建国記念の日と憲法記念日

2月11日は,建国記念の祝日です。

弁護士として,法律の面から,この祝日についてお話をすると,

国民の祝日に関する法律第2条には,

「国民の祝日」を次のように定める。

「建国記念の日 政令で定める日 建国をしのび、国を愛する心を養う。」

とさだめられており,

さらに,「建国記念の日となる日を定める政令」という政令で,

「内閣は、国民の祝日に関する法律・・・中略・・・基づき、この政令を制定する。

・・・中略・・・建国記念の日は、二月十一日とする。」

と定められています。

法律の世界では,休日を決めるのにも,これくらい厳めしい法律上の根拠というものが必要となるのです。

ところで,法律では,「建国をしのび,国を愛する心を養う。」とかかれていますが,

そもそも,なぜ2月11日が建国記念の日なのかご存知でしょうか?

ちなみに,王政からの市民革命によって近代国家を形成した国や,別の国から独立した国では,革命や独立の日を,建国記念日としている例が多いようです。

また,憲法の制定を建国とみなす場合もあり,ノルウェーやデンマークなどではその国の基本的な形を定める法律が定められた日として,憲法が定められた日を建国記念日としているようです。

もっとも,日本では,日本国憲法の施行は5月3日であり,憲法記念日として別の祝日となっています。

それでは,2月11日は,いったい何の日なのかというと,今上天皇の100代以上前の先祖にあたる初代天皇,神武天皇が,今から2000年以上前に橿原宮で天皇に即位された日を,日本という国のスタートであると考えて,建国記念の日としているわけです。

そのことに思いをはせると,建国記念の日は,日本人の「国」というものに対する考え方を象徴しているようで,興味深く思います。

日本は,休日一つを定めるのにも法令上の根拠が求められるぐらいに高度に発展した法治国家であり,その法治国家を機能させる様々な法令の究極の根拠は日本国憲法ですから,法的な統治機構や社会制度の観点から日本という「国」をイメージするなら,日本国憲法の制定・施行こそが日本の「建国」であると考えても,おかしくはありません。

しかし,国民の祝日に関する法律第2条は,日本国憲法の施行は単に「憲法記念日」であって「建国」ではない,神武天皇即位こそが日本の「建国」であるといっていることになります。このような「建国記念の日」の定め方の背景には「日本国憲法にもとづく法秩序が成立するはるか以前から,天皇を中心にした民族共同体としての「日本という国」が存在していたのだ。」という意識を読み取ることができます。そして,国民の祝日に関する法律第2条は,そのような文脈での民族共同体としての「国」を愛する心を養うために,「建国記念の日」を休日とするのだといっていることになります。

これを,民族主義やナショナリズムとして否定的にとらえるのか,

あるいは,歴史・文化・伝統を尊重する日本の美徳としてとらえるのかは,

個人の価値観の問題だと思われますが,

日本人が「日本という国」に対して,どのような意識をもっているのかを考えるうえで,今日は,興味深い休日だと思います。