない遺言書を作成するようにしてください。
ただし,遺言書の作成にあたって,付言事項を記載することを勧めるかどうかは,弁護士や公証人によっても異なりますので,遺言書の作成について相談される場合は,「付言事項としてこういうことも入れてもらいたい」とご提案されることをお勧めします。

相続で不動産を取得した場合の名義変更について

不動産の名義変更とは
不動産の名義変更とは,不動産登記簿の権利部の甲区に記録される,不動産の所有者を子などの相続人に変更することをいいます。
不動産の所有権自体は,親が亡くなり,相続が発生した時点で相続人の共有となり,その後,遺産分割協議等によって相続人の間での持分が決まると,その取り決めどおりに移転することになりますが,これを登記しなければ,当事者以外の第三者に対して,権利の移転を主張できない(対抗できない)ため,相続人がさらに不動産を売却したり,不動産に抵当権を設定することが難しくなります。
したがって,親の不動産を相続によって取得した場合は,速やかに不動産の名義変更を行う必要があります。

亡くなった親の不動産の名義変更に必要な書類

親の不動産の名義変更に必要な書類には,①相続による所有権の移転登記申請に必ず必要な書類と,②相続にともない,遺産分割や相続放棄がされたなど,法定相続分と異なる所有権(持分)移転登記申請をする場合に,それぞれのケースごとに必要となる書類があります。
①の書類としては,まず,「相続を証する市区町村長その他の公務員が職務上作成した情報」が必要になります。
代表的なものは,戸籍謄本です。
戸籍謄本には,親の死亡の年月日が記載され,また配偶者,子,直系尊属等,亡くなった親の相続関係(身分関係)が記載されています。
実際には,親の死亡時の戸籍のみでなく,親の出生時から現在までの戸籍(除籍)の謄本が必要になる場合が多いので,親の戸籍の収集は,弁護士や司法書士などの専門家に依頼しなければ困難であったり手間がかかる場合が多いです。
また,戸籍に記載された親の本籍と,登記簿上の親の住所が異なるときは,親の住民票の除票の写しを,同一性の確認のため提出することが必要になります。
さらに,名義を変更する相続人の住民票の提出も必要です。
②の書類としては,例えば,遺言書によって法定相続分と異なる相続分が指定された場合は,遺言書の提出が必要となります。
遺言書が自筆証書遺言である場合は,検認手続がされたことの証明も必要です。
また,遺産分割協議がされた場合は,登記申請をする相続人以外の相続人全員の実印での押印がされた遺産分割協議書と,押印した相続人の印鑑証明書の提出が必要となります。

亡くなった親の不動産の名義変更の手続き
名義変更,すなわち相続を原因とする所有権の移転登記の申請をするには,登記申請書と上記2の添付書類とを,法務局の登記所に提出する必要があります(オンラインでの申請も可能です)。
申請に際しては,民法や不動産登記法などの諸法令や,実際のケースごとに登記所がどのような運用を行っているかの正確な知識が必要になりますので,弁護士や司法司法書士に依頼して名義変更されることをお勧めします。

亡くなった方の預貯金の解約について

金融機関は,預金者が亡くなった場合,その事実を知った時点で,亡くなった方の名義の預貯金の口座を凍結します(口座振替も停止となります)。
その後,亡くなった親の預貯金を払い戻すには,相続人全員が払戻しに合意するか,遺言書や遺産分割協議などの結果,預貯金を取得することになった相続人等の全員が払戻しに合意して,預貯金の払戻しを請求することになります。
相続人全員の合意がない場合に,遺産分割協議をすることなく,各相続人が自分の法定相続分のみの払戻しを受けられるかについては,金融機関ごとに対応が異なります。
例えば,ゆうちょ銀行は,相続人全員の合意がない場合,各相続人からの個別の払戻しの請求には応じていません。

払戻に必要な書類は,①遺言書がある場合と,②遺産分割協議や相続人全員の合意による場合とで異なります。
まず,いずれの場合にも,各金融機関の指定の相続に関する届出書が必要になりますので,これについては各金融機関でご確認ください。
また,亡くなった親の預貯金の通帳,届出印,キャッシュカードなども必要になります。
それ以外に,①遺言書がある場合には,遺言書(自筆証書遺言などで検認が必要な場合は検認調書の謄本も必要)が必要です。
また,遺言書の中に遺言執行者の指定がない場合は,遺言執行者の選任を家庭裁判所に申立てるか,相続届出書に相続人全員が署名押印することが必要になります。
また,亡くなった親の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本,相続人全員の印鑑証明書,相続人全員の戸籍謄本,遺言執行者が選任されている場合は遺言執行者の印鑑証明書などが必要になります。
①遺言書がなく,遺産分割協議・調停・審判を経た場合は,遺産分割協議書,遺産分割調停の調停調書正本(または謄本),遺産分割審判の審判書の正本(または謄本)と確定証明書のいずれかが必要となります。
②の場合も,亡くなった親の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本,相続人全員の印鑑証明書,相続人全員の戸籍謄本が必要になります。

亡くなった親の預貯金の払戻しを受けるためには,まず金融機関に口座名義人である親の死亡を連絡し,上記の必要書類の準備を整えたうえで,金融機関にそれらの書類を提出するという流れになります。

預貯金の払戻については,戸籍の取得や,金融機関等との話し合いなど,手続にかなりの時間を要しますので,弁護士にご相談されることをお勧めします。

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貸金庫その2

 以前,このブログで貸金庫の話題に触れたことがありますが,今回は,亡くなった方が実際に貸金庫を借りていた場合の対応について書きます。
 貸金庫の契約については,銀行等と貸金庫の使用者との間の,貸金庫の空間を使用する賃貸借契約と考えられていますので,貸金庫使用者が亡くなった場合,貸金庫の賃借権を,貸金庫使用者の相続人が共同で相続することになります。
 したがって,貸金庫の解約は,賃貸借契約の解除ということになりますので,銀行等は,原則として,相続人の全員の同意がないかぎり,貸金庫の解約には応じないことになります。
 そうすると,「亡くなった方が貸金庫を使っていたことは聞いているけど,中にどんなものが入っているか分からない。でも相続人の一部に連絡がとれない」というような場合に,いろいろと困ったことが生じます。
 実際,名古屋でご相談をお受けしていると,このようなお悩みで弁護士を尋ねて来られる方が多いです。
 このように,相続人の一部が相続手続に非協力的であったり,行方が知れないような場合,貸金庫の解約の前に,まず貸金庫の中身を確認することが必要です。
 貸金庫を開扉する場合,通常,銀行等の担当の立会いのもと,開扉してもらって中身を確認することになります。
 開扉してもらって中身を確認するところまでであれば,相続人の一部からの要求でも応じてくれる銀行がほとんどです。
 ただし,相続人であることが客観的に明らかでなければならないので,戸籍等の資料を取りそろえたうえで,銀行等に相談することになります。
 そして,ここからが大事なのですが,貸金庫を開扉してもらって中身を確認する際に,その中身がなんであったかを記録する必要があります。
 銀行によって運用は異なると思われますが,相続人の一部が所在不明であるような場合は,内規によって,貸金庫の内容物がいわゆる金目のものでない場合は,相続人の一部からの解約に応じる,という運用になっている銀行等がかなりあります。
 金目のもの,つまり財産的価値の高いものは,それが亡くなった方の遺産となるのであれば,相続人の全員で遺産分割の協議等を行った結果,その遺産を相続人のうちだれが取得するかが確定した場合でなければ銀行等が勝手に処分するわけにはいきませんし,相続人全員で合意できない場合も,合意に参加していない相続人が後に現れて銀行等に責任を追及するリスクがあるため,合意に参加していない相続人に法定相続分の相続財産が確保されていることが客観的に明らかでなければ,銀行は引渡しに応じることはできません。
 そこで,貸金庫を開扉して中身を確認した際に,金目のものがないので,後日,一部の相続人のみで解約をしたいときには,開扉に際して,公証人に立会ってもらい,公正証書でその状況を確認してもらうのがよいでしょう。
 公証人は,自分で見聞きしたりした結果について,「事実実験公正証書」というものを作成します。
 これが,貸金庫解約の際に,貸金庫の中身を客観的に明らかにする資料として役立つ場合がかなりあります。
 このような形で,相続人の一部からでも貸金庫の解約ができる場合がありますので,お悩みの方はご遠慮なくご相談ください。

相続法の改正

 昭和55年の改正以来,久々に相続法が改正されました。
 施行は平成31年7月1日(一部規定を除く)です。
 以下,改正のポイントを簡単にご説明いたします。
なお,上記のとおり,一部の改正につきましては,施行時期がずれています関係上,詳細についてお悩みの際は弁護士等にご相談ください。

1 配偶者の居住権を保護するための方策の整備
  被相続人の死後,遺された配偶者が,そのまま建物に居住し続けることを認めるための規定が整備されました。
  居住権が保護される期間の長短に応じ,それぞれ配偶者居住権,配偶者短期居住権と呼ばれます。
  配偶者居住権とは,配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物につき,配偶者に終身または一定期間使用収益を認める内容の権利で,遺産分割で配偶者に配偶者居住権を取得させたり,被相続人が遺言で配偶者に配偶者居住権を取得させることが可能になりました。
  配偶者短期居住権とは,遺産分割により建物の帰属が確定するまでの間など,法定の一定の短期間のみ認められる配偶者居住権です。

2 遺産分割に関する規定の見直し
  遺産分割に関しては,配偶者保護のため,婚姻期間が20年以上の夫婦の一方配偶者が居住用建物や敷地を贈与されたり遺言によって取得した場合に,これらの財産を遺産分割において特別受益としなくてよいという規定が設けられました。
  また,現在の民法や家事事件手続法では認められていなかった,家庭裁判所の判断を経ないで遺産分割前に預貯金を払い戻せる制度と,現在の家事事件手続法で認められる預貯金債権の仮分割の仮処分の要件を緩和する制度が設けられました。
  さらに,遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合,現在の民法ではそれらの財産は遺産分割の対象となりませんでしたが,共同相続人の同意によって,それらの財産を遺産分割の対象とできる規定が設けられました。

3 遺言に関する規定の見直し
  自筆証書遺言の要件につき,現在の民法ではその全文を遺言者が自書する必要がありますが,財産目録については自書でなくてもよいとすることで,自筆証書遺言を作成しやすくする見直しがされました。

4 遺留分制度に関する規定の見直し
  遺留分減殺請求の効果として,現在の民法では認められていなかった,遺留分侵害額に相当する金銭債権が発生すると見直しがされました。
  
5 相続の効力に関する規定の見直し
  遺言書において,「Aに特定の財産を相続させる」といった内容が定められた場合,名義の変更などは不要で,当然財産がAに移転するとされていた現在の民法の解釈をあらため,第三者に対してAが権利を主張するには登記等が必要であるとする見直しがされました。

貸金庫に遺言書を保管するとどうなる?

名古屋で相続の相談をお受けしていると,貴重品の保管に,銀行の貸金庫を利用されている方が多いと感じることがあります。
しかし,遺言書を貸金庫に保管するときは注意が必要です。
公正証書で作成した遺言書であれば,公証役場に原本が保管されるのでそこまで問題にはなりませんが,例えば,一部だけ作成した自筆証書の遺言書を,大事なものだからということで貸金庫に保管すると,少し困ったことになる可能性があります。

以下のような事例を考えます。

被相続人甲さんには,相続人の長男乙さん,二男丙さんがいます。
生前,甲さんは,乙さんに面倒をみてもらい,乙さんに感謝していたので,全く疎遠で面倒もみてくれない丙さんより,乙さんに多くの財産を相続させる遺言書を作成して,甲さんが契約する貸金庫に保管しました。
甲さんが亡くなった後,遺言書が貸金庫に保管してあることを知った丙さんは,遺言書があるなら持ち出したいと思い,貸金庫を開扉してもらうために銀行をたずねました。
この事例で,丙さんは,貸金庫を開けて,遺言書を確認できるでしょうか。

まず,法律的には,貸金庫契約は,金融機関が貸金庫室内に備え付けられた貸金庫ないし貸金庫内の空間を利用者に貸与し,有価証券,貴金属等の物品を格納するために利用させるものとされており(最判平成11年11月29日),法的な性質は賃貸借契約であると考えられています。
契約者である被相続人が死亡しても,賃貸借契約である貸金庫契約は当然には終了せず,貸金庫契約にもとづく賃借権は,相続人に相続されることになります。
したがって,上の例では,乙さんと丙さんが貸金庫の賃借権を承継し,各相続人の準共有状態になります。
そして,貸金庫を開扉して,中にある遺言書の存在を確認するのみであれば,貸金庫の賃借権の内容等に変更を加える行為ではなく,相続手続の準備のため,他の相続人にも利益となるから,保存行為として,問題なく相続人の一人でも行えそうです。
また,遺言書の持ち出すために貸金庫を開扉する行為も,遺言書自体を持ち出すことをどう考えるかは難しいですが,検認手続という,遺言執行の前提として不可欠な手続のために必要であり,他の相続人にも利益となるから,これも保存行為と考えることが可能ではないかと思われます。

ただし,法律的にどう考えるかとは別に,金融機関が,相続人の一人からの貸金庫の開扉に応じるかどうか,という,実務上の問題があります。
金融機関は,相続人が揉めている,あるいは揉めそうだ,というような場合に,相続人の一人からの貸金庫開扉には応じない傾向にあります。
金融機関側から,開扉行為が保存行為にとどまるのか,それとも相続人の全員の同意を要する処分行為となるのかの判断が困難であり,一人の相続人の求めに応じて開扉して,後日,他の相続人からクレームがあることを避けたいと考えるのは無理もないところでもあります。
したがって,上の例で,丙さんが,「遺言書があるはずだ」と主張して貸金庫の開扉を求めても,「他の相続人の同意をもらってください」と断られる可能性が高いです。

それでは,丙さんはどうしたらよいのでしょうか。

一応,弁護士や公証人が関与して,貸金庫の開扉を求める方法はあるにはあるのですが,それよりも,遺言書を作成される方が,自筆証書で遺言を作成する場合,同様の内容のものを複数作成して,複数の場所で保管するなどの工夫が必要です。
また,1通しか作成していないのであれば,貸金庫に保管するのは控えた方がよいと思われます。

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『勝訴』と書いてある白いビラビラについて

 世間で注目を集める事件の判決が出たときに,よくニュースで見かける『勝訴』って書いたあの白いビラビラ。
 選ばれし者だけが持つことを許されるあのビラビラ。
 私は残念ながら弁護士になってからまだあのビラビラを持つ大役を仰せつかったことはないのですが,あのビラビラを掲げる際に,なんかルールってあるのでしょうか?
 ニュース等を見ている限り,皆さん一定のルールに従って掲げていらっしゃるようですし,ビラビラの形とかも決まっているようにも見えます。
 文言も『勝訴』『一部勝訴』『不当判決』とか決まってるようです。
 これって,弁護士業界の慣習にとどまるものなのか,なにか規則等できちんと定められているのか,ちょっと調べてみました。
 
 まず,弁護士業界的には,あれは『ビラビラ』ではなく,『ハタ』と呼んでいるようです。
 なんと,民事用,刑事用,行政事件用と用意してあって,日弁連からレンタルで借りるのが通常だそうです。

 そして,ありました,裁判所的には,あのハタのことは,『判決等即報用手持幡(はんけつとうそくほうようてもちばた)』と呼ぶようです。
 
 ニュース等で見ていると,判決等即報用手持幡(以下,「あのハタ」といいます。だれも『判決等即報用手持幡』って呼んでるの聞いたことがないので。)を持った弁護士は,ダダダーッと走って裁判所の外に行ってあのハタをビラッと広げてますが,あれも裁判所のルールがあるためらしいです。

 『裁判所の庁舎等の管理に関する規程(昭和43年6月10日最高裁判所規程第4号,改正 昭和43年10月30日最高裁判所規程第6号)』の第12条に「退去命令」という条項があり,第1項で,「管理者(注:最高裁判所にあっては最高裁判所事務総局経理局長,高等裁判所にあっては高等裁判所事務局長,地方裁判所(管轄区域内の簡易裁判所を含む)にあっては地方裁判所長,家庭裁判所にあっては家庭裁判所長とする,と規程第2条1項で定められています。)は,庁舎等において次の各号の一に該当する者に対し,その行為若しくは庁舎への立入りを禁止し,又は退去を命じなければならない。(以下略)」と定められています。
 その第9号に,「旗,のぼり,プラカード,拡声機その他これらに類する物を持ち込み,又は持ち込もうとする者」が挙げられています。
 第13条1項4号では,「撤去命令等」として,旗等の所有者又は所持者に対し,その撤去又は搬出を命じなければならない,と定められています。
 そして,規程の第2条4項では,「管理者は,必要があると認めるときは,当該裁判所の職員にその事務の一部を委任し,又は代理させることができる。」とあります。
 
 つまり,あのハタを持って裁判所の構内をプラプラしていると,係の人によって,裁判所からつまみだされてしまうということになります。

 ニュースになる事件とかで,目立ちたいからといって裁判所で手作りのハタを持って歩き回らないよう,お気をつけください・・・
 

続柄の表記

 弁護士は,相続の事件で書面を作成するときは,結婚している夫婦の間に生まれた二番目の男の子のことを,「二男」と表記します。
 すると,お客様にたまにご指摘を受けます。
 「せんせい,間違ってますよ。『次男』ですよね」って。
 
 どちらが正解なんでしょうか?
 名古屋と東京でルールが違ったりするのでしょうか?

 実は,使用する場面においては「二男」の方が正しい(とされる)ことがあります。
 例えば,役所とか裁判所とか,公の場面で続柄を表記する場合は,「二男」と表記します。
 その理由は,戸籍の記載において「二男」と表記されるから,ということになります。
 戸籍法施行規則に「附録第六号 戸籍の記載のひな形(第三十三条関係)」というものがあり,この中で,「長男」「長女」「二男」「二女」という表記があり,これが根拠となるようです。
 
 ちなみに,日本新聞協会では「次男」という表記を使用しているということで,ニュースなどでは,「次男」の方がなじみがあると思います。
 というか,これは新聞等で「次男」が使用される理由にもなっているようですが,「二男」って,普通に読むと「になん」ですよね。「二」という漢字には,「ジ」という読み方はなく,常用漢字表にも記載されていません。

 ・・・と,ここまでであれば,「へ~,戸籍とかに関しては,日常とは違う漢字を使うんですね~」と,なんか豆知識ひとつ増えたな,くらいの感想で終われそうなんですが,個人的には少し厄介だな~と感じることがあります。
 
 相続に関する法律的な文書には「二男」「二女」と使用する,としたときに,例えば,遺言書を作成する場面をご想像ください。

 遺言書を作成するお父さんに,息子さんが3人いたとします。
 長男は家業を継いで頑張ってくれた,二男(次男?)は自分達夫婦の面倒をよくみてくれる,三男は東京の大学に行ったっきり,全く実家によりつかないし,あそこの嫁はなんか気にくわない・・・
 という状況で,お父さんが,長男と二男に,ご自分の財産のほとんどを相続させるような遺言書を『自筆で』作成されたとします。

 「不動産○○は長男に,預貯金△△は二男に~」というような内容の遺言書を作成し,これで自分に何かあっても安心・・・と思っていたら,その遺言書の内容を見た三男が,自分も財産が欲しい!と思った場合,こんなことにならなければいいなと思うんですが・・・

 「二男」の「二」に,一本横棒を入れると,簡単に「三男」になっちゃいますよね。
 もちろん,そうならないために,「二男山田次郎(平成〇年〇月〇日生)」というように,きちんと氏名と生年月日で特定すればこの危険は避けられますが,法律というか公的な文書で使用される表記の方が偽造されやすい表記というのも,なんか皮肉な感じがします。

世間とのズレ

 先日,名古屋でのご依頼者との打合せで,相手方の代理人弁護士が書面で用いた言葉遣いについて,「物言いが上から目線過ぎる」とご指摘を受けました。
 
あまり具体的に書くと問題があるので控えますが,その言葉自体は言葉の意味としても特に失礼な言葉ではありません。
 現在では日常会話で使用されることもないような言葉なので,語感だけで「なんか偉そう」と感じられることがある言葉ではあるかもしれません。
 ただ,私は正直,最初に文書を見た時はその言葉遣いにそれほど違和感を感じませんでした。
 というより,たぶん気に留めてませんでした。
 
自分が弁護士として相手方に文書を送る際には気をつけよう,と思いました。
 
 それはともかく,この例のみならず法曹界と世間の感覚がズレてるんじゃないか,と感じることは,言葉遣いの面に限っても多いです。
 私が昔よく感じていたのは,判決書を読んでいて,「こんな言葉,判決書以外で使っている人は見たことも聞いたこともない」という言葉が結構あることでした。
 
 「畢竟」「毫も認められない」「なかんずく」・・・多分普通は読み方すら分からない。
 
 「畢竟」は,「ひっきょう」と読みます。「畢」も「竟」も終わる,という意味で,あわせて「結局」「つまるところは」という意味です。

 「毫」というのは,「ごう」と読みます。細い毛のことです。
 「毫も認められない」は,「1ミリもない!絶対にない!」みたいな意味です。
  
 「なかんずく」は,「いろいろある中で,特に」「とりわけ」という意味です。
 「就中」と,漢字で書くとイメージが湧くかもしれません。
 
 昔はこういう言葉を判決書の中でよく見たんですが,最近はさすがに見かけません。
 でも結構最近まで見てた気がするので,いったいいつ頃まで使用されていたのか代表的な判例検索ソフトで,ちょっと簡単に調べてみました。
 
 まず「畢竟」から・・・さすがに平成二桁になったら,もう使われてないよねーと検索してみると・・・
 平成30年2月7日の地裁の裁判例で使われてました・・・!
 その他にも,地裁・高裁だと現在でも絶賛使用中でした。
 
 ちょっと最高裁の判例に限定して調べ直してみます。
 最高裁では,平成9年,10年くらいまでは普通に使われていますが,平成20年に1件,検索がヒットするのみで最近は使用されていません。

 次に「毫も」。
 同じく最高裁に限定して調べてみます。
 こちらも平成15年が最新で,それ以降は使用がヒットしません。
 刑事裁判では割と最近でも使用されていました。
 
 最後,「なかんずく」です。
 これは平成23年の判決で使用されています。

 こんな感じで,自分の思っていたより最近まで,判決書では難しい言葉が使われていました。

相続放棄と相続財産の管理について④

前回までで,民法第940条を挙げて,相続放棄したとしても,次の相続人が相続財産の管理を開始できるまでの間は,相続財産の管理義務は継続することをご説明しました。
今回は,最後に,「相続人の全員が相続放棄した後は,財産の管理義務はどうなるのか」について書きます。

まず,民法第940条1項の条文を(しつこいですが)もう一度挙げます。
「相続の放棄をした者は,その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで,自己の財産におけるのと同一の注意をもって,その財産の管理を継続しなければならない。」と定めてあります。

この条文を素直に読むと,相続人全員が相続放棄すると,もはや次順位の相続人がいない以上,「その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができる」時が来ないんじゃないか,と思えます。

しかし,相続人がいない場合の相続財産の扱いについても,民法では規定されており,簡単にいうと,相続人の代わりに,相続財産管理人が家庭裁判所によって選任されることになり,相続財産管理人が,相続財産について管理していくことになります。

・・・なんだ,問題は解決するじゃないか,と思われた方,すみません。
相続財産管理人はどうやって選任されるのか,という問題があります。
相続財産管理人の選任については,民法第951条,第952条に定められています。
民法第951条は,「相続人のあることが明らかでないときは,相続財産は,法人とする。」と定め,第952条は,「前条の場合には,家庭裁判所は,利害関係人又は検察官の請求によって,相続財産の管理人を選任しなければならない。」と定めています。
このように,相続財産管理人は,申立によって選任されることになっています。
「利害関係人」とは,「相続財産の帰属について法律上の利害関係を有する者」とされており,遺贈を受けた者,相続財産の債権者・債務者,特別縁故者などがあたります。
預貯金等がかなりあって,借金もそれなりにあるような方がなくなった場合で,相続人がいなければ,債権者が利害関係人として相続財産管理人の選任を申し立てることはあるかもしれませんが,不動産のように管理を要する相続財産のみが存在するにもかかわらず,相続人全員が相続放棄したような場合には,相続放棄した人が,相続財産管理人の選任申立をして,相続財産管理人に管理を引き継がなくては,相続財産の管理義務を免れないと解釈することになります。

ここで最後の大きな問題なのですが,相続財産管理人の申立に際しては,手続費用について申立人が予納する必要があります。
相続財産の中から手続費用を支出できればよいのですが,そもそも相続人全員が相続放棄するようなケースで多いのは,管理の必要がある不動産のみが相続財産で,それ以外に目立った資産はなく,かつその不動産も価値がない,といったパターンですから,この予納金が相続財産から捻出できないことが多いと思われます。
このような場合は,最後に相続放棄する人が予納金を負担せざるを得ない形になりますので,相続財産の管理は本当に難しい問題です。
名古屋も最近台風が多く,相続財産管理の問題が多く発生しないか弁護士としては心配しております。

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相続放棄と相続財産の管理について③

 前回までで,相続人に順位があり,その順位は①被相続人の子,②被相続人の直系尊属,③被相続人の兄弟姉妹(代襲相続に関する説明は省きます)という順位になっており,先順位の相続人がいる場合は,次順位以降の人は相続人にはならない,ということをご説明しました。

 話を先に進めると,このように,相続人に順位があり,また,相続放棄の効果として,民法第939条が,「相続の放棄をした者は,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなす。」と定めていることから,ある人が相続放棄した場合に,相続人の順位の繰り上げが起こることがあります。

 例えば,甲さんがなくなり,甲さんの子が乙さん,丙さんで,甲さんのお父さんが丁さんで,乙さん丙さんが相続放棄をしようとしているケースを考えると,乙さんだけが相続放棄しても,まだ子の丙さんがいますので,丙さんも相続放棄しなければ,丁さんは相続人になりません。
 この後,丙さんも相続放棄すると,第1順位である被相続人の子が,全員「初めから相続人とならなかった」ことになり,第2順位の丁さんが相続人になります。

 やっと,民法第940条の規定に戻ります。
 もう一度民法第940条を挙げると,「相続の放棄をした者は,その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで,自己の財産におけるのと同一の注意をもって,その財産の管理を継続しなければならない。」と定めてあります。

 つまり,この条文は,先ほどの例でいうと,乙さん丙さんが相続放棄しても,丁さんが相続人となって,相続財産の管理を始めるまでは,乙さん丙さんは相続財産の管理義務を免れない,ということを規定しているのです。

 また,この条文は,典型的には,このように順位の繰り上げが起こった場合に適用される規定ではありますが,例えば,乙さんが先に相続放棄して,同順位の丙さんが相続放棄してない場合も含むと解釈されていますので,その解釈に従うなら,相続開始後,事実上,財産を一人で管理していた乙かんが相続放棄した場合,丙さんが管理を開始できるようになるまでは,やはり乙さんに管理義務があることになります。
  
 以上のように,民法第940条に従うと,相続放棄しても,次に相続人になる人が相続財産の管理を開始するまでは,財産の管理義務を免れないことになります。

 つまり,弁護士としては,名古屋でも先日の台風で,相続財産として管理していた建物が壊れた,などの影響は出たとしたら,相続放棄をしたからといって,その時点で相続財産の管理義務を免れると考えるのは難しいので,他の相続人が管理できる状態になるまでは,管理を継続した方がよいでしょう,とお答えすることになります。
 
 残る問題は,「じゃあ,相続人が全員相続放棄して,相続人がいなくなったらどうするか?」という点ですが,この点については次回ご説明いたします。

相続放棄と相続財産の管理について②

 前回は,相続放棄したとしても,どうやらすぐには被相続人の財産の管理義務から逃れることはできないらしい,ということに関して,民法第940条1項の条文をご紹介しました。
 もう一度,民法第940条1項を挙げると,「相続の放棄をした者は,その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで,自己の財産におけるのと同一の注意をもって,その財産の管理を継続しなければならない。」という条文でした。
 この条文を理解するために,今回は,「その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで」の意味をご説明します。

 相続人には,「順位」があります。
 まず,ある人が亡くなった時,その人の配偶者(夫あるいは妻)は,いつでも相続人になりますので,順位は,第1順位になる人と同順位ということになります。
 民法第890条は,「被相続人の配偶者は,常に相続人となる。」と定められています。
 配偶者とともに,だれが相続人になるのか,について順位があります。
 相続人の順位に関係する条文は,民法第887条と第889条です。 
 まず,第887条1項に,「被相続人の子は,相続人となる。」と定められており,第889条1項に,「次に掲げる者は,第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には,次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。」と定められ,その「次に掲げる順位」というのは,「1 被相続人の直系尊属。ただし,親等の異なる者の間では,その近い者を先にする。 2 被相続人の兄弟姉妹」と定められています。

 ややこしいのでここまでを整理すると,
 まず,相続人の順位1番は被相続人の子です。
 亡くなった方にお子さんがいたのであれば,民法第887条1項と第890条より,そのお子さんと,配偶者がいれば配偶者とが相続人になります。
 この場合は,亡くなった方の親や兄弟は相続人とはなりません。

 次に,亡くなった方にお子さんがいなかったのであれば,第889条1項1号により,その方の親が相続人になります。
 この場合に,亡くなった方に配偶者がいたのなら,配偶者も相続人となります。
 仮に,亡くなった方の両親ともなくなっていたが,その親が存命なら,第889条1項1号のただし書きにより,親の親が相続人になります。
  
 そして,亡くなった方に子もいない,親も(そのまた親も,そのまた親も・・・)いない,ということで,亡くなった方より上に遡ってもだれもいない場合には,亡くなった方の兄弟姉妹が相続人となります。

つまり,相続人には,①被相続人の子,②被相続人の直系尊属,③被相続人の兄弟姉妹,という順位があり,先順位の相続人がいる場合は,次順位の人は相続人にはならないことになります(代襲相続については説明が複雑になるので触れません)。

やっと相続人の順位の説明が終わりましたので,次回は相続放棄後の財産管理義務の話に戻ります。

 名古屋でも先日の台風の影響で,相続財産の建物が棄損したというご相談を受けますので,タイミング的にお悩みの方はいらっしゃるかと思いますので,弁護士として少しでも本記事をご参考にしていただければと思います。

相続放棄と相続財産の管理について①

 相続について名古屋でご相談を受けていて,最近多いのは,「被相続人が,古くて価値のない建物を所有していたのだが,今ではだれも住んでいないし,自分達もそんな不動産は欲しくないので,相続放棄したい」というようなご相談です。
 たしかに,無価値で管理の手間ばかりかかる不動産であれば相続したくないと思われるのは当然です。
 気になるのは,「相続放棄すれば,問題は全て解決するのか?」という点です。
  
 法律がどのようになっているのかを確認してみます。
  
 まず,被相続人が亡くなって,相続が開始した時点では,被相続族人の所有していた財産について,だれにどのような管理の義務が課せられているかについては,民法第918条1項本文に規定があります。
 民法第9181項本文には,「相続人は,その固有財産におけるのと同一の注意をもって,相続財産を管理しなければならない。」とあります。
 ここで,「その固有財産」というのは,相続人が,相続開始前から所有していた自分自身の財産のことをいいます。
 つまり,相続開始後は,法律では,相続人に被相続人の財産の管理義務が課されており,その管理の際の注意義務の程度としては,他人に管理を任されて預かっている財産ほどではなくても,自分自身の財産と同じ程度の注意義務をもって管理する,ということになっています。

 そして,民法第939条により,「相続の放棄をした者は,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなす。」と定められており,また,さきほどの民法第918条1項のただし書きにも,「ただし,相続の承認または放棄をしたときは,この限りでない。」と定められていますから,相続放棄をすれば,とりあえず,被相続人の財産について,民法第918条1項の定める管理義務を免れることになりそうです。
  
 しかし,お話はここで終わりではありません。
 法律は,このように,相続人の誰かが相続放棄をした場合,被相続人の財産が放置されたりすることで,財産の価値が減少し,次順位の相続人に迷惑がかかるようなことがないようにするため,次のような規定を用意しています。
 民法第940条1項がその条文で,「相続の放棄をした者は,その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで,自己の財産と同一の注意をもって,その財産の管理を継続しなければならない。」と定められています。
 この条文の意味を理解するには,まず,「その放棄によって相続人となった者」というのがだれなのか,相続人の順位について説明が必要ですので,次回は相続人の順位についてご説明します。

養子縁組をすると節税になるのか

 たまに弁護士へのご相談で,「養子縁組をすると相続税対策になるのか」と聞かれることがあります。
 答えは,「なることもあるし,ならないこともある」です。
 相続税の計算において,遺産には基礎控除が認められています(相続税法15条)。
 基礎控除額は,3000万円+(600万円×法定相続人の人数)で計算されますが,この場合の法定相続人には,養子縁組した子も含まれますので,基礎控除によって相続税の課税遺産総額を減らして,相続税の負担を軽減することができることになります。
 ただし,生前にジャンジャン養子縁組すれば,相続税を0にできる,というわけではありません。
 当然ですが,いろいろと制限があります。主に,①民法上の考慮と,②相続税法上の考慮が重要です。
 ①民法上の考慮については,民法第802条1号との関係で必要となります。
 民法第802条は,柱書で,「縁組は,次に掲げる場合に限り,無効とする。」として,養子縁組が無効になる場合を定めています。
 そして,その1号で,「・・・当事者間に縁組をする意思がないとき。」と定めています。
 したがって,当事者間に縁組をする意思(真の親子関係を設定する意思)がない場合は,養子縁組が無効とされる可能性があります。
 この点について,相続税の節税のためになされた養子縁組の無効の確認を求める訴訟において,裁判所は,「養子縁組をすることによる相続税の節税効果は,相続人の人数が増加することに伴い,遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。相続税の節税のために養子縁組をすることは,このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず,相続税の節税の動機と縁組をする意思とは,併存し得るものである。したがって,専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条にいう「当事者間に養子縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。」と述べました(最高裁第三小法廷平成29年1月31日判決)。
 このことからすると,相続税の節税のための養子縁組であったとしても,そのことから直ちに養子縁組が無効とされることはないといえます。
 次に,②相続税法上の考慮としては,「何人でも養子を増やすことで,相続税をどんどん減らす」ということはできない,という点が重要です。
 基礎控除の計算においては,被相続人に実子がいる場合は1人まで,実子がいない場合は2人まで法定相続人の数に加えることができる,という制限があります(相続税法15条2項,3項)のでご注意ください。
 今のところ,名古屋でそのような話を聞いたことはありませんが,名前を貸しますから節税のために養子縁組しませんか,とか言ってくる人がまわりにいたら,慎重にご判断ください。

親族と姻族について②

 前回はクイズを出しました。
 もう一度事例を掲載します。

  事例1
  一郎さんの妻が桃子さん,桃子さんの妹が梅子さん,梅子さんの夫が二郎さんです。
   この場合,一郎さんと二郎さんは「親族」でしょうか?

 答えは,「親族でない」です。
 
 前回,親族について,民法は,「3親等内の姻族」について,親族と定めているとお話ししました。
  そして,姻族とは,①配偶者の血族と②血族の配偶者をいい,今回はそのうち①が関係する事例でした。
  事例1に沿って考えると,一郎さんからみて,奥さん(配偶者)である桃子さんの血族である梅子さんは,姻族にあたります。
  しかし,梅子さんの配偶者である二郎さんは,桃子さんとは血縁関係がないので,桃子さんの血族にはあたりません。また,二郎さんは,当然,梅子さんの血族でもありません。
  したがって,一郎さんからみて,「配偶者の血族の配偶者」に過ぎない二郎さんは,民法上の親族にはあたらない,ということになります。
  そのため,親族間に適用される法律上のルール(例えば,家庭裁判所は,特別の事情があるときは,3親等内の親族にも扶養義務を負わせることができる:民法877条2項)は,一郎さんと二郎さんの間には適用されません。
  
 さて。
  ここまで,長々と「親族」や「姻族」についてのお話をしたのは,法律上「姻族」とか「親族」にあたるかの判定は,弁護士や法律に関わる人であればまだしも,そうでない方にとっては,ぱっと見で分かりやすいものでは必ずしもない,ということをお分かりいただきたかったからです。

  今までご確認いただいたように,「姻族」にあたるかどうかは,ちょっと立ち止まって定義にあてはめて考えてみたくなるようなものです。
  つまり,前回お話しした「配偶者」や「血族」ほど,だれが見ても一目で判断がつくものではないといえます。

  しかし。
  無いんです「姻族」の定義が。
  民法には。
 
  「民法〇〇条(姻族の範囲)
   次に掲げる者は,姻族とする。
   1 配偶者の血族
   2 血族の配偶者」
  みたいな条文があっても良さそうなものなのに。

  何回民法を見返しても,ありません。

  そこで,私は,そもそも「姻族」って一体どこで定義されているんだろう?
 と不思議に思ったため,「姻族」の定義が何かの法律でされているのか,されているとしたらどの法律なのか,について調べてみようと思い立ったのでした。
  
  とりあえず,いろいろ検索してみたんですが,なかなか思うような結果には行きあたりませんでした。
  これはもう少し調べてみる必要があるかもしれませんので,また時間のある時に名古屋の図書館を漁って結果をご報告します。

親族と姻族について①

 親族法・相続法の分野では,家族関係を定義する用語として,「血族」「姻族」「親族」といった言葉が用いられます。
 日常的には,親戚一同を広く表現する言葉として「親族」という言葉が用いられることがありますが,弁護士が用いる法律用語としてはきちんと定義されています。
 法律的には,「親族」とは,次のように定義されています。

 民法725条(親族の範囲)
 次に掲げる者は,親族とする。
 1 6親等内の血族
 2 配偶者
 3 3親等内の姻族

 ここで,次に,「血族」とは何か,「3親等」とはどの範囲か,「姻族」とは何か,ということが問題となりますが,親等とは,親族間の世代数のことであり,これは民法で以下のように定められています。

 民法726条
 1 親等は,親族間の世代数を数えて,これを定める。
 2 傍系親族の親等を定めるには,その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり,その祖先から他の一人に下るまでの世代数による。

 第2項がやや分かりにくいですが,例えば,自分の兄弟が何親等にあたるかを数えるには,自分からスタートして,同一の祖先である父母に至るところで一世代さかのぼり,そこから兄弟に至るところで一世代下ることになるので,自分からみて兄弟は2親等,ということになります。

 このような次第で,民法上,「親族」や「親等」については定義されているものの,そもそも「配偶者」,「血族」,「姻族」といった用語については,民法では直接的には定義されていません。
 配偶者や血族については,日常用語のイメージどおり,婚姻関係にある相手方を配偶者と呼び,血のつながりのある者を血族と呼ぶという理解で問題ありません。
 しかし,「姻族」って,聞いただけで自分にとってだれが姻族なのか,すぐに判断がつく方はあまり多くないのではないでしょうか。
 「姻族」とは,婚姻関係によって生じる親族関係であり,①配偶者の血族と②血族の配偶者の2種類が生じます。
 こう書くと単純そうなのですが,姻族かどうかの判定は,分かっていないとちょっと混乱します。

 試しにクイズです。
 ①の配偶者の血族が姻族,という点に関連して,次の事例について考えてみてください。
 事例1
  一郎さんの妻が桃子さん,桃子さんの妹が梅子さん,梅子さんの夫が二郎さんです。
  この場合,一郎さんと二郎さんは「親族」でしょうか?
 
 日常生活では,事例1の二郎さんが一郎さんのことを「おにいさん」と呼んだりしますから,「親族」かも,と思えたりもしますが(と書くと答えを書いたようなものですが),答えは次回に書きます。

相続税の申告について

名古屋で相続に関するご相談を受けていると,弁護士に対する相談ではあっても,ほぼ毎回,相続税の申告についても質問を受けます。
その中でも一番多いのは,「そもそも自分には相続税の申告の義務はあるのか?」というご質問です。
いろいろな所でアドバイスを受けた結果,「いろんな控除を使うと自分の場合は納付額がゼロになりそうだ」とか,「納付額がゼロの場合は申告も不要だそうだ」といった,断片的な情報からの判断で,実は申告が必要なのに申告をしなくて良いとご判断されていた方もご相談者の中にはいらっしゃったので,今回はこのテーマで書いてみようと思います。
相続税の申告は,相続の開始があったことを知った日(一般的には被相続人の死亡日となるでしょう)の翌日から10か月以内に行わなければならないことになっています。
相続が開始してから,相続税の申告期限が経過するまでは,あっという間に過ぎてしまいます。
相続人の間で遺産分割の協議をしている場合などは,なおさら時間が過ぎるのは早いので,注意が必要です。
ただし,どのような場合でも必ず申告が必要なわけではないので,申告が必要かどうかを早めに判断することをお勧めします。
相続税の申告が必要なのは,「①相続税の課税価格の合計額が遺産にかかる基礎控除を超える者で,かつ,②納付すべき相続税額がある者」とされていますので,課税価額の合計額が基礎控除額以下である場合,または基礎控除額を超えても,税額控除をした結果,納付すべき税額がない場合には申告を行う必要はないことになります。
基礎控除とは,課税対象の財産の額の一部を相続税の非課税枠とする制度です。
3000万円+(600万円×法定相続人の数)の額は,相続税が非課税となります。
ここで,「法定相続人の数」とは,相続の放棄があった場合は,その放棄がなかったものとした場合における相続人をいうとされており,相続放棄した相続人がいたとしても,その相続放棄がなかったものとして計算されますので,たとえば,相続人が4人いた場合,そのうちの1人が相続放棄した場合でも,基礎控除額の計算のうえでは法定相続人の数は4人となり,3000万円+(600万円×4人)=5400万円が基礎控除額となります。
このように,基礎控除や他の税額控除の結果,納付すべき税額がない場合であっても,小規模宅地等の減額の特例および配偶者税額軽減規定等の適用については注意が必要です。
これらの適用を受けるには,相続税の申告書の提出が要件となっているため,その適用によって納付税額がゼロになる場合でも,申告が必要になりますので注意が必要です。
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相続放棄とカード等の解約

ある日突然ご親族の方が亡くなり,相続人となる方に,亡くなった方がご利用されていたクレジットカードの請求がくる,というのは,どなたの身にも起こりうることです。
特に,急にご親族が亡くなられた場合には,ご遺族のお気持ちや周辺の整理で大変なご状況にあることなど一切考慮せず,カード会社等は相続人宛に請求を送りつけてきます。
この場合,亡くなられた方がお若い場合等によくあるのが,プラスの資産としては目立ったものがない一方で,複数のクレジットカードを所持して,キャッシングやショッピングに利用されており,その総数や利用額の残高がご遺族にも把握できないというようなケースです。
このような場合,そのまま亡くなられた方の財産を相続すると,プラスの財産のみでなく,借金やショッピングのリボ支払い残高等のマイナスの財産も相続することになってしまうので,相続放棄をすることが選択肢として考えられます。
相続放棄をする場合は,相続の開始を知った時から3カ月以内に,亡くなられた方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に,相続放棄の申述をすることになります。
相続放棄の申述が家庭裁判所に受理されると,申述した方は最初から亡くなった方の相続人ではなかったことになります。
そして,受理後は,相続放棄が受理されたことを公的に証明する書面として,家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書の交付を申請することができますので,債権者から請求がきた場合は,この相続放棄申述受理証明書の写しを送付して,相続放棄したことを連絡して,以後,ご遺族に請求がこないようにします。
ここまではよいのですが,カード会社や携帯電話会社によっては,さらに手続を要求してくることがあります。
その際,おかしな対応を迫ってくる業者もありますのでご注意ください。
具体的には,相続放棄された方に,亡くなった方の代理人として,契約の解約手続をすることを要求してくる業者があります。
例えば相続放棄をする前に,解約の手続だけに協力してもらいたい,というのであれば,相続放棄の手続を進めている最中であることを業者に伝えたうえで,解約手続のみ協力する,というのは百歩譲ってあり得るところです。
しかし,ひどい業者になると,相続放棄の申述が受理された後でも,亡くなった方の代理人として解約手続をしてもらわなければならない,などと言い,解約の場合の違約金を支払うことを相続放棄された方に迫るような業者もあります。
亡くなった方の代理は法律上できませんし,相続放棄された方が亡くなった方の契約の違約金を支払う必要もありません。
このような要求をされた場合は,専門家にご相談されることをお勧めします。

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