公衆用道路

不動産を相続財産に含む遺産分割や相続登記の申請手続の際に,見落とされがちなものに「公衆用道路」があります。

公衆用道路とは,不動産登記における地目(宅地とか畑とか)の分類のひとつで,不動産登記事務取扱手続準則によると,「道路法による道路であるかどうかを問わず一般交通の用に供する道路」と定義されています。

「道路法による道路」というのは,国道や市町村道,高速道路などをいいます。
これらにあたらない農道や林道なども,上記の公衆用道路の定義にあたります。

この「公衆用道路」が,相続事件においては見落とされがちなので注意が必要です。

相続事件につき受任した弁護士は,たとえば,遺産分割協議(や調停)を受任すると,まず,亡くなった方の戸籍を収集し,相続人の確定作業を行い,さらに,相続財産の調査を行います。

相続財産の調査においては,相続財産に不動産が存在することや,その所在地番が判明していれば,登記事項証明書を法務局から取得します。

しかし,名古屋に限りませんが,亡くなった方が不動産を所有されていたかどうか不明であったり,正確な地番が分からないといったことは少なくありません。

そのような場合は,亡くなった方のお住まいにある役所から,固定資産税の課税台帳(名寄帳)を取得して,亡くなった方がご生前に固定資産税の課税義務者であったかどうか,その課税物件はどのようなものであったかを確認するのが一般的です。
ここでやっと公衆用道路の話に戻るのですが,公衆用道路については,固定資産税が非課税となっており,亡くなった方のお名前で名寄帳を取得しても,そこには公衆用道路が記載されていない,ということになります。

相続事件の経験をある程度有している弁護士であれば,相談時に,判明している相続財産から公衆用道路が存在する可能性が高い場合は,先回りして確認をしてくると思われます。

しかし,そうでない場合は,公衆用道路の存在が見過ごされたまま遺産分割協議が成立してしまったり,公衆用道路の相続登記だけがされないままになってしまうということはあり得ます。

そのことからただちに大きな不利益を被るケースはなかなか想定し難いところですが,地目上公衆用道路に分類されていても,隣接する宅地などと一体となって重要な効用をもたらす不動産もあるのではないかと思います。

いずれにしても一部の相続財産についてのみ相続手続が漏れてしまうということは,あまり望ましいとはいえませんので,相続手続の際は,公衆用道路の存在にご注意ください。

家督相続の発生原因としての隠居

今日は弁護士業務の合間に,遺産分割協議の前提として,相続人確定のため戸籍を確認していました(これも弁護士業務でしょうけど)。
家督相続が出てきたので,いい機会なのでこのブログも家督相続にまつわる何かで書いてみようと思いました。
が,名古屋で何人の方に見ていただけるんだっていう内容も不適切なので,ほどよく興味を持っていただける内容で書いてみます。

家督相続とは,簡単にいうと,戦前の家制度の下で認められていた,戸主の法律上の地位を包括的に承継することです。

「家」制度ですから,家を継ぐことが第一であり,家督相続の発生原因は,戸主の死亡だけでなく,戸主がその家の統率者として適当でなくなった場合を含みます。

例えば,戸主が生前に「隠居」した場合も,家督相続が発生します。
ここでいう「隠居」とは,「縁側でのんびりお茶を飲んで暮らし始めること」とかではなく,きちんと旧民法で定められた,家督相続の発生原因としての「隠居」のことをいいます。

法律上の「隠居」とは,戸主が,その家督相続人に戸主の地位を承継させるために,自ら戸主権を放棄する単独行為をいいます。

ここで戸主権というのは,家の統率者である戸主に法律が与えた権利と義務の総称です。

明治政府の中央集権体制は,天皇を頂点として,その下に政府→府県→区長→戸長→戸主という形で編成されており,戸主というのは,この明治政府の中央統制の末端に組み入れられていました。

したがって,戸主は,「家」という組織を統制するためにものすごく大きな権限を与えられ,また義務を課されていました。これを戸主権といい,戸主の地位自体を「家督」ともいいました。

「隠居」は,このような戸主権を,戸主が生前に放棄し,家督相続人に承継させる行為をいいます。

旧民法では「隠居」には「普通隠居」と「特別隠居」がありました。
普通隠居の要件は,①満60歳以上となること及び②完全の能力を有する家督相続人が相続の単純承認をすること(旧民法752条)です。

60歳以上になって,家を統率する権利義務から解放されるということで,結局,それ以後は縁側でのんびりお茶を飲むこともできるようになるので,「そろそろワシも隠居しようかの」みたいな台詞は,内容としてあまり間違って使われてるわけではありません。

農地の競売申立て

以前,名古屋で,相続がからんで複雑な権利関係の土地について競売の申立をしたことがあるのですが,相続以外にもいろいろと問題があり,はじめて知ることも多かったため,お話しできる範囲でその時のお話をします。
 相続中心に弁護士をやっていても,なかなか不動産強制競売の手続を受任することはないのですが,この時は,いろいろな論点が複合的に絡むため,裁判所の執行係だけでなく,法務局や司法書士の先生とも相談しながら申立ての準備をすすめ,いざ申立てという段階で,また疑問が生じました。
 競売の対象となる土地が,地目としては農地となっていたのですが,現況は相続前から駐車場として使用されていたのです。
 この場合,申立ての前に転用の届出をする必要があるのか?
 いろいろ調べたのですがよく分かりませんでした。
 仮に農地のままで競売開始決定が出たとしても,そのことによって売却基準額は下がってしまうのか等いろいろ悩みましたが,悩んだときはやはり問い合わせる方が早いということで,担当の農政課に問い合わせてみました。
 結論としては,農地の競売の場合は,入札希望者が農政課に買受申出書を提出し,買受適格者になったうえで入札する,という流れだということでした。
 ということで,相続人側で競売申出前に転用届を提出するということにはならなかったのですが,相続人がいったん届を出しても,すぐに競売で落札されてまた落札者の適格性を改めて判断する手間を考えると,それでいいのかな,と思いました。

役員変更登記の添付書類

 登記申請手続の代理について
 名古屋でご相談をお受けしていると,弁護士に対しても登記申請の手続のご相談やご依頼が少なくありません。
 登記申請の代理業務は,司法書士が力を入れていますが,弁護士も普通に行っています。
 登記申請で一番多いご相談は,不動産の所有権移転登記申請だと思われますが,株式会社の役員変更など,商業登記の申請のご相談もそれに次いで多いです。
 そこで,今回は,株式会社の役員変更登記の添付書類の中で,印鑑証明書について簡単にご説明いたします。

 役員変更の登記について
 会社については,その商号,設立年月日,資本金の額,発行済株式数や役員の氏名など,第三者がその会社と取引する場合に知っておきたい基本的な事項が登記され公示されています。
 その登記事項に変更があった場合は,不動産登記の権利部の登記とは異なり,一定の期間内に登記しなければ科料の制裁があります。
 したがって,役員が退任したり新たに就任した場合には,これを登記申請する必要があります。
 これは,役員が任期満了で退任し,すぐに株主総会で再度選任されて就任承諾した場合も同様で,この場合は,その役員の重任の登記を申請することになります。

 役員変更の登記の添付書類について
 役員変更の登記には,その手続きが会社法上の定めに従って適法に行われたことや,就任した人物が実在することを証明するために,いろいろな添付書類が商業登記法などで定められています。
 その中で,分かりにくいですが重要なものとして,印鑑証明書があります。
 たとえば,取締役会設置会社において,代表取締役の選任の登記を申請する場合には,就任承諾書には,就任を承諾し,今後代表取締役となる者がその個人の実印で押印し,印鑑証明書を添付する必要があります。
 これによって,その者が実在し,自らの意思で就任を承諾したことを登記官に証明します。
 また,代表取締役を選任した取締役会議事録には,出席取締役と監査役が実印で押印し,その印鑑証明書を添付する必要があります。
 これによって,選任手続が適法に行われたことを証明します。
 これらは,代表取締役の地位の重要性から商業登記法が要求しているものといえます。
 ただし,これには例外があり,さきほど述べた重任の登記のような場合で,取締役会に従前の代表取締役であった者が出席しており,その者が,取締役会議事録に登記所への届出印で押印しているような場合は,印鑑証明書の添付は不要となります。
 以上のような細かいルールは,専門家にご相談いただく方が安心いただけると思いますので,登記申請でお悩みの際は,お気軽にご相談ください。

登記上のその人は本当に亡くなった人か?

 相続登記の申請の際に,弁護士や司法書士に相談されずにご自分で登記申請手続をしようとして,困った末に相談に来られることがよくあります。
 よくある相談としては,「現在,登記上で登記名義人として記載されている,亡くなった方の住所が,亡くなった時点の住所と異なるがどうしたらよいか」というご相談です。
 
不動産登記における,所有権移転登記申請手続きの原則
 不動産登記では,その不動産の所有者の記載については,住所と氏名で特定します。
 同姓同名の人くらいはいくらでもいるだろうけど,同姓同名で住所も同じ別人というのは考えにくいから,住所プラス氏名で人は特定できるだろう,という考えです。
 したがって,例えば,ある人から土地を買って自分のものにした人が,自分の名義に登記を変更しようとしたところ,売主だったそのある人は,登記を自分の名義にした後に引っ越していて住所が変わっていた,というような場合は,まず,売主だった人に,登記上の住所を,現在の住所に変更する旨の登記をしてもらったうえで,買主の方の名義に登記を変更する必要があります。

相続を原因とする所有権移転登記の場合は例外
 ただし,名義の変更が,相続を原因とする場合は,亡くなった人に,住所の変更をさせようと思っても,既に亡くなっている以上無理なので,亡くなった人の登記上の住所が,亡くなった方の最後の本籍と一致しない場合には,住所変更の登記をしなくても,戸籍の除附票や住民票の除票から,たしかに亡くなった方が登記上の住所から亡くなった時の住所に移動したということが分かれば,相続登記をすることができることになっています。

附票や除票は除かれてから一定期間経過すると取得できなくなる
 住民票の除票は,除票になったときから5年が経過すると消除されてしまい取得できなくなるので注意が必要です。
 戸籍の附票についても同様で,転籍などで除籍になって一定期間経過後は廃棄され,取得できなくなります。

 なお,一部の市区町村で,5年以上前の除票を保管してくれている場合もありますが,これはその市町村が特に保管してくれているだけですので,どこでも取得できるわけではありません。
 名古屋市では取得できません。

限定承認について③

 前回までで,名古屋でも最近ご相談の多い,限定承認のメリットとデメリットを簡単に確認しましたが,その中で,デメリットとして挙げさせていただいた,「手続の複雑さ」について,弁護士からするとなじみのある手続でも,あまり知られていないと思われますので,できるだけ簡潔にご説明したいと思います。

限定承認の手続①~申述から相続財産管理人の選任まで~
 まず,限定承認をするか,相続放棄をするかを選択できる期限は,原則として,相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。
 その期限までに,限定承認をする旨を申述します。
 この申述は,相続人の全員で行なわなければならない点は注意が必要です。
 つまり,数人の相続人がいる場合は,そのうちのだれか一人でも,単純承認を選択すると,限定承認はできないことになります。
 その後,家庭裁判所が相続人の中から選任した相続財産管理人によって,相続財産を清算する手続が開始されます。

限定承認の手続②~公告~
 清算手続は,相続債務の債権者と受遺者に対する公告→弁済という流れで進みます。
 公告については,限定承認をした後,原則5日以内という期間の制限がある点に注意が必要です。
 公告の内容は,債権者等に対して,相続人が限定承認した旨と,一定の期間(2ヶ月を下らない期間)内に請求の申出をすべきことです。
 また,期間内に請求の申出をしない債権者等は,弁済から除斥される旨も公告の内容とされています。
 このように,期間を区切って相続債務の債権者に申出をさせることで,相続財産のうち,弁済すべき債務の上限を早期に確定させる仕組みとなっています。

限定承認の手続③~弁済~
 その後の弁済の手続は,たとえば,相続財産のうち,不動産などのプラスの財産を競売するなどして行います。
 ここで,前回でご説明した限定承認のメリットを再度ご確認ください。
 相続財産の中に,思い入れがあって残したいものがあるような場合に,限定承認はメリットがあるというご説明をいたしました。
 競売の段階で,限定承認した相続人が,その競売の対象の財産を引き継ぎたい場合は,鑑定人が評価したその財産の価額を支払って競売手続を止めて,財産の一部または全部を引き継ぐことが認められています。
 この手続によって,限定承認者は,思い入れのある財産を手元に残すことができます。
 ただし,ここまでのご説明でお分かりのとおり,その財産の評価額にあたる金銭は手元になければならないので,そのような余力が限定承認者にある場合しかこの方法はとれません。
 競売の手続が終わった後は,債権者等に対する公告の期間が満了した後に,換価された額が,債権者等の債権額に応じて弁済されます。

まとめ
 以上のとおり,ザっと眺めただけでも,限定承認はかなり複雑な手続となります。
 また,今回は触れませんでしたが,税法上の考慮も必要になる場合があり,「プラスの財産の範囲を限度に相続する手続」という,なんとなく便利な手続に聞こえる言葉だけで限定承認を選択されると,想像と全く違ってご苦労される,ということもありえます。
 限定承認をお考えの場合は,早目に弁護士にご相談されることをお勧めします。
以上

限定承認について②

 前回は,限定承認をふくめ,相続の選択肢としては,単純承認,限定承認,相続放棄の三つがあるというお話をさせていただきました。
 今回は,他の選択肢と比較しながら,限定承認の利点や不利な点を考えてみたいと思います。

限定承認の利点について
 限定承認は,前回確認したとおり,相続人が,相続によって取得する財産のうち,プラスのものの範囲内でのみ,限定的に,なくなった方の債務を引き継ぐ,ということですから,たとえば,一方では,亡くなった方には多額の借金があり,相続財産をトータルで計算したらマイナスになってしまうが,他方で,亡くなった人がずっと住んでいた,相続人も思い入れのある建物や土地は守りたい,というような場合に,限定承認を選択するメリットがあるといえます。
 あるいは,亡くなった方に借金がどれくらいあったか分からない,多いかもしれないし少ないかもしれないが調べてみない分からない,というような場合にも,限定承認することが有効な場合があります。
 この場合は,借金がたくさんあるかもしれない以上,単純承認するわけにはいかないですし,また,相続放棄してしまった後に,意外に借金が少ないことが判明し,後から考えれば単純承認しても良かったと後悔する,ということは避けたいところです。
 以上のような場合,ひとまず限定承認をしておいて,その間に相続財産の調査を行い,借金が多ければ,プラスの財産を限度に弁済し,逆にそれほど借金が多くなければ,プラス分を引き継げばよいということになります。

限定承認の不利な点について
 限定承認は,相続放棄が,家庭裁判所に相続放棄の申述受理の申立てをすれば,あとは受理通知を待つという,割と簡素な手続であったり,単純承認が,特に特別な手続をしなければ原則として単純承認となることと比べると,実に複雑な手続となります。
 この点が,限定承認のデメリットといえ,多くの名古屋での弁護士に対するご相談者様が,最終的に限定承認を選択される数が少ない理由となります。
 その,限定承認のデメリットともいいうる,複雑な手続について,次回以降で概要をお話ししたいと思います。
以上

限定承認について①

最近,限定承認についてのご相談が多い
 最近,名古屋等でご相談をお受けしていると,以前より「限定承認できるか相談したい」とおっしゃる方が多くなった気がします。
 ひょっとしてテレビか雑誌で,限定承認についての特集でもされたんでしょうか。
 それくらい,最近ご相談が多いです。
 ただ,実際の限定承認の手続についてご説明を差し上げると,割と想像されていたような手続と違うと感じられる方が多いようで,積極的に利用したい,ということで実際に弁護士にご依頼される段階まで進まれる方はほとんどいらっしゃいません。
 これは,限定承認自体が,民法の規定を読んでもなかなか分かりづらいことや,税金の点で考慮しなければならない点もあったりすることが原因ではないかと思います。
 そこで,限定承認についていろいろと書いてみたいと思いますので,ご参考にしていただければと思います。

相続における三つの選択肢
 限定承認というのは,相続をする際の選択肢のひとつです。
 「限定」承認というくらいですから,限定しない単純な承認もあるはずで,それらの他の選択肢と比較することで,限定承認がどのような手続かイメージす安くなると思います。
 まず,相続というのは,亡くなった方の亡くなった時点での財産(相続財産)を,相続人が,包括的に引き継ぐことです。
 選択肢としては,上で少し触れた「単純承認」,「限定承認」と,「相続放棄」の三つがあります。

 単純承認とは,その名のとおり,相続財産の全てを,相続人が無限定に引き継ぐことです。
 つまり,単純承認を選択した相続人は,仮に亡くなった方に,プラスの財産を超える借金があって,相続財産がトータルでマイナスになるような場合も,全ての借金を引き継ぐことになります。
 逆に,相続放棄は,すべての相続財産の引き継ぎをしないことです。
 この場合は,亡くなった方の借金を支払う必要はなくなる代わりに,プラスの財産も一切引き継げなくなります。
 限定承認は,相続人が,相続によって取得する財産のうち,プラスのものの範囲内でのみ,限定的に,なくなった方の債務を引き継ぐ,ということです。
 次回は,他の選択肢との比較で,限定承認の利点と不利な点を考えてみます。
以上

2種類の慰謝料請求権

 配偶者の不貞行為を原因として離婚する際,離婚訴訟と同時に,または離婚後に配偶者に対して慰謝料を請求することがあります。
 
 この不貞行為を原因とする離婚の慰謝料請求については2種類あって,ひとつは,離婚の原因となる不貞行為など,個々の有責行為に対する慰謝料請求と,もうひとつは,そのような有責行為を原因として離婚を余儀なくされたという,離婚そのものに対する慰謝料請求です。
 
 いずれもその性質は,不法行為に基づく損害賠償請求であり,民法709条などが根拠となります。

 この2種類の慰謝料請求は,離婚訴訟と同時に請求する場合には,通常あまり区別されることがありません。
 
 ただ,離婚後にしばらく経ってから慰謝料請求のみを行うような場合には,2つの区別が問題となる場合があります。
 上で述べたとおり,これら2種類の慰謝料請求権は,いずれも不法行為に基づく損害賠償請求権です。
 改正後の民法第724条(改正前も内容は同じ)では,以下のように規定されています。
 
「不法行為による損害賠償の請求権は,次に掲げる場合には,時効によって消滅する。
  一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。」
 
 つまり,2つの慰謝料請求における「損害」が異なれば,請求権が時効によって消滅するときが異なることになり得るわけです。
 
 この違いが現実に問題になるような案件は弁護士をやっていても,そんなにありませんが,ご相談自体は,名古屋でも割とあります。

 この点について,最高裁昭和46年7月23日判決は,配偶者の虐待等を理由とする離婚にともなう慰謝料請求のケースでしたが,離婚そのものに対する慰謝料請求については,「・・・有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその損害のは,離婚が成立してはじめて評価されるものであるから,個別の違法行為がありまたは婚姻関係が客観的に破綻したとしても,離婚の成否がいまだ確定しない間であるのに右の損害を知り得たものとすることは相当でなく,相手方が有責と判断されて離婚を命ずる判決が確定するなど,離婚が成立したときにはじめて,離婚に至らしめた相手方の行為が不法行為であることを知り,かつ,損害の発生を確実に知ったこととなるものと解するのが相当である。」と判断し,個別の有責行為による損害発生時からではなく,離婚判決の確定時から3年は,損害賠償請求権は時効によって消滅はしないとしました。

 上記判例は,離婚が訴訟で争われ,配偶者の虐待等が,訴訟によって有責行為と判断される必要があったケースですが,それでは,例えば,配偶者の不貞行為が発覚し,その後,不貞行為に対する慰謝料請求権は時効により消滅してしまったといえるような時期になって離婚した,というようなケースで,離婚にともなう慰謝料請求は認められるのでしょうか。

 このようなケースについて,下級審ではありますが,上記3の最高裁判決を引用して,離婚から3年は慰謝料請求ができる,と判断した裁判例があります。
 
 不貞行為自体はずいぶん前に終了していて,離婚の時期がずっと後になった場合でも,離婚そのものの慰謝料請求であれば認められる,というのは,なんとなく変な感じがします。
 
 離婚の原因が不貞行為であって,その関連が強ければ強いほど,不貞行為そのものによる損害の発生と,離婚による損害の発生は重なるような気がします。
 
 事案ごとに慎重に判断しなければならないところだと思います。

印紙代はいくらか?

 訴状に貼る収入印紙の金額は,訴額によって決まります。

 そして,訴額をいくらと計算するかについては,法律があるわけではなく,「訴訟物の価額の算定基準について(昭和31年12月12日民事甲第412号高等裁 判所長官、地方裁判所長あて民事局長通知)」という,もともと裁判所内部で,各裁判所における受付事務取扱の参考資料として作成されたものに概ね従っています。

 この訴額の中には,例えば,共有物分割請求訴訟を提起するとすると,「分割前の目的物に対して原告が有する共有持分の価額の3分の1」などという形で,特に,不動産関連の訴訟では,割り算の結果を訴額とする基準が示されているものが結構あります。
 そして,目的物の価額は,不動産については,固定資産税評価額が基準となります。

 そこで,たまに悩むのが,「割り切れないときに訴額はいくらと決めればよいのか?」です。

 例えば,割り算した結果が,219万9999円99銭,だったとします。
 このとき,小数点以下を切り捨ててよいなら,訴額は219万9999円となり,この場合の印紙代は,1万5000円となります。
 仮に,小数点以下を切り上げ,または四捨五入しなければならないとすると,訴額は220万円となり,印紙代は1万6000円となります。

 この差は,訴額が大きくなればなるほど大きくなるといえるので,馬鹿にできない問題です。

 先に触れたとおり,特に訴額の計算について法律で定められているわけではないので,小数点以下の扱いについても,はっきり決まっているわけではありません。
 ただ,他の法律で,端数計算について参考になるものがありました。

 「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」第3条は,債務の支払金の端数計算について,以下のように規定しています。
 「債務の弁済を現金の支払により行う場合において,その支払うべき金額(数個の債務の弁済を同時に現金の支払により行う場合においては,その支払うべき金額の合計額)に50銭未満の端数があるとき,又はその支払うべき金額の全額が50銭未満であるときは,その端数金額又は支払うべき金額の全額を切り捨てて計算するものとし,その支払うべき金額にも50銭以上1円未満の端数があるとき,又はその支払うべき金額の全額が50銭以上1円未満であるときは,その端数金額又は支払うべき金額の全額を1円として計算するものとする。ただし,特約がある場合には,この限りでない。」
 つまり,債務の支払金の計算においては,割り算した後の金額の小数点以下を四捨五入する,ということになります。

 この規定を類推すると,訴額の計算においても小数点以下は四捨五入,ということにはなりそうです。

 というわけで,私は名古屋では四捨五入するようにしていますが,他の弁護士がどうされているかはよく分かりません。

登記申請手続の代理人

別に隠してたわけではないんですけど,実は私,司法書士の資格も持ってまして,最近司法書士会のお仕事もたまに手伝わせていただいています。

その中には,非司調査というものがありまして,要するに,「司法書士の資格のない人が,業として,登記申請手続の代理をやってないか調査する」というものです。

簡単にいうと,登記申請手続の代理業務を,対価をいただいて反復して行うことができるのは,基本的には司法書士だけなので(弁護士とか,会社設立登記における公認会計士など,他の法律で認められている場合は除きます),例えば,行政書士や税理士が,会社関係の登記申請を対価をいただいて行っている,ということになると,ちょっと待ってくださいよ~,ということになります。

調査の内容については守秘義務がありますので具体的にはいえないですけど,そもそもこのような調査を継続的に行なわなければならない状態であるということは,やっぱり行政書士の方や税理士の方による,(あくまで司法書士側から見て,ですが)疑わしい申請というのが一定程度ある,ということだと思います。

しかしこれはなかなか難しい問題で,ギリギリセーフ(アウト?)っぽいものも結構あるでしょうし,そもそも,司法書士会的には非司行為と認定する事例でも,行政書士の側では業務範囲内です,というものもあるかもしれません。

これは,実は弁護士業界と司法書士業界の間でもあるお話しで,弁護士の業界からすると,司法書士の業務が「非弁行為」(弁護士じゃなければすることができない業務を司法書士がやっている)にあたる,ということで問題視することがあります。

有名なところだと,過払金請求訴訟について,どの範囲までなら司法書士が受任できるか,という問題は,結構長い間,弁護士の業界と司法書士の業界とで見解が対立していて,裁判所の判断が出るまでは司法書士側は受任するべきかどうか頭を悩ませることが少なくありませんでした。

なにが言いたいかというと,これらの問題って,それぞれの資格ごとに,自分達の資格を守りたいと思って対立してるけど,そういうのって相談する方々からすると迷惑以外の何物でもないってことです。

だって,うまくいけば過払金が出るかもしれないけど,とにかく借金で困ってる方が,司法書士のところに相談に行ったら,「あ~金額的にウチでは受けられませんね,弁護士に相談に行ってください」と追い返されたり,もっとひどい時だと,いったん司法書士に依頼したのに,「ちゃんと計算してみたらウチでは受けられないので」って言われて弁護士にまわされて時間がかかる,とか,そういうことになってしまうということですから。

登記申請でも,これについては公認会計士に頼んでもOKだけど,あれについては司法書士でないとダメ,となるわけで,そのリスクとか,それぞれの専門家の業務範囲について正確な知識を持たなくてはならない負担を依頼する人に負わせるというのはどうなんだろうな,と思います。

結局私は,司法書士の登録もしている以上は,「だから最初から登記申請は司法書士に依頼してくださいね」って書くのが正解なんでしょうね。

債権法改正 請負

1 請負契約の変更点
  今回は,債権法の変更(やっぱり弁護士なので「改正」とは書きたくない。)のうち,請負契約について書きます。
  請負をはじめとした有償契約については,売買の規定を準用することになっており(この点については変更なし。第559条),請負人の責任については,債務不履行一般の原則規定が適用されることになります。
  従来の瑕疵担保責任(変更後の契約不適合責任)についても,売買契約の規定が準用されることになるため,現行民法の,請負契約特有の瑕疵担保責任の規定は大幅に削除されることになります。
  また,仕事が完成せずに終了した場合の報酬請求に関する規定として,第634条が新設され,最判昭和56年2月17日などの判例法理が明文化されました。
  以下,瑕疵担保責任から順に変更点をみてみます。
2 担保責任について
  現行民法の第634条が削除され,追完請求等は,売買に関する第562条等が準用されることになりました。
  現行民法の第635条も削除され,契約の解除は第541条及び542条の規定に従うことになりました。
  これによって,例えば,仕事の目的物が建物であったとしても,重大な瑕疵があり,契約の目的を達することができず,追完もできないような場合は,請負契約を解除できることになりました。
  さらに,現行民法第638条も削除され,建物の担保責任が引渡しから5年間存続したり,石造等の工作物については10年存続する,という規定がなくなりました。
  その代わりに,変更後の第637条によって,担保責任の期間制限が,現行法の,引渡しから1年以内の請求(または解除)を要するとの規定から,注文者が契約の不適合を知ってから1年以内の通知を要するとの規定に改められました。
3 中途終了の場合の報酬請求権について
  新設の第634条で,請負人が既にした仕事の結果が可分で,仕事完成が不能になった事由が注文者の責に帰することができない事由である場合や,仕事完成前に解除されたような場合は,可分な部分の給付で注文者が利益を受けるときは,その部分を完成とみなすと規定されました。
  これも,最判昭和56年2月17日で確認された判例法理の明文化です。
  この場合に,請負人の債務不履行があるような場合は,別途債務不履行の問題が生じますが,報酬請求権は発生することになります。
  また,注文者の責に帰するべき事由によって仕事完成が不能になった場合には,請負人は報酬の全額が請求できるという最判昭和52年2月22日が維持されると解されています。
  請負については以上です。

債権法改正 賃貸借④

1 賃貸人の地位の留保
  前回に続いて,債権法変更(「改正」とはやっぱり言いたくない。弁護士なので)のうち,賃貸借契約の規定を確認します。
  前回,変更後の第605条の2のうち,2項以外の,賃貸人の地位の移転に関しての規定を確認しました。
  今回は,2項の,賃貸人の地位の留保について確認します。
  前回確認したように,賃貸借の目的物件の所有権が移転する場合は,賃借人が賃借権について対抗要件を備えていれば,賃貸人の地位が当然に移転するのが原則です。
  ただし,2項により,不動産の譲渡人と譲受人が,賃貸人の地位を譲渡人にそのまま留めておく旨の合意をしたときは,賃貸人の地位は,譲受人には移転しないことになります。
  ここは,最判平成11年3月25日で否定された結論と逆の内容が明文化されています。
  条文で規定されているのはここまでです。
  賃貸人の地位が留保された結果,賃貸目的物の新所有者である譲受人が,賃貸人の地位を留保した譲渡人に対して賃貸目的物を賃貸し,譲渡人が賃借人に対してさらに目的物を賃貸するという,転貸借の関係が成立することになります。
  そこで,転貸借関係を規律する変更後の民法第613条が,この場合にも適用されるのかが問題となります。
  第613条3項本文は次のような規定です。
  「賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には,賃貸人は,賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。」
  一応,賃貸人の地位の留保によって生じた転貸借関係の転借人については,その地位は第605条の2第3項などで保護されているので,この第613条3項の適用は否定される,というのが有力説のようですが,結論としては,「今後の解釈に委ねる」とのことらしいです。
  なぜこういう風に変更されたのかもよく分からないんですが,どうせ民法をここまでいじくるなら,この辺についてもちゃんと定めておいてもらえればいいんですけども,もう施行時期まであと少しなので,まあどちらでもいいです。
2 合意による賃貸人の地位の移転
  今までは,賃貸目的物の所有権の移転により,当然に賃貸人の地位が移転するという,民法605条の2の規定を確認しましたが,民法の変更により,賃借人が賃借権の対抗要件を備えていないような場合にも,賃貸人の地位の移転は,合意によっても行うことができることが明文化されました。
  この部分は,最判昭和46年4月23日で確認された判例法理の明文化です。
  この辺で,賃貸借についての確認は終わります。

債権法改正 賃貸借③

1 判例法理の明文化とやらについて
  今回は,債権法の変更(やっぱり「改正」とは絶対に書きたくない)のうち,賃貸借の規定で,「判例法理の明文化」といわれる規定について引き続き確認していきます。
  前回も書きましたが,今回触れる,賃貸人の地位の移転についての判例は,弁護士にとっては条文で規定されているのと同じくらい有名な判例法理ではありますが,せっかく法律を変更するのであれば,条文で規定してもらっても別に構いません。ただ,今までの判例で確立された部分については条文にしたけど,結局判例でも明らかになっていない部分は今後の解釈に委ねる,という形になっているので,どうせならその部分も条文にしてもらって良かったんですけどね,とは思います。
  愚痴はともかく,賃貸人の地位の移転についての変更後の民法の規定について確認します。
2 賃貸人の地位の移転
  新設の第605条の2の1項では,賃借人が賃貸借についての対抗要件(賃借権の登記など)を備えているときに,賃貸物件について所有権の移転(いわゆるオーナーチェンジ)があったら,賃貸人の地位も,賃貸物件の新所有者に移転する,ということが規定されました。
  大判大正10年5月30日,最判昭和39年8月28日などの判例法理を明文化したものです。
  賃貸人の地位を移転させる,というのは,契約上の地位の移転ですから,もしこの規定がなければ,変更後の民法においては,本来であれば,第539条の2が規定するように,契約上の地位を譲渡する者,譲り受ける者,契約当事者の一方の三者で合意しなければならないところですが,賃貸人の貸す債務というのは,誰が履行してもあまり変わりがないので新所有者に履行させればよいという判断で,賃貸借の場合には,目的物の所有権移転によって当然に賃貸人の地位が移転する(賃借人の承諾が不要)ということになっています。
  そして,同条2項をいったんとばして第3項では,賃貸人の地位の移転を賃借人に対抗するには,目的物件の所有権の移転の登記が必要であるという,最判昭和49年3月19日で確認された判例法理が明文化されています。
  地位の移転に際しては賃借人の承諾は不要といっても,賃借人も,いつからだれに賃料を支払えばよいか分からなくなっては困るので,新賃貸人が賃借人に賃料を請求するような場合は,賃借人が認めるのでなければ,自分に所有権が移転したことを登記で客観的に分かるようにしておかなればならないという規定です。
  そして,同条4項では,費用償還請求権や敷金返還請求権も新賃貸人に引き継がれるという,最判昭和46年2月19日,最判昭和44年7月17日の法理が明文化されています。
  次回は,今回とばした3項と,第605条の3を確認します。

債権法改正 賃貸借②

1 賃貸借についての変更の概要
  前回から民法の債権法の変更(「改正」とは意地でも言わない)について書いてますが,今回は,まず,どのような変更があったのか,ザっとみてみます。
  まず,弁護士にはなじみのある,現行民法下での判例理論を明文化した規定といえるのは,第616条の2(賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了),第605条(不動産賃貸借の対抗力),第605条の2(不動産の賃貸人たる地位の移転)第605条の3(合意による不動産の賃貸人たる地位の移転),第605条の4(不動産の賃貸人による妨害の停止の請求等),第613条(転貸の効果)3項,第616条の2(賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了),第621条(賃借人の原状回復義務),第622条の2(第4款 敷金)といったあたりです。
  次に,第606条(賃貸人による修繕等)の1項で規定される賃貸人の修繕義務の範囲や,第611条(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)で規定される賃料減額につき,請求を待たず当然に減額されるとの変更,第602条(短期賃貸借)の規定からの「処分につき行為能力の制限を受けた者」の部分の削除など,従来から当然と思われていたことを確認する変更や,従来不合理と思われていた規定の削除・変更などがあります。
  また,賃貸借の存続期間の上限については,現行民法の20年から,50年に変更されました(第604条)。
  従来から,建物所有目的の土地賃貸借契約においては,借地借家法で20年を超える期間を存続期間とすることが認められていましたが,重機やプラントなど,借地借家法が適用されない場面で長期の賃貸借の必要があるということで,今回変更されることになりました。
  というわけで,以下,「判例法理が明確化された」といわれる規定についてみていきます。
2 変更後民法第616条の2について
  まず簡単なところからいくと,変更後の民法第616条の2は,賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了について規定しています。
  現行民法では,賃貸借の目的物の全部が滅失した場合に,賃貸借契約自体がどうなるのか,明文の規定が存在しませんでした。
  立法担当者は,当然終了するもので条文で規定するまでもないと考えたのでしょうか。
  それでもやっぱり規定がないと争いにはなるわけで,判例(最判昭和42年6月22日,最判昭和32年12月3日)で確認されたとおりの条文が今回新設されました。
  次回は,その他の判例法理の明文化といわれる規定を確認していきます。

債権法改正 賃貸借①

1 債権法改正について
  最近は相続法改正の方が話題に上ることが多くなりましたが,いよいよ来年の4月1日から(一部を除き)民法の債権法に関する改正法が施行されます。
  大部分が現行民法の下での裁判実務の運用や,判例を明文化したものだ,みたいに言われることもありますが,結構いろいろな部分が改正(かどうかは良く分か
りませんけど変更)されています。
  過失責任から契約責任に全体の発想が変更されていたり,なかなか変更に対応するのは大変なので,自分のためにもこれから何回か,債権法改正について書いて
みたいと思います。
  民法が使いこなせない弁護士というのはあり得ないので,改正か改悪かはよく分かりませんが,変更に対応しないという選択肢はありません。
  とにかく変更点を確認していきたいと思います。
  変更部分は多岐にわたるので,とにかく自分が注目したところからランダムに触れてみたいと思います。
  まずは,賃貸借契約から見ていきたいと思います。
2 賃貸借契約について
  改正民法では,賃貸借は債権各論のうち第7節からスタートします。
  条文でいうと第601条からです。
  変更があった条文は,細かい表現の変更も含めると,第601条(賃貸借),第602条(短期賃貸借),第604条(賃貸借の存続期間),第605条(不動
 産賃貸借の対抗力),第606条(賃貸人による修繕等),第609条(減収による賃料の減額請求),第611条(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等),
 第613条(転貸の効果),第616条(賃借人による使用及び収益),第619条(賃貸借の更新の推定等),第620条(賃貸借の解除の効力),第622条(使用貸借の規定の準用)です。
  新設された条文は,第605条の2(不動産の賃貸人たる地位の移転),第605条の3(合意による不動産の賃貸人たる地位の移転),第605条の4(不動
 産の賃借人による妨害の停止の請求等),第607条の2(賃借人による修繕),第616条の2(賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了),第621条(賃借
 人の原状回復義務),第622条の2(第4款 敷金)です。
  要するに,賃貸借の規定のほとんどが,なんらかの形で変更されており,また,かなりの数の新設条文が存在します。
  しかし,賃貸借に関しては,現行民法から大きく様変わりしたわけではなく,判例の解釈が明文化されたものや,債権法の他の部分の変更に合わせて変更になっ
 た部分がかなりあります。
  次回以降で,賃貸借契約についての変更点を簡単にみてみたいと思います。

二次相続

二次相続とは
二次相続とは,父と母と子の家族で,父が最初に亡くなって,父の遺産を母と子が相続(一時相続)した後に,母がなくなって母の遺産を子が相続する,という場合の,二回目の相続のことをいいます。
このような二次相続が発生するケースにおいては,特に相続税の申告・納付の場面で,一次相続のみで納税額が少なくなることのみを考えて相続したことで,二次相続まで含めたトータルの納税額において,結果的に納税額が多額になってしまうような事態が起こり得ます。
そこで,二次相続まで踏まえた相続対策が必要になります。

配偶者の税額軽減の制度を一次相続で利用する場合の注意点
上記のように,父が死亡して一次相続が発生する場合,配偶者である母については,相続税の申告の際に,配偶者の税額軽減の制度を活用することが考えられます。
配偶者の税額軽減の制度を利用すると,配偶者(上記の例における母)については,相続税の課税価格が法定相続分を下回る場合には相続税は課税されず,また,課税価格が法定相続分を上回る場合でも,その額が1億6000万円以下の場合には相続税が課税されないことになります。
ただし,一次相続において配偶者の税額軽減制度を目一杯活用して相続税を少なくしても,二次相続で多額の相続税を納付することになると,結果として節税の効果が発揮されないこととなってしまいます。
このような事態が生じる要因としては,相続税の申告における基礎控除の額が,「3000万円+600万円×法定相続人の人数」という算定によってきまるため,法定相続人の人数が減る二次相続において相続税額が高くなることや,一次相続から二次相続までの間に財産の価値が上昇してしまい,結果として課税価格が高くなってしまうこと等があげられます。
したがって,一次相続の段階から他の特例の適用も考慮に入れて,二次相続が発生した場合を想定した納税額の試算を何通りかしてみたり,一次相続において,将来値上がりが予想される財産は子が取得するといった相続対策をすることが必要になってきます。

まとめ
上記のような納税額の試算や相続対策は,やはり税の専門家である税理士の関与は欠かせないでしょう。
また,これらの相続対策を実現するために,それぞれの相続の際に生じうる法律的な問題を検討したり,実際の相続の際の相続手続きを円滑に進めるには,弁護士の関与も不可欠です。
したがって,二次相続対策を行う場合は,通常の相続手続き以上に,弁護士と税理士の連携がとれている必要があります。
弁護士法人心では,グループ内の税理士法人と連携することで,相続手続きをトータルにサポートさせていただいておりますので,二次相続を踏まえた相続対策についてもまとめてご相談にのらせていただくことが可能です。

遺言書に条件をつける

負担付遺贈と条件付遺贈
遺言者が,遺言によって財産を譲り受ける受遺者に対して,財産を譲る代わりに一定の法的義務を負担させる内容の遺言を,負担付遺贈の遺言といいます。
受遺者は,遺贈の目的の価値を超えない限度においてのみ,負担した義務を履行しなければならないとされています(民法第1002条1号項)。
また,受遺者が負担を履行しない場合,相続人または遺言執行者は,相当の期間を定めて履行を催告することができ,それでも履行がないときは,家庭裁判所に遺言の取り消しを請求できます(民法第1027条,第1015条)。
ここでいう「負担」とは,法律上の義務をいい,法律上強制できないもの(財産を譲る代わりに甲さんと結婚しろ,といった内容)や,受遺者の意思に左右されない事項(乙さんに財産を譲る代わりに選挙で当選すること,といった内容)は「負担」にはあたらず,「条件」であるとされています。
「負担」が「条件」かは,その条項が「負担」であると解された場合は,負担の履行・不履行が遺贈の効力に直接影響するわけではないが,「条件」と解された場合には,条件の成就が遺贈の効力に影響するという差異があるため,「負担」か「条件」かの判断は当事者にとっては重要ですが,その判断の基準は,遺言者の意思解釈によるとするのが多数説です。
この多数説の中には,遺言者の意思が明確でない場合は,遺言の効力の早期確定のために,「負担」と解するべきであるという見解や,受遺者に義務を課することが妥当かどうかという見地から判断するべきとの見解があります。
「妻の面倒を見ること」は「負担」か「条件」か
妻の面倒を見ることを条件に財産を譲る内容の遺言を作成することはできますが,問題は,「妻の面倒を見ること」が「負担」か「条件」か,です。
この点,上記見解のうち,受遺者に義務を課することが妥当かどうかという見地から判断するべきとの見解からすると,受贈者に義務として妻の面倒を見ることを強制することは妥当でないから,負担でなく条件付きの遺贈であると解される可能性があります。
この条項が「条件」であるとすると,条件が成就しなければ遺贈自体が無効となります。
また,仮に「負担」と解されたとしても,遺贈の価額と釣り合う範囲での「妻の面倒を見る」というのがどの程度の行為なのかは解釈が難しいところです。
つまり,妻の面倒を見ることを条件に財産を譲る内容の遺言は,作ること自体はできるが,その解釈が難しく,仮に受遺者が妻の面倒を見ない場合には,「もめる」可能性のある遺言であるといえます。
このような遺言書を作成する場合は,事前に受遺者との話し合いが必要です。
弁護士などの専門家にご相談して作成するかどうか,作成するとしてどのような文言にするかを決めることを強くお勧めします。

遺言書の付言事項

遺言書の内容は原則として遺言書作成者の自由
遺言書は,例えば自筆証書遺言であれば,その全文と日付,氏名を遺言者が自署し,押印するなどの法律で要求される形式的用件を満たせば,その内容については原則として遺言者の自由であり,複数の相続人に対して,法定相続分と異なる財産を取得させる内容の遺言書を作成することも,また,遺留分の問題を置けば,一人の相続人に対して全ての財産を取得させる内容の遺言書を作成することもできます。
そのように自己の財産を死後に相続人等に分配したいというのが遺言者の意思であるなら,それを尊重するべきであるというのが民法の考え方であり,遺言者がそのように財産を分配したいと考える理由の記載は,法律上要求されていません。
遺留分に配慮してもトラブルは起き得る
しかし,上記のように,法定相続分と異なる内容の遺言書が存在する場合,遺された相続人のうち,法定相続分よりも少ない財産しか取得できない相続人は,どのように感じるでしょうか。
例えば,Aさんは既にご主人に先立たれた女性で,相続人は長男のBさんと二男のCさんの二人であるとします。
長男のBさんは,Aさんが亡くなるまでの数年間,入院していたAさんの看病を熱心にしていたのに対して,二男のCさんは自分も健康状態がすぐれず,遠隔地に住んでいたこともあり,あまりAさんのお見舞いにも行けなかったことから,Aさんは,よく面倒をみてくれたBさんに多くの財産を残すことを決め,「自分の全財産の4分の3をBに相続させ,4分の1をCに相続させる。」という内容の遺言書を作成し,死亡しました。
この場合,遺言書の内容自体は,遺留分にも配慮されており,法律的には特に問題ないものです。
しかし,Cさんとしては,自分があまりお見舞いに行けない事情は母であるAさんも理解してくれていたはずであり,遺言書の内容を見ても納得はできないこともあるでしょう。
そうすると,「母がこんな内容の遺言書を書くわけがない!」と考えたCさんによって,場合によっては遺言無効確認請求の訴訟が提起されるなど,Aさんの死後に,BさんとCさんの間で紛争が生じることもあり得ます。
付言事項を活用してトラブルを回避する
このような事態を防ぐために,遺言書の「付言事項」を活用することが考えられます。
遺言書には,法律的には効果はないものの,遺言者がこのような遺言書を作成した経緯や遺された人々へのメッセージなどを記載することができます。
法律上の効果が発生する遺言書の本体に付言するということで「付言事項」と呼ばれています。
この付言事項部分で,例えば上記の例であれば,よく看病をしてくれたBさんに対して感謝し,またCさんにも一定の配慮をしたこと等を記載し,遺言書の趣旨を理解してもらうようにするのです。
実際,名古屋で遺言書をめぐる紛争をたくさん見ていると,付言事項等で,少しでも遺言者の気持ちを書きのこしてもらえればと思う件は少なくありません。
遺言書作成にあたっては,ぜひ付言事項を活用して,トラブルにならない遺言書を作成するようにしてください。
ただし,遺言書の作成にあたって,付言事項を記載することを勧めるかどうかは,弁護士や公証人によっても異なりますので,遺言書の作成について相談される場合は,「付言事項としてこういうことも入れてもらいたい」とご提案されることをお勧めします。

相続で不動産を取得した場合の名義変更について

不動産の名義変更とは
不動産の名義変更とは,不動産登記簿の権利部の甲区に記録される,不動産の所有者を子などの相続人に変更することをいいます。
不動産の所有権自体は,親が亡くなり,相続が発生した時点で相続人の共有となり,その後,遺産分割協議等によって相続人の間での持分が決まると,その取り決めどおりに移転することになりますが,これを登記しなければ,当事者以外の第三者に対して,権利の移転を主張できない(対抗できない)ため,相続人がさらに不動産を売却したり,不動産に抵当権を設定することが難しくなります。
したがって,親の不動産を相続によって取得した場合は,速やかに不動産の名義変更を行う必要があります。

亡くなった親の不動産の名義変更に必要な書類

親の不動産の名義変更に必要な書類には,①相続による所有権の移転登記申請に必ず必要な書類と,②相続にともない,遺産分割や相続放棄がされたなど,法定相続分と異なる所有権(持分)移転登記申請をする場合に,それぞれのケースごとに必要となる書類があります。
①の書類としては,まず,「相続を証する市区町村長その他の公務員が職務上作成した情報」が必要になります。
代表的なものは,戸籍謄本です。
戸籍謄本には,親の死亡の年月日が記載され,また配偶者,子,直系尊属等,亡くなった親の相続関係(身分関係)が記載されています。
実際には,親の死亡時の戸籍のみでなく,親の出生時から現在までの戸籍(除籍)の謄本が必要になる場合が多いので,親の戸籍の収集は,弁護士や司法書士などの専門家に依頼しなければ困難であったり手間がかかる場合が多いです。
また,戸籍に記載された親の本籍と,登記簿上の親の住所が異なるときは,親の住民票の除票の写しを,同一性の確認のため提出することが必要になります。
さらに,名義を変更する相続人の住民票の提出も必要です。
②の書類としては,例えば,遺言書によって法定相続分と異なる相続分が指定された場合は,遺言書の提出が必要となります。
遺言書が自筆証書遺言である場合は,検認手続がされたことの証明も必要です。
また,遺産分割協議がされた場合は,登記申請をする相続人以外の相続人全員の実印での押印がされた遺産分割協議書と,押印した相続人の印鑑証明書の提出が必要となります。

亡くなった親の不動産の名義変更の手続き
名義変更,すなわち相続を原因とする所有権の移転登記の申請をするには,登記申請書と上記2の添付書類とを,法務局の登記所に提出する必要があります(オンラインでの申請も可能です)。
申請に際しては,民法や不動産登記法などの諸法令や,実際のケースごとに登記所がどのような運用を行っているかの正確な知識が必要になりますので,弁護士や司法司法書士に依頼して名義変更されることをお勧めします。