リツイートで著作権侵害?

8月に入りましたが,名古屋は暑さの厳しい季節が続いております。普段は裁判所に行くために外を少し歩くくらいしかしませんが,熱中症になるのではないかと思うくらいの暑さに参ってしまいますが,水分補給を適切に行い,熱中症にならないよう注意したいところです。

さて,7月21日に興味深い判決が出されましたので,少し触れたいと思います。

ある写真家が自身のホームページ上に掲載していた写真を,第三者が無断でツイッターに投稿(ツイート)し,別のアカウントがそのツイートをリツイート(自身のアカウントをフォローしている人に拡散すること)した際に,写真上に記載されていた写真家の名前が切り取られて表示されてしまったため,その写真家がツイッター社を相手取り,リツイートにより著作権侵害をされたとしてリツイートをしたアカウントの情報開示を求めた,という事案でした。

最高裁は,リツイートされた写真をクリックしなければ写真家の名前は表示されないことなどから,リツイートによる著作権侵害を認め,ツイッター社にリツイートをしたアカウントの情報開示を命じた二審の判断が確定しました。

なお,林裁判官は,リツイートをする際に元の写真の一部が切り取られてしまうのはツイッターの仕様であって,リツイートをしようとする者が変更を加えることができない点を指摘し,著作権を侵害したのはもともとのツイートをした者だけであるとの反対意見を述べました。また,本件でリツイートによる著作権侵害を認めると,画像をリツイートする際にリツイートをしようとする者は著作者の同意があるかなどを確認しなければならず,利用者にとって負担が重いという意見も述べています。

ツイッターを含むSNSが重要なコミュニケーションツールとして広まっておりますが,その反面,無意識のうちに誰かの権利を侵害してしまうことのないよう注意しなければなりませんね。

自己破産によくある誤解②

今回は,前回の続きで,弁護士に自己破産の相談をされる方の中でよくある誤解について説明します。

①自己破産をすると家族に迷惑がかかるの?

自己破産の相談をされる方の中には,配偶者や親,兄弟,子供への影響として,自分が自己破産をしたら家族に請求が行くのではないか,家族も信用情報に傷がついてしまうのではないかと心配される方がいらっしゃいます。

家族が借金の(連帯)保証人等になっていない限り,借金の返済義務を負っているのは個人だけですから,自己破産をしたとしても家族がその支払い義務を負うことはありませんので,家族に請求が行ったり,信用情報に傷がつくということもありません。

②自己破産をすると,一生ローンを組めないの?

自己破産をすると,信用情報センター(CIC,JICC,全国銀行協会の3つがあります。)に自己破産をした旨の情報が載ります。

そして,その情報は5年~10年間載ってしまい,その期間はローンを組んだり,借入れやクレジットカードの発行も難しくなりますが,その期間が過ぎれば再びローンを組むこともできるようになります(なお,その時の収入,生活状況等によって審査が通らない場合はありますが)。

このように,自己破産について誤った認識を持たれている方は多く,その誤解によって自己破産の手続きを取ることを躊躇していたが,相談によって誤解が解けたため,安心して手続きに進むことができたという方は多くいらっしゃいます。

自己破産について悩まれている方は,弁護士にご相談ください。

また,当法人は近鉄四日市駅の近くに,【弁護士法人心四日市法律事務所】をオープンいたしました。

四日市で弁護士をお探しの方は,弁護士法人心四日市法律事務所までお気軽にご連絡ください。

自己破産によくある誤解

新型コロナウイルスの感染拡大が少しずつ収束に向かっており,愛知県でも緊急事態宣言が解除されました。

名古屋駅でも新型コロナウイルス流行前と同じとまでは言えないですが,緊急事態宣言時よりは人が増えてきた印象です。ただ,第2波,第3波の危険性がありますので,油断せずにマスクの着用,手洗い,消毒等を徹底していきたいと思います。

さて,自己破産の相談をお受けするときに,よくある誤解について紹介します。

①自己破産をすると財産を全部取られてしまうの?

自己破産をしても,例えば,衣服,食料,家財道具は生活に必要な物として残すことができますし,名古屋地裁の運用では,預貯金,自動車,生命保険の解約返戻金,敷金,電話加入権,退職金(原則として支給金額の8分の1)について,評価額が20万円以下であれば残すことができます。もっとも,財産の合計金額が99万円を超える場合には,財産が処分されてしまい,債権者に分配されてしまう可能性があります。

このように,自己破産をしてもすべての財産を取られるわけではなく,一定金額以下のものは残すことができます。

②自己破産をするとパスポートが取れなくなるの?

自己破産をしてもパスポートの申請が通らなくなることはありません。もっとも,自己破産手続き中(特に管財事件)の場合には海外渡航をする際には裁判所の許可を得なければなりませんので,その予定がある場合には事前に申立てをした弁護士に相談してください。

次回のブログに続く…

法テラスによる費用援助

緊急事態宣言が出されてから2週間ほど経ちましたが,新型コロナウイルスの感染者数は連日増えており,収束には程遠いように感じます。

緊急事態宣言の影響で,裁判期日は軒並み延期となり,裁判所からは次回期日の連絡もない状況ですが,緊急事態宣言が解除されない以上次回期日の指定もできないのだと思われます。

さて,コロナの影響で収入が減少し,あるいは失業してしまったため収入がなくなってしまったという方からの相談が多く寄せられます。そのように収入が減少してしまったため,自己破産をしたいが,弁護士費用を支払えないという方は,法テラスによる民事法律扶助という制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

民事法律扶助とは,一定の金額以下の資産,収入しかない場合,法テラスに費用援助を申請することで,弁護士費用を法テラスが立て替えてくれる制度をいいます。お金がないから自己破産をしたいのに,弁護士に払うお金がないから自己破産ができないといった場合には,法テラスの利用を検討することになります。

もっとも,法テラスで立て替えてくれるのは弁護士費用のみで,申立ての際に裁判所に納める予納金は原則自己負担となりますので,例えば破産管財人が選任されるような場合には,予納金の積立てが必要となります。

法テラスの民事法律扶助が利用できる条件,必要資料等については,弁護士にご相談ください。

新型コロナウイルスの影響

中国で発生した新型コロナウイルスが流行しています。愛知県内でも多くの感染者が出ておりますので,皆様もお気を付けください。

さて,先日,新型コロナウイルスの影響で,破産手続きに若干の影響が出たケースがありました。

名古屋地方裁判所本庁での破産申立ての場合,開始決定後に「集団免責審尋」といって,裁判所に破産を申し立てた方が何人か集まって裁判官と面談をする手続きがあります。

もっとも,名古屋地方裁判所一宮支部では,少し運用が異なっており,開始決定前に裁判官と面談する手続きが行われます(開始前面接)。

集団免責審尋では,裁判官から手続きの説明がなされ,破産を申し立てた方に対して個別に質問がされることは多くはありませんが(担当の裁判官にもよります。),開始前面接では,裁判官から個別的な質問がなされます。

しかし,先日,一宮支部から連絡があり,新型コロナウイルスの感染・拡大防止のため,開始前面接を中止し,書面でのやり取りで手続きを進めるということがありました。

このようなケースはかなりイレギュラーな事態だとは思いますが,裁判所も新型コロナウイルスの感染・拡大防止対策を練っているようです。

収束に向かっていくことを願うばかりですが,今後も感染拡大が続くと,もしかしたら本庁や他の支部でも集団免責審尋等の手続きについて変更等の措置が取られることもあるかもしれません…。

年末年始の家計の状況

新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて,年末年始といえば,忘年会,新年会,お年玉など,何かと支出が多い時期かと思います。

自己破産や個人再生など,裁判所を通じて借金の金額を減らす手続きをしている方は,家計の状況というものを毎月作成し,裁判所や破産管財人の弁護士等に提出しなければなりません。

家計の状況とは,簡単に言ってしまえば家計簿のようなもので,月ごとの収入と支出を記載するものです。収入としては,給料,子供手当,年金などが挙げられ,支出として家賃(住宅ローン),水道光熱費,食費,携帯電話料金,車をお持ちの方はガソリン代,各種保険料などが挙げられます。

これらを各項目ごとに可能な限り1円単位で記載しなければならず,今まで家計簿をつけたことがない方にとってはなかなか面倒な作業になります。また,家計の状況は世帯全体のものを提出する必要がありますので,同居しているご家族がいる場合,ご家族の収入・支出も記載しなければなりませんので,ご家族の協力を得ることも必要となります。

家計の状況を提出する意味合いとしては,破産であれば自分の収入の範囲内でつつましく生活できているか,浪費やギャンブル,投資等にお金を使っていないか(免責不許可事由に当たる事情はないか)をチェックするなどの意味合いがあり,個人再生の場合には減額した借金を支払っていくだけの資力があるかをチェックする意味合いもあります。

そして,忘年会,新年会は仕事上の付き合いもあるかと思いますが,使い過ぎは浪費ととらえられてしまうおそれがあります。また,お年玉は無償で自分の財産を他人に贈与する行為ですから,数千円~1,2万円ほどであれば裁判所も見逃してくれる可能性はありますが,程度問題なので一概には言えません。

何かと支出の多い時期ですから,家計の状況を付けている方は,より一層慎重にお金の管理をしていただき,実際に使う前に弁護士に確認をしてから使うことをお勧めします。

養育費算定表の改定

12月になりました。この時期は,12月のボーナスで弁護士費用や裁判所の予納金の積立てが終了し,自己破産,個人再生の申立てへ進む方が多く,その準備や打ち合わせなどで慌ただしくなりますが,年内に申立てへ進んで安心してお正月を迎えてもらえればと思いながら仕事をしています。

さて,債務整理とはそこまで関係はありませんが,養育費の算定表が改定されました。

離婚した夫婦に未成年の子供がいる場合,子供と別居するようになった親でも子供を扶養する義務があります。そこで,子供を扶養するために必要な費用を支払う必要があります。これが養育費です。

養育費は,まずは離婚する父・母の話し合いによって決められますが,話し合いがまとまらないような場合には裁判所での調停や裁判の場で決められます。そして,裁判や調停の場で養育費を決める場合には,養育費の算定表を参照して決定されます。

養育費算定表では,子供の人数,年齢,表の中では養育費を払う側(義務者)の年収と養育費を受け取る側(権利者の年収)によって金額が算定されます。今回久しぶりに改定がなされましたが,従前と比較して養育費の金額が全体的に増加傾向にあることがうかがえます。近年の景気変動や物価の上昇,税制度の変化等を反映させたものといえるでしょう。

とあるインターネットサイト

最近,弁護士の中でとあるインターネットサイトの存在が問題視されています。

あえて名前は出しませんが,そのインターネットサイトの中には,個人再生,自己破産を申し立てた個人・会社名及び住所・所在地が掲載されているのです。

個人再生,自己破産をすると,氏名及び住所が「官報」という政府が一般国民に向けて発行する文書の中に掲載されるのですが,当該インターネットサイトは官報に掲載されている情報のうち,個人再生,自己破産をした個人名及び住所等をピックアップして掲載しているものと思われます。

確かに官報は,誰もが見ることのできる文書ですが,個人再生や自己破産をしたことはその方にとって周囲の方には知られたくない情報であり,個人再生や自己破産をして人生を立て直そうと考えている方にとって,インターネットサイトに自分の名前及び住所が掲載されるのは,人生の再建を妨げるおそれがあるため,非常に問題だと思います。

なお,当該サイトには,ここに掲載されているのは破産者や個人再生者ではなく,フィクションである,などと記載されていますが,官報に掲載されている内容と同一の内容が掲載されていますし,フィクションだと言いながら「事実と異なる場合には修正に応じる」と記載されるなど意味不明です。

以前にも破産者マップと呼ばれる同様のインターネットサイトが問題視されましたが,また同じようなサイトを作るものが現れてしまうとは,非常に残念です。

このような悪質なサイトを興味本位で検索される方がいなくなることを切に祈るばかりです。

 

借金の時効

貸金業者から借金をしていたが,数年前から一切支払いをしていなかったという方の相談を受けることがあります。

この場合,いつから支払いをしていなかったのかがポイントになります。

借金の返済をしていなかったのが5年以上前からであれば,その借金は時効にかかっており,返済する必要がない可能性があります。

改正前の民法では,債権は10年で時効によって消滅するとされておりますが,商法上,商行為によって生じた債権は5年で時効になるとされています。貸金業者から借金をした場合,貸金業者は業としてお金を貸していますから,商行為による金銭消費貸借(お金を貸すこと)といえ,5年で時効によって消滅します。

改正後の民法では,「債権者が権利を行使できることを知った時から五年間行使しないとき」は時効によって消滅するとされていますから,改正前,後ともに時効期間は5年となります。

したがって,5年以上借金の返済をしていない場合,時効消滅している可能性があります。

ただし,ここであえて「可能性」と言ったのは,時効にならない可能性もあるからです。

借金の返済をしなくなった場合,債権者側が訴訟を起こしたり,支払督促をしたりすることがあります。そして,債権者側が勝訴の判決が確定したり,支払督促に対して異議を申し立てずに確定した場合,時効期間がその時から10年に延びてしまいます。

また,債権者に対して借金を支払う旨の話をしてしまうと,借金があることを認めた(債務承認)ことになり,時効が中断してしまうこともあります。

したがって,これらの事情がなければ,5年以上借金を支払っていない方は時効にかかっている可能性がありますので,弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

名古屋で債務整理をお考えの方はこちら

支払督促とは

借金の返済を滞ってしまっている方のもとには,債権者からの電話や請求書などが届くことがあります。

そして,それらも無視していると,裁判所から書類が届くことがあります。裁判所からの書類には大きく分けて2種類あり,「訴状」というものと「支払督促」というものがあります。

今回は支払督促についてお話しします。

まず,支払督促とは,債権者(お金を貸した側)が,裁判所を通じて,債務者(お金を借りた側)に対して,貸したお金を返すよう求めることをいいます。

そして,通常の訴訟では,裁判所は証拠に基づいて請求が認められるか否かを判断しますが,支払督促では,債権者側からの申し立てがあれば,証拠の有無等の審査は特段せずに,裁判所から支払い督促が発せられます。

このように,通常の訴訟のように手間,時間がかからない点で,債権者にとっては便利な手続きとしてよく使われています。

もっとも,支払督促には証拠等の審査がなく,あくまで債権者側の一方的な主張に基づいて出されるものですので,すでに時効(次回,詳しくお話ししようと思います。)にかかっている借金について支払督促が送られてくるケースもあります。

その場合には,債務者側も適切に対処しなければなりませんが,支払督促には「支払督促送達の日から2週間以内に異議を申し立てないときは,債権者の申し立てによって仮執行の宣言をする。」との記載があり,2週間以内に何とかしなければなりません。

もし,支払督促をそのまま放置しておくと,債権者勝訴の判決が出たのと同様の効果が生じ(債務名義と呼ばれます。),給与や財産の差し押さえを受けてしまう危険性があります。

裁判所から支払督促が届いたという方は,1日も早く弁護士にその対処法をご相談された方がよいでしょう。

どのような場合に過払金請求ができるか。

前回の続きで,どのような場合に過払金請求ができるかをお話しします。

⑴ 利息制限法を超える利率での返済をしたこと

前回ご説明した通り,過払金の請求ができるのは,利息制限法の上限利率を超える利息を支払っていた場合に限られます。

したがって,利息制限法の範囲内で返済をした方は,たとえどれだけ多くの利息を支払っていたとしても過払金の請求はできません。

各貸金業者は平成18年の最高裁判例とその後の法改正を受けて,利息制限法の範囲内での貸付をするようになっていますから,それ以降に借入れ・返済をした方には過払金は発生しません。

また,銀行は平成18年判例が出る前から利息制限法に従った利息で貸付を行ってたため,銀行からの借入れの場合には過払金は発生しません。

⑵ 最終取引から10年を経過していないこと

過払金の返還請求権は,10年間行使しなければ時効にかかってしまいます。

したがって,最終取引日から10年以上経過している場合には,過払金を請求することはできません。

借金を払いすぎているか知りたいという方は,お早めに弁護士にご相談ください。

消費増税

令和元年10月1日から,消費税が10パーセントに引き上げられます。

もっとも,飲食料品や定期購入の新聞は消費税8%に据え置かれます(軽減税率)。コンビニなどで食品を持ち帰る場合には8%,イートインスペースで食べる場合には10%が適用されるとされるなど,10%が適用されるのか,8%が適用されるのかの線引きが難しいところがあります。

借金の抱えている方にとっては,消費増税によって家計が圧迫されることを心配されている方もいるかもしれません。

消費増税による家計の負担を軽減するために,経済産業省が対象の店舗でキャッシュレス決済をした場合に2%か5%のポイント還元を行うキャンペーンを行っています。

しかし,任意整理をしている方は相手方のクレジットカードを使うことはできませんし,自己破産や個人再生をしている方はすべてのクレジットカードを使うことができませんので,クレジットカード決済によるポイント還元が受けられません。もっとも,そのような方でもデビットカード(代金の支払いに利用した際,即時に銀行口座から引き落としが行われるカード)などは使用することができますので,ポイント還元を受けることは可能です。

任意整理中でクレジットカードが使えない方は,検討してみてはいかがでしょうか。

令和元年度サマースクール

今年も愛知県弁護士会主催のサマースクールの中高生模擬裁判に弁護人役として参加しました。

今年は,大学のソフトボール部が舞台でした。被告人が,監督に「気合が足りない」と言われてビンタを受けて倒れこんでしまい,さらに監督からソフトボールを投げつけられそうになったところ,近くに置いてあったバットで監督の脇腹を殴り怪我をさせてしまった,という事案でした(弁護人役が染みついているのか,被告人に有利な事実認定を前提とした説明になってしまっています。)。

争点としては,被告人がバットで殴った行為は正当防衛に当たるかという点で,そもそも被告人は最初から監督にビンタされることが分かっていて,これを機に監督に暴行を加えてやろうと計画していたのではないか(積極的加害意思),防衛行為としての相当性はあるかといった内容を議論してもらいました。

中高生にも身近な問題である部活動の指導者による体罰を取り扱ったため,生徒たちも真剣に議論をしているのが印象的でした。生徒たちからは,自分が厳しい指導者に口頭で怒られた時の体験談を踏まえ,口頭で怒られている時でさえ通常の精神状態ではいられないのに,今回の被告人のように監督にビンタをされる状況下では,冷静な判断はできずバットで殴ることもやむを得なかったのではないかといった意見が出た一方で,バットという道具の危険性を指摘し(当たり所が悪ければ監督は死んでいたかもしれない),相当性を否定する意見も出ました。

サマースクールでは,答えのない問題について,自分の意見を述べ,他人の意見を聞いた上で,結論を考えてもらうことに主眼を置いています。生徒たちにとって,よい経験になったのであれば幸いです。

 

話は変わりますが,当法人も新しい弁護士,スタッフが加入しましたので,ホームページの集合写真を更新しました。

今後とも皆様のお力になれるよう,尽力してまいりますので,よろしくお願いいたします。

http://www.lawyers-kokoro.com/

離婚慰謝料に関する最高裁判決

こんにちは。名古屋の弁護士の松岡です。

今月19日,離婚の慰謝料に関する注目の最高裁判決が出されました。この事案では,男性が,元妻の不倫相手に対して離婚に関する慰謝料を請求していました。しかし,最高裁は,離婚に関する慰謝料を不倫相手に請求することは原則としてできないとの判断をしました。

これだけを読むと,不倫相手に対する慰謝料の請求はできないのか,という誤解が生まれそうなので,詳しく見ていきたいと思います。

この最高裁判決を理解する上でポイントとなるのが,”不倫”の慰謝料と”離婚”の慰謝料は違う,という点です。

そもそも,配偶者が不倫をした場合,不倫された側には,配偶者とその不倫相手に対して不倫に関する慰謝料を請求する権利があります。そして,不倫の慰謝料請求権は,民法上,不法行為に基づく損害賠償請求権となり,3年で時効になってしまいます。今回のケースでは,男性が不倫を知ってからすでに3年以上が経過しており,男性の不倫相手に対する不倫の慰謝料請求権は時効にかかってしまっていました。そこで,男性は不倫から5年後の離婚を原因として,不倫相手に慰謝料を請求したのです。

もっとも,裁判所は,「離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄である」から,不倫相手が必ずしも離婚に関する不法行為責任を負うわけではなく,不倫相手に対する離婚を原因とする慰謝料請求が認められるのは,不倫相手が「単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られる」と判断しました。

以上をまとめると,①不倫相手に対する”不倫”の慰謝料請求は認められる(ただし,3年の時効に注意),②不倫相手に対する”離婚”の慰謝料は特段の事情がなければ認められない,ということになります。

今後の裁判では,この「特段の事情」に当たるか否かが争われるケースが出てくると思われます。判例の集積に注目していきたいと思います。

人身事故扱いにするか否か

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

さて,事故に遭ったばかりの方の交通事故の相談を受ける際に,よく聞かれるのが,人身事故扱いにした方がよいかどうか,という点です。

警察での交通事故の取り扱いは,人身事故と物件事故の2通りあります。両者の違いは,人身事故は簡単にいえば交通事故によって怪我人が出た,物件事故では車は壊れたが怪我人は出ていない,ということになります。また,物件事故扱いの場合には,警察の方で「物件事故報告書」という簡単な書類が作成されるのみですが,人身事故の場合には「実況見分調書」という事故状況が詳しく記載された書類が作成される点で違いがあります。

信号待ちで停止しているところに追突された場合のような被害者側に過失がない事故類型の場合には,人身事故扱いにしておいた方がよいでしょう。というのも,物件事故扱いのままだと,怪我の程度がそこまで大きくなかったのではないかと誤解されてしまうことがあるからです。

また,事故当事者の言い分が異なっており,過失割合に争いがあるような事故態様の場合には,実況見分調書が有力な証拠となる場合がありますので,人身事故扱いにしておいた方がよい場合があります。ただ,人身事故扱いにすると,被害者側にもある程度の過失割合が認められるような事故態様の場合,免許の点数が引かれたり,罰金等の刑罰が科されるリスクもありますので,ご注意ください。

相手方の任意保険会社からは,物件事故扱いのままでも怪我の対応はするからと言われることもありますが,それに従う必要はありません。警察の方も,事故から時間がたちすぎてしまうと人身事故扱いにできないといわれてしまうこともありますので,もしご心配であれば,早めに弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

弁護士費用特約

早いもので今年ももう終わりですね。来年は平成から新元号に変わるため,なにかと「平成最後の」というワードをよく耳にします。平成最後の年末年始,皆さんはどのように過ごされるのでしょうか。

さて,今回は,弁護士費用特約についてお話したいと思います。

弁護士費用特約は,自動車保険や生命保険,火災保険等の保険に付加される特約で,弁護士に法律相談をした際の法律相談料,依頼した際の着手金・成功報酬金等の費用を保険会社が負担してくれるものをいいます。

弁護士というと,やはり敷居が高くて相談しにくいというイメージを持たれる方が多くいらっしゃいます。その原因の一つが,費用が高いことにあると思います。確かに,法律相談だけで30分5000円~1万円かかることも多いので,費用が高いと思われることも当然と思います。しかし,弁護士費用特約に加入していれば,上限金額はありますが弁護士費用は保険会社が出してくれるので,気軽に相談・依頼をすることができます。

弁護士に相談をしたいと思われた場合には,自分の入っている保険の中に弁護士費用特約がないかチェックしてみてください。また,保険会社によっては,同居のご家族が加入している保険の弁護士費用特約を使える場合もありますので,併せてご確認ください。

交通事故の弁護士費用特約についてはこちらもご覧ください。

家事従事者の休業損害②

こんにちは。名古屋の弁護士の松岡です。

今年の夏は特に暑かった印象ですが,ここ最近は風が肌寒くも感じるようになってまいりました。急な気温の変化に体調を崩しやすい季節ですので,皆様も体調には十分お気を付けください。

さて,前々回お話しした家事従事者の休業損害の続きです。前々回は,家事従事者の休業損害の算定方法についてお話しいたしましたが,今回は家事への支障をどのように主張したらよいのか,という点に触れたいと思います。

まず,事故前に比べて家事ができなくなってしまった,と抽象的に主張するだけでは不十分です。具体的にどのような家事に,どのような支障が生じてしまったのかを主張する必要があります。例えば,事故前は毎日食事を作っていたが,長時間立ちっぱなしだと首や腰の痛みが強くなってしまうので事故後はお弁当やお惣菜を買う機会が増えた,事故前は毎日掃除機をかけていたが,事故後は腰の痛みから前かがみになることができず週に1回に減ってしまった,事故前は一人で買い物に出かけていたが,事故後は重い物を持つことができなくなってしまったため夫に代わりに行ってもらうようになった,などです。

これらの事情は客観的な証拠で立証することはなかなか難しく,当事者の主張においてどれだけ説得的な事情を集められるかが重要になると思います。もっとも,このような事情を後から思いだすことはなかなか難しいので,事故に遭ったばかりの方や現在通院中という方は,事故後から日常生活で家事をするときに,事故前と比べてできなくなってしまったことや誰かに代わりにやってもらったことがあればメモしておくことをお勧めします。

名古屋駅法律事務所に移転

こんにちは。弁護士の松岡聡司です。

私はこれまで弁護士法人心本部で勤務していましたが,9月21日より勤務場所が弁護士法人心名古屋駅法律事務所【名古屋市中村区椿町18-22 ロータスビル4階】に移転いたしました。

勤務場所が移転したといっても,名古屋駅法律事務所も名古屋駅太閤通南口から徒歩2分の位置にあり,今まで勤務していた本部の向かいくらいの位置(徒歩で30秒くらい)ですので,ご来所いただく際にも以前とさほど変わりはない形になっております。また,提携の駐車場も従前通りオータケパーキング【愛知県名古屋市中村区椿町20-1】となっておりますので,お車でご来所される際にはこちらの駐車場にお止めください。

もっとも,勤務場所移転にともなって,電話番号及びFAX番号が変わりましたので,従来の電話番号で登録されている方は,知らない番号からかかってきたと思われてしまうかもしれません。お手数ではございますが新しい電話番号の方でご登録いただけると幸いです。

新しい電話番号及びFAX番号は以下の通りです。

TEL:052-485-9123

FAX:052-485-9124

ご迷惑をおかけいたしますが,今後ともよろしくお願いいたします。

家事従事者の休業損害①

こんにちは。名古屋の弁護士の松岡聡司です。

今回は,家事従事者,いわゆる主婦の休業損害についてお話します。

事故によって傷害を負い,その通院等のために仕事を休んだ場合の収入の減少を損害ととらえて相手方に請求することができます。もっとも,主婦の場合,日常生活上の家事で収入は発生していませんから,家事を休んだとしても「収入の減少」はありません。しかし,主婦が交通事故に遭って受傷し,家事ができなくなってしまった場合に休業損害を認めた裁判例が多数ありますので,示談交渉においても主張していくべきでしょう。

では,主婦の休業損害はどのようにして計算されるのでしょうか。

①自賠責保険基準

自賠責保険基準では,家事への支障が認められる日数(通院日数が基準になる場合が多い)×5700円で計算されます。

②裁判基準

裁判基準では,賃金センサス(3月1日のブログにて取り上げました。)を基に一日当たりの基礎収入が算出され,事故前と比較して何パーセントくらい家事ができなかったかを掛け合わせて導かれます。

例えば,事故後10日間入院しその間は何も家事ができず,退院後20日間は事故前と比べて50パーセントくらいしか家事ができず,その後1カ月間は少しずつ症状が良くなり事故前と比べても30パーセントくらいの支障にとどまった,という場合でみると,「一日当たりの基礎収入×10日×100%+基礎収入×20日×50%+基礎収入×30日×30%」という計算に基づいて休業損害の金額が導かれます。

少し長くなってきたので,次回ももう少し家事従事者の休業損害についてお話ししようと思います。

専業主婦の基礎収入についてはこちらもご覧ください。

あおり運転と殺人罪

弁護士の松岡です。

7月も中盤に入り,暑さも本格的になってきました。私の住んでいる名古屋でも連日の猛暑日で,丸の内の駅から裁判所まで少し外を歩いただけでも汗がにじんできます。熱中症で運ばれたり亡くなられる方もいらっしゃるようですので,皆様も熱中症にはお気を付けください。

さて,最近の気になるニュースとして,あおり運転でバイクに追突し,乗っていた大学生を死亡させた事件について,検察庁は殺人罪で起訴したことがあります。

通常交通事故は前方不注視やハンドル操作ミス等の「過失」によって発生するものであることから,被害者を死傷させた場合,過失運転致死傷罪等の過失犯が適用されます。これに対して,殺人罪は,相手を殺してやろうとか相手が死んでしまってもかまわないといった「故意(殺意)」がある場合にしか適用されないので,交通事故で故意犯である殺人罪で起訴した点は異例といわれており,被告人に故意(殺意)があると検察側が立証できるかどうかが大きな争点となりそうです。

あおり運転の危険性が叫ばれる中でこのような悲惨な事件が起き,このような事故が無くなることを祈るばかりですが,今後もこの事件には注目してみたいと思います。