壬申戸籍について

最近,インターネットのニュースで,壬申戸籍がネットオークションに出品されたという記事をみました。

弁護士など,法律に携わる者にとって,戸籍は身近な存在であり,壬申戸籍という言葉も,戸籍制度の歴史の中でしばしば目にする単語です。

もっとも,一般の方にとって,壬申戸籍というのは,あまりなじみのない言葉なのではないでしょうか。

壬申戸籍とは,明治維新直後の日本で,戸籍法に基づいて最初に作成された戸籍です。

江戸時代には,お寺の檀家制度を背景に人別帳を作成していましたが,明治維新で日本が近代国家になる過程の一つとして,国家が主体となって国民を戸籍によって把握する仕組みがつくられたのです。

この点で,壬申戸籍は,近代的な戸籍制度の出発点として非常に大きな歴史的意義をもっているのですが,現在,閲覧は禁止となっています。

それは,壬申戸籍が作成された当時の日本は,江戸時代の身分制度の影響が強く残っていた時代であるからです。

江戸時代には,士農工商という身分制度があったという話は,時代劇などでイメージがわきやすいと思いますが,

明治時代になっても,華族,士族,平民といった身分は残っていました。

壬申戸籍では,そのような身分制度による分類がなされており,さらに,いわゆる被差別部落の問題と直結する「エタ」「非人」等の記載もされていたとのことです。

そのため,壬申戸籍を公開してしまうと,現代の日本において不合理な差別意識を助長するおそれがあると考えられ,閲覧が禁止されているとのことです。